ニュースイッチ

相次ぐ民営化、公営ガスで争奪戦

関電など、福井市譲渡先に決定
相次ぐ民営化、公営ガスで争奪戦

写真はイメージ

 公営ガスの民営化が相次いでいる。関西電力と北陸電力、敦賀ガス(福井県敦賀市)の企業グループは5日、福井市のガス事業の譲渡先に決定したと発表した。10月には大阪ガスとJFEエンジニアリング(東京都千代田区)、水道機工のコンソーシアムが大津市ガス特定運営事業者の優先交渉権者に決まった。2017年4月に都市ガスの小売り完全自由化が始まり、民営化を進める公営ガスの争奪戦が始まっている。

 関電など3社は新会社を立ち上げ、12月にも福井市と事業譲渡の仮契約を締結する。顧客数は約2万3000件を獲得し20年4月から事業を始める。3社は「経営の資源、事業ノウハウを生かし、地域に根ざしたガス事業者を目指す」と5日コメントした。福井市の公営ガスには、最終審査で辞退した大阪ガスや液化石油ガス(LPガス)事業者の伊丹産業(兵庫県伊丹市)も名乗りをあげていた。

 公営ガスで全国2位の約10万戸の顧客数を持つ大津市の市営ガスは、大阪ガスなど3社がコンセッション(公共施設等運営権)式で19年4月から事業を始める。公営ガスのコンセッション式は国内初となる。家庭用料金の約1%を値下げする案が評価された。

 大阪ガスの本荘武宏社長は「長年の導管など保安業務の実績が評価された」と強調。20年間の運営に携わる。競合した関電も「これまでも(大津市では)ガスの大口顧客獲得の実績はある。都市ガスの小売りにも参入したい」(岩根茂樹社長)と意気込む。

 福井市など民営化を検討する公営ガス事業者は、オール電化など他エネルギーとの競合で都市ガスの普及率が低下し、経営の健全化が求められる共通の悩みを抱えていた。

 全国の都市ガス事業者は200弱あり、うち公営ガス事業者は約1割を占める。75年のピーク時は75あったが民営化で24事業者まで減少した。17年4月の都市ガス小売り完全自由化以降も、同年4月に群馬県富岡市がLPガス事業者の堀川産業(埼玉県草加市)にガス事業を譲渡。公営ガスではできなかった新たなサービスを提供していく。また18年4月から北陸ガスが柏崎市ガス事業を引き継ぎガスの供給を始めた。

 公営ガスの中で顧客数約34万件と全国1位の仙台市は、10年に民営化を延期した。時期は未定だが、引き続き民営化を検討している。他の公営ガスも民営化の検討を加速する。今後も民間ガス事業者の新たなパイを狙った公営ガスの争奪戦が続く模様だ。
(日刊工業新聞社・香西貴之)
日刊工業新聞2018年11月6日

編集部のおすすめ