NTTがサングラス並みに透ける二次電池を披露、性能や応用先は?
NTTは29、30の両日、NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)で開く「R&Dフォーラム」で、研究開発成果を披露する。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などを使って近未来の生活を豊かにする約120の最先端技術を展示する。一部の展示は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年までの実用化が見込めるなど、将来性に富んだ技術が並ぶ。
R&Dフォーラムの基礎研究コーナーの注目は、折り曲げ可能な「透ける二次電池」。縦9センチ×横5センチメートルの大きさで発光ダイオード(LED)が約5分間点灯した。一般的な電池は金属の集電層や正負極材を用いるため、黒色で光を透過しない。透ける電池は光の吸収を抑制しやすい材料を電極に採用した。電極を導電性フィルム上に成膜することで透けて曲がる電池を実現した。
試作品の平均透過率はサングラス並みの約25%で、電圧は平均1・7ボルト、放電容量は0・03ミリアンぺア時。一般家庭の掃き出し窓1・5枚分の大きさにすればコイン電池「CR1025」と同等の性能になるという。
製品化には性能と透過率の向上が課題となるが、NTT先端集積デバイス研究所の小野陽子研究主任は「透明化で電池の搭載場所の制限がなくなり、IoTの可能性が広がる」と指摘する。20年代半ばをめどに携帯情報端末、太陽光発電ができる窓ガラス、皮膚や肌に貼って生体情報を取得する機器への応用を見込む。
AI/IoTコーナーでは、消防研究センター(東京都調布市)とNTT、NTTデータが共同研究中の「救急自動車最適運用システム」を展示する。
過去の救急搬送実績や天候、人口に基づいて1キロメートル四方ごとの救急需要を予測し、救急隊を最適に配置する仕組み。救急隊の出動履歴や医療機関の受け入れ履歴、受け入れ態勢情報も解析して搬送する医療機関を決める時間の短縮にもつなげる。救急車の走行情報や地図情報から道路の段差・高低差を推定する仕組みも作る。
119番通報を受けてから病院に収容するまでに要した時間は全国平均で16年に39・3分と96年比で約15分延びた。
高齢化でさらなる遅延が見込まれるため、名古屋市消防局で12月中旬から救急需要予測モデルを使った実証実験を行う。
4Kカメラが撮影した高精細映像をリアルタイムに圧縮・伝送する技術「キラリ!」も進化している。斜めに設置したハーフミラーに2次元映像を反射させることで映像が立体的に浮かび上がって見える「疑似3次元(3D)表示」で、被写体の奥行き方向の動きを知覚できる手法を開発した。
これにより、中継先で被写体があたかも3次元的に動いているかのように見える映像を配信できる。東京五輪・パラリンピックで柔道などの試合が遠隔地でも立体的に見えるようになりそうだ。
(文=水嶋真人)
曲がる電池実現
R&Dフォーラムの基礎研究コーナーの注目は、折り曲げ可能な「透ける二次電池」。縦9センチ×横5センチメートルの大きさで発光ダイオード(LED)が約5分間点灯した。一般的な電池は金属の集電層や正負極材を用いるため、黒色で光を透過しない。透ける電池は光の吸収を抑制しやすい材料を電極に採用した。電極を導電性フィルム上に成膜することで透けて曲がる電池を実現した。
試作品の平均透過率はサングラス並みの約25%で、電圧は平均1・7ボルト、放電容量は0・03ミリアンぺア時。一般家庭の掃き出し窓1・5枚分の大きさにすればコイン電池「CR1025」と同等の性能になるという。
製品化には性能と透過率の向上が課題となるが、NTT先端集積デバイス研究所の小野陽子研究主任は「透明化で電池の搭載場所の制限がなくなり、IoTの可能性が広がる」と指摘する。20年代半ばをめどに携帯情報端末、太陽光発電ができる窓ガラス、皮膚や肌に貼って生体情報を取得する機器への応用を見込む。
救急需要を予測
AI/IoTコーナーでは、消防研究センター(東京都調布市)とNTT、NTTデータが共同研究中の「救急自動車最適運用システム」を展示する。
過去の救急搬送実績や天候、人口に基づいて1キロメートル四方ごとの救急需要を予測し、救急隊を最適に配置する仕組み。救急隊の出動履歴や医療機関の受け入れ履歴、受け入れ態勢情報も解析して搬送する医療機関を決める時間の短縮にもつなげる。救急車の走行情報や地図情報から道路の段差・高低差を推定する仕組みも作る。
119番通報を受けてから病院に収容するまでに要した時間は全国平均で16年に39・3分と96年比で約15分延びた。
高齢化でさらなる遅延が見込まれるため、名古屋市消防局で12月中旬から救急需要予測モデルを使った実証実験を行う。
疑似3D表示
4Kカメラが撮影した高精細映像をリアルタイムに圧縮・伝送する技術「キラリ!」も進化している。斜めに設置したハーフミラーに2次元映像を反射させることで映像が立体的に浮かび上がって見える「疑似3次元(3D)表示」で、被写体の奥行き方向の動きを知覚できる手法を開発した。
これにより、中継先で被写体があたかも3次元的に動いているかのように見える映像を配信できる。東京五輪・パラリンピックで柔道などの試合が遠隔地でも立体的に見えるようになりそうだ。
(文=水嶋真人)
日刊工業新聞2018年11月28日