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建設現場の生産性向上に貢献する“アイコンストラクション”とは?

2016年度に始動した国交省の取り組みと成果を詳しく解説
 国土交通省の情報通信技術(ICT)を活用した建設現場向け生産性向上策「i―Construction」(アイコンストラクション)が現場に浸透している。2018年度はICT施工の工種拡大、3次元(3D)データの活用、中小企業への支援などを推進。今後は現場の課題を解決しつつ、中小建設業の支援拡充、自治体や民間工事への取り組み拡大に力を注ぐ。

 アイコンストラクションは、国交省の生産性革命プロジェクトの一つとして16年度に始動、25年度までに建設現場の生産性2割向上が目標だ。3本柱のICT活用拡大、コンクリート工の規格の標準化、施工時期の平準化をはじめ、3Dデータ活用、産学官民の連携を進めてきた。

 特に「新技術の導入環境を整える原動力が3Dデータ」(五道仁実官房技術審議官)だ。3Dデータにより飛行ロボット(ドローン)で測量し、ICT建機を使い新技術で検査し、現場の変化を促している。産学官民の連携で「アイコンストラクション推進コンソーシアム」を設立、現場ニーズとシーズのマッチングが進む。

 ICT活用効果も出ている。ICT施工は道路や河川工事から舗装工に拡大し、測量から工事完成まで一連の延べ作業時間を約3割以上低減した。浚渫(しゅんせつ)工ではマルチビーム測量を導入、最大で作業時間を26時間削減し、水路測量も省略できた。

 18年度は維持管理や建築分野へICT導入、中小企業支援、3Dデータ活用に加え、新技術導入促進経費を約12億円計上。3Dモデルの普及、新技術の導入や現場実証が進む。また、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した生産性向上プロジェクトは33件が選ばれ、18年度中に現場で試行し成果を提出する。

 今後の取り組みの一つが、道路や河川工事でICTの全面的な活用だ。例えば、地盤改良工や修繕工は現場試行を経て19年度に工種を広げるほか、コンクリート2次製品、のり面工へ点群データを用いた施工管理を拡大する。地盤改良工や修繕工では施工履歴データを活用し、施工管理や出来形管理(施工済み箇所の検査)の効率化を図る。通信を介して遠隔地から施工管理する「遠隔立会」も19年度に実施する。

 中小建設業には「ICT施工に先進的に取り組むトップランナー企業への支援が重要」(同)とみて施策を検討する。また、建設分野全体への普及・拡大も欠かせない。「直轄工事での成果を都道府県の市町村工事に広げる」(同)ことで自治体工事へ展開、政府建築(営繕工事)に加え、民間建築工事への取り組みも期待される。
(文=編集委員・神谷信隆)
日刊工業新聞2018年11月29日

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