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未来のコンビニから日本らしいAIまで…日本が目指す超スマート社会とは?

CEATEC JAPAN 2018
未来のコンビニから日本らしいAIまで…日本が目指す超スマート社会とは?

三菱電機は迷路をAIで進む技術を披露

 国内最大の家電・IT見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」が16日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開幕した。参加企業はあらゆるモノがネットにつながるIoT(モノのインターネット)技術を披露。かつてのような家電の新製品は影をひそめ、流通や金融など異業種の次世代を見据えたサービスが目立つ。世界中でIoTを巡る競争が激しくなる中、コンセプトの実用化を急ぐ。

 シーテックの目玉となるのが、会場中央に位置する「IoTタウン」。流通業や金融業などのブースが並ぶ。初参加のローソンは2025年を想定した「未来のコンビニ」を展示。商品に取り付けた電子タグの情報をセンサーで読み取ることで、利用者は商品を持ったまま専用レーンを通るだけで支払いが済む。レジでの現金の支払いが不要になる。顧客の購入履歴などを分析し、その人に応じた商品なども提案する。牧野国嗣理事執行役員は「テクノロジーを活用し、お客さま一人ひとりによりきめ細かなサービスを提供することができる」と話す。

 電機大手では三菱電機が自社開発の組み込み型の人工知能(AI)の実例を披露。試行錯誤を繰り返し、最適な動きを見つけて制御する。円形迷路を前後左右に傾けて球をゴールまで動かせるかを実演した。中川路哲男情報技術総合研究所長は「(クラウドサーバーではなく、機器に搭載するため)目の前で動くのが最大の特徴。日本らしいAI」と胸を張る。車載などの応用事例も公開した。日立製作所はAIやロボティクスをインフラ事業に活用した事例を紹介。ソニーの犬型ロボット「aibo」に話しかけ、自社のロボット掃除機を操作するデモンストレーションも実施した。

 東芝やソニーなどかつてのシーテックの主役が参加を見送る中、存在感を増すのがスタートアップ企業だ。大学研究機関も合わせた参加数は162社と過去最多となった。ASTINA(東京都千代田区)は自動で衣類を折りたたむ、たんす型ロボットを開発。価格は他社の全自動衣類折り畳み機に比べ、4分の1程度となる50万円以下を想定する。乾燥済みの衣類を入れるとAIで衣類の種類や前後を判別して、折りたたんで六つの棚に仕分けて収納。衣類1枚の折り畳みにかかる時間は約1分30秒という。儀間匠社長は「開発や販売チャンネルの強化で、大企業と連携したい」と語る。シーテックのテーマが「共創」であるように、IoTの普及には業種や企業の規模を超えた連携がカギになる。

 シーテックは日本の電機業界の低迷もあり出展企業数が減少。16年に「脱家電」を掲げ、IoTを前面に押し出す展示に一新した。刷新3年目を迎え、参加企業数や入場者数は右肩上がりになっている。

 ただ、IoTは海外では民生分野、産業分野を問わず覇権争いが激化し、企業間連携も加速している。電機メーカー幹部は「このままでは取り残される危機感がある」と吐露する。実際、会場で注目されていた「未来のコンビニ」は、米国ではアマゾン・ドット・コムが無人コンビニ「アマゾンゴー」をすでに展開。アマゾンは21年にも3000店舗以上に広げる計画で、国外展開も視野に入れているとの観測が広まる。

 コンセプトから実用化までの時間をいかに縮めるかは日本企業にとって常に障壁になってきた。アクセルをもう一段踏み込まなければ、IoTの分野でも世界との差は開きかねない。
日刊工業新聞 2018年10月17日

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