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モノづくり技術×新鋭アートで付加価値を作る

ティ・ディ・シーが美術家・早川祐太氏の創作活動に協力
モノづくり技術×新鋭アートで付加価値を作る

薄さ0.3mmのステンレス板を超精密鏡面加工

 中小企業のモノづくり技術がアートと融合―。ティ・ディ・シー(宮城県利府町、赤羽優子社長、022・356・3131)が新進気鋭の美術家、早川祐太氏の創作活動に協力した作品が水戸芸術館(水戸市)に展示されている。

 作品は鏡面加工された幅120ミリメートル、長さ2700ミリメートルのステンレス板が斜度10度の角度で部屋の白壁3方から突き出し、石こうのオブジェとともに設置。視覚の虚実、素材が持つ質感のイメージギャップなどが感じられる空間となっている。

 研磨を専門とする同社が手がけたのは、0・3ミリメートルという人の動きにも微妙に揺らぐほど薄いステンレス板の超精密鏡面加工だ。当初、早川氏は依頼した数社から、薄さと加工精度を理由に断られ続けたという。しかし、ホームページを見て相談した赤羽社長からの返事は「薄さは問題ない」。

 同社は5年前に金属箔研磨の独自技術と専用装置を開発しており、海外からの引き合いも多い。その技術を応用できること、さらにはメンテナンスが難しくならないような面の加工粗さや、0・3ミリメートルという極薄の側面を加工することなどを逆提案したこともあり、「加工については完全にお任せだった」(早川氏)という。

 オンリーワンを創出する芸術家と、均一の製品を量産するのが目的の製造業者。目指す方向の違いから制作前の打ち合わせではかみ合わないこともあったが、同じ目線で語り合ううちに着地点も合致。赤羽社長は「こうした試みにより中小企業が持つ技術に光が当たり、付加価値につながってほしい」としている。同作品は2019年1月20日まで「霧の抵抗 中谷芙二子」と同時に展示される。
水戸芸術館に展示された早川氏の作品
日刊工業新聞2018年11月22日

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