富士通が「向井千秋」を社外取締役に起用した理由
大きいプロジェクトを推進してきた経験は何ものにも代え難い。東京理科大副学長にも就任
インタビュー「教育は夢を叶えるツール」
東京理科大で「国際化推進」と「女性活躍推進」を担当する向井氏に、教育への熱い思いを聞いた。
―国際化推進と女性活躍推進にどう取り組まれますか。
「私がJAXA(宇宙航空研究開発機構)での仕事を通じて築いてきた学術分野や、企業などとのネットワークを最大限に生かしたい。私もそうだったが、理系の学生は英語が苦手な人が多い。グローバル化の中で英語は必須。モチベーションを維持できるようなプログラムを作るようにしたい。例えば、短い表現でも相手に伝わる英語を習得すれば、コミュニケーションが図れ、国際化も進むと思う」
―少子化、人口減少が進む中、政府は2030年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度にする目標を掲げています。
「それには、女性が社会に出てからも働きやすい職場にするなど環境を整えなければならない。女性や外国人などを積極的に活用するなどいわゆるダイバーシティーの向上が必要になってくる」
―そうなると、大学の教育は重要です。
「教育は”夢を叶(かな)えるツール“だと、私は思っている。夢は子どもたちだけのものではなく、国民全員があまねく教育を受けなければならない。本来、大学は昔の”寺子屋“のような地域に根ざした教育をするべきだと考えている。それぞれの大学の特徴を生かして、寺子屋の役割を果たしてほしい。地域コミュニティーと一緒に教育に取り組むようなイメージだ」
―人材投資が大切ですね。
「一定期間のリターンを考えた投資ではいけない。将来に向けて持続的な投資が必要。サステイナビリティー(持続可能性)が重要だ。経団連や日本学術会議の提言では、グローバル化とイノベーションがキーワードになっているが、サステイナビリティーが入っていない」
―人材投資をしても優秀な人材の海外流出も見られます。
「海外の方が実力を出しやすいので、海外での人材投資は日本以上かもしれない。時間はかかるが、地道に人材投資のできるしくみをつくり、根付かせることが大切だ」
向井千秋(むかい・ちあき)1977年(昭52)慶応義塾大医学部卒、同年医師免許取得。88年博士。同医学部医局員として病院での診療に従事。85年NASDA(現JAXA)に入り、宇宙飛行士に選定。94、98年の2回の宇宙飛行を経験。05年から07年まで、国際宇宙大学教授として国際宇宙ステーションでの宇宙医学研究や教育に携わる。15年4月1日付で、東京理科大副学長、6月22日付で、富士通社外取締役に就任。>
日刊工業新聞2015年07月30日深層断面