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家電各社がしのぎを削る“送風機”開発の最前線

自然に近い風が求められる背景とは・・・?
家電各社がしのぎを削る“送風機”開発の最前線

ダイキンの「Wind Creator」

 高層階のオフィスやタワーマンションなど窓が開けられない空間にも自然に近い快適な風を届けようと、家電各社が研究開発を進めている。ダイキン工業やパナソニックは、高原などに吹く風を研究した送風機をそれぞれ開発。三菱電機は航空機の翼の形状を扇風機の羽根に採用し、自然に近い静かな音の風を実現した。夏だけでなく、室内の空気が滞留しがちな冬の室内にも導入できれば、仕事がはかどる空間作りにつながりそうだ。

 ダイキン工業は、軽井沢や北海道の高原など全国8カ所で計測した風のデータを基に、自然の風を再現する装置「Wind Creator」を開発した。窓を開けられないタワーマンションや、自然をテーマにしたカフェなどでの活用を想定する。同装置は九つのファンを内蔵し、全てのファンが同じ動きをする。風が時折強くなったり弱くなったりするほか、体全体に風が当たることで自然を感じられるという。同社テクノロジー・イノベーションセンターの開発巳智子氏は「鉄道や地下室など、窓が開けられない場所でも活用できる」と期待する。

 パナソニックは長野県の蓼科高原に吹く風を計測して、心地よい風を研究している。研究成果を生かし、強弱を付けて気流と香りを届けられる大型装置を開発した。香りは森林やラベンダーなど、シーンに応じて切り替えられる。同社の研究では、上半身だけなど部分的に風が当たる場合に比べて、全身に気流を受けるほど「すごしやすい」と感じる人が多いという。暖房で室内の空気がこもりがちになる冬場に使えば空気のよどみ解消につながる。

 三菱電機の扇風機「SEASONS(シーズンズ)」は、そよ風のように静かな風が特徴。一般的な扇風機の最大音が45デシベル以上とされる中、シーズンズの運転音は最小12デシベルと、木の葉がふれあう音よりも静かだという。サーキュレーターとしても使える。

 シーズンズには航空機の翼などで採用されている「ウイングレット」と呼ばれる形状をした、先端が上に曲がった羽根が使われている。曲がった羽根が空気の渦を拡散させるため、まっすぐな羽根に比べて音が静かになるという。

 オフィスや住宅などで自然に近い風が求められる背景を、パナソニックエコシステムズ(愛知県春日井市)R&D本部熱・流体開発部送風技術開発課の谷口和宏課長は「高気密・高断熱の建物が普及し、窓を閉め切った状態でも自然を感じたいというニーズが増えている」と分析する。三菱電機中津川製作所住宅用換気送風機製造部の小野比出晴氏も「どんな風が人にとって心地よいのか研究を続ける」と力を込める。各社は住宅やビルの高機能化などを追い風に、自然な風を創り出す研究を進める考えだ。
(文=福沢尚季)
日刊工業新聞2018年11月21日

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