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夏休みに産業の歴史学ぶ旅はいかが?―産業遺産、インフラ整備追い風

三池港、佐渡金山など誘客強化
夏休みに産業の歴史学ぶ旅はいかが?―産業遺産、インフラ整備追い風

当時の技術力の高さに驚かされる佐渡金山の大立竪坑

 

三池港(福岡県大牟田市)/水圧式閘門、100年…今も現役


 三池港(福岡県大牟田市)は、三池炭鉱(同・熊本県荒尾市)に関連した産業革命遺産の一つ。1908年に三井鉱山のプライベートポートとして開港した。それ以前は、石炭を大牟田川から小型船で、長崎県の口乃津港や熊本県の三角西港に移送し、大型船に積み替えて海外へ輸出していた。
 
■最盛期は月数百隻
 
 三池炭鉱の最盛期には、月数百隻の大型船が石炭を積み出していた。エネルギーが石炭から石油にシフトし、石炭の需要が低下すると、それに伴い石炭の生産量も減少。石炭の積み出しは1989年を最後になくなり97年には三池炭鉱が閉山した。97年には月200隻が寄港し、荷物の積み降ろしをしていたが今は材木や化学品など月80隻程度が寄港するのみになっている。
 三池港は遠浅の人工港湾で、閘(こう)門を境に潮位が変わる。水位調整のための水圧式閘門と蒸気式クレーンが最大の特徴であり、戦艦「敷島」を建造した英テムズ・シビル・エンジニアリングが製造したものを輸入し、100年以上、保守を続けながら、使用している。これが世界遺産登録の要因にもなった。
 水圧式閘門はタンクに水をため、その水圧で閘門を開けるもので8・5メートルの水深を常に維持する。製造から100年以上経過し、メーカーも既になくなっているため、保守などで必要となる部品は、製造時の図面から複製している。三池港物流の伊木田政宏機関長は、「年に1回くらいのペースで、部品を複製している」と話す。
 
■世界遺産、観光客増

 三池港の機械室などは非公開だが、周辺には三池炭鉱の竪坑である宮原坑や万田坑、専用鉄道敷跡など、構成資産がある。世界遺産登録で、今後は観光客が増えることが予想されている。12年には有明海沿岸道路の三池港インターチェンジ(IC)―大牟田IC間が開通するなど、福岡県や大牟田市などは三池港の物流拠点としての利便性を高めるため、交通インフラの整備を進めてきた。今後は観光客のアクセスを向上させる交通ネットワークの整備などが求められている。
 17年には有明海沿岸道路の三池港IC―大川東IC間が開業予定で、世界遺産の「三重津海軍所跡」(佐賀市)とのアクセスがこれまでの1時間から約半分に短縮される。大牟田市世界遺産登録・文化財室の坂井義哉さんは「有明海沿岸道路を世界遺産道路としてアピールしたい」と話す。
日刊工業新聞2015年07月20日 最終面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
前半の三池炭鉱は7月に世界遺産に登録され、後半の佐渡金山はこれから登録を目指します。三池炭鉱は今後、外国人を中心に観光客が増えることも予想されますが、JR大牟田駅など最寄り駅から遠く、アクセスはレンタカーしかないとのこと。大牟田市ではバスの運行なども考えたようなのですが、現状の観光客の数では、収支の面で厳しく断念したそうです。一方、佐渡は本土と佐渡を結ぶカーフェリーを運航する佐渡汽船が、新造船を投入するなど、アクセスを強化しています。建造費は県や市が支援するなど、官民一体で、観光振興に力を入れています。

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