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お賽銭もポチッ、「地域通貨」がキャッシュレス化を推し進める!
地域振興へ、商工会議所や金融機関も後押し
都市部や一部の大手企業で先行していると見られがちなキャッシュレス決済。しかし、独自の取り組みを進める地域もある。
静岡県袋井市の袋井商工会議所―。2018年4月から「楽天ペイ」によるキャッシュレス決済の導入支援事業に乗り出した。消費者は手持ちのスマートフォンやタブレットを用いて手軽にクレジットカード決済できる店舗向けのカードリーダーを、同商工会議所を通じて無償で提供。すでに20の事業者が導入した。
袋井市では市内のスタジアムが2019年のラグビーワールドカップ(W杯)の開催地のひとつとなることから、外国人観戦者の支払いニーズに応えることで地域経済への波及効果を狙う。
一方、地域金融機関がキャッシュレス推進を担う動きもある。千葉県木更津市を地盤とする君津信用組合と木更津市および木更津商工会議所は、10月1日からスマートフォンアプリで決済できる電子マネーの運用を始めた。
君津信組が地域通貨「アクアコイン」を発行。利用者はスマートフォンで専用アプリをダウンロードし、コインをチャージ。加盟店に設置された二次元コードを読み取ることで手軽に決済できる仕組みだ。
レジ周辺への二次元コードのみの提示で導入可能なため、店舗側にとっては初期費用の負担が少なく、売上金として入金された「コイン」を預金口座へ換金・入金できるのはもちろん、「コイン」を直接送金することで、他の加盟店などへの仕入れの支払いに充てることができる利点もある。木更津商工会議所によると、10月15日時点の加盟店は337に上るという。
クレジットカードや電子マネーをはじめとするキャッシュレス決済が、これまで日本で普及してこなかった背景には、規模の小さな事業者にとって負担が大きかったことも一因だ。ところがここへきて新たな決済サービスが相次ぎ登場していることで、中小の事業者のキャッシュレス化が一気に進展する可能性が出てきた。現状をどうみているのか。日本商工会議所の加藤正敏中小企業振興部長に聞いた。
―中小企業を取り巻くキャッシュレス化をどう見ていますか。
「社会全体の生産性向上はもとより、新たな若者需要や外国人観光客需要の取り込みに寄与するキャッシュレス決済への対応は重要と考えています。しかし、私たちは中小事業者の現状を踏まえ、これまで大きく三つの課題克服が必要と主張してきました。決済手数料および決済端末代の負担軽減、そして売掛金の入金までのタイムラグの短期化です」
―小規模の店舗にとっては負担が大きいということですね。
「一般的なクレジットカードの決済手数料は3%強から8%ですが、一方で、小売業の売上高利益率は2・42%、宿泊・飲食サービス業が2・56%です。これは中小企業(法人)の平均値であり、小規模事業者を含めると、さらに利益率は低いでしょう。3%を超える手数料負担は現実的ではないのです」
―ところが、ここへきてさまざまな企業が決済サービスに参入し格段にコストが下がる可能性が出てきました。
「中国では決済手数料が0・55%などという限りなくゼロに近いサービスが登場しています。ただ、彼らは手数料収入以外の収益源を確保するビジネスモデルを描いているので、日本のサービスと単純比較できません。とはいえ、こうした世界の潮流がわが国にも押し寄せ、中小事業者のキャッシュレス化に拍車をかける画期的なサービスが提供されることが大いに期待されます」
―キャッシュレス決済をめぐる中小事業者の受け止めや地域の取り組みをどうみていますか。
「キャッシュレス化は、事業者がそれぞれの顧客の属性やニーズを踏まえて判断することが基本です。当面は新たな決済手段へのニーズが強い若者や外国人観光客の需要を取り込むうえで、都市部や観光地の取り組みが先行することが予想されます。袋井商工会議所の取り組みはラグビーワールドカップの開催を機にインバウンド需要を取り込むことが狙いですが、決済事業者との提携にまで踏み込んでいる点では珍しいと思います」
「木更津商工会議所の取り組みは、資金の地域外流出を防ぎ、資金を地域内で循環させることに寄与するため、単にキャッシュレスを導入するだけでなく、『地域経済の活性化』を目指している点で、多くの地域の参考になると思います」
―全国的にさまざまな動きが広がることが予想されるなかで、どのような施策を期待しますか。
「低負担で利用できそうなQRコード決済の普及に不可欠な規格統一が進展すれば、私たちとしても会員企業への対応を促しやすくなります。各地の商工会議所では、すでにキャッシュレス対応に向けたセミナーなどを開催していますが、今後は導入・活用支援などさらに具体的な動きが出てくると思います」
「他方、キャッシュレスに対応しづらい消費者もいらっしゃるでしょう。ですから社会全体でサポートする視点も必要だと思います」
静岡県袋井市の袋井商工会議所―。2018年4月から「楽天ペイ」によるキャッシュレス決済の導入支援事業に乗り出した。消費者は手持ちのスマートフォンやタブレットを用いて手軽にクレジットカード決済できる店舗向けのカードリーダーを、同商工会議所を通じて無償で提供。すでに20の事業者が導入した。
袋井市では市内のスタジアムが2019年のラグビーワールドカップ(W杯)の開催地のひとつとなることから、外国人観戦者の支払いニーズに応えることで地域経済への波及効果を狙う。
「木更津アクアコイン」
一方、地域金融機関がキャッシュレス推進を担う動きもある。千葉県木更津市を地盤とする君津信用組合と木更津市および木更津商工会議所は、10月1日からスマートフォンアプリで決済できる電子マネーの運用を始めた。
君津信組が地域通貨「アクアコイン」を発行。利用者はスマートフォンで専用アプリをダウンロードし、コインをチャージ。加盟店に設置された二次元コードを読み取ることで手軽に決済できる仕組みだ。
レジ周辺への二次元コードのみの提示で導入可能なため、店舗側にとっては初期費用の負担が少なく、売上金として入金された「コイン」を預金口座へ換金・入金できるのはもちろん、「コイン」を直接送金することで、他の加盟店などへの仕入れの支払いに充てることができる利点もある。木更津商工会議所によると、10月15日時点の加盟店は337に上るという。
日本商工会議所、中小企業振興部長に聞く
クレジットカードや電子マネーをはじめとするキャッシュレス決済が、これまで日本で普及してこなかった背景には、規模の小さな事業者にとって負担が大きかったことも一因だ。ところがここへきて新たな決済サービスが相次ぎ登場していることで、中小の事業者のキャッシュレス化が一気に進展する可能性が出てきた。現状をどうみているのか。日本商工会議所の加藤正敏中小企業振興部長に聞いた。
―中小企業を取り巻くキャッシュレス化をどう見ていますか。
「社会全体の生産性向上はもとより、新たな若者需要や外国人観光客需要の取り込みに寄与するキャッシュレス決済への対応は重要と考えています。しかし、私たちは中小事業者の現状を踏まえ、これまで大きく三つの課題克服が必要と主張してきました。決済手数料および決済端末代の負担軽減、そして売掛金の入金までのタイムラグの短期化です」
―小規模の店舗にとっては負担が大きいということですね。
「一般的なクレジットカードの決済手数料は3%強から8%ですが、一方で、小売業の売上高利益率は2・42%、宿泊・飲食サービス業が2・56%です。これは中小企業(法人)の平均値であり、小規模事業者を含めると、さらに利益率は低いでしょう。3%を超える手数料負担は現実的ではないのです」
―ところが、ここへきてさまざまな企業が決済サービスに参入し格段にコストが下がる可能性が出てきました。
「中国では決済手数料が0・55%などという限りなくゼロに近いサービスが登場しています。ただ、彼らは手数料収入以外の収益源を確保するビジネスモデルを描いているので、日本のサービスと単純比較できません。とはいえ、こうした世界の潮流がわが国にも押し寄せ、中小事業者のキャッシュレス化に拍車をかける画期的なサービスが提供されることが大いに期待されます」
―キャッシュレス決済をめぐる中小事業者の受け止めや地域の取り組みをどうみていますか。
「キャッシュレス化は、事業者がそれぞれの顧客の属性やニーズを踏まえて判断することが基本です。当面は新たな決済手段へのニーズが強い若者や外国人観光客の需要を取り込むうえで、都市部や観光地の取り組みが先行することが予想されます。袋井商工会議所の取り組みはラグビーワールドカップの開催を機にインバウンド需要を取り込むことが狙いですが、決済事業者との提携にまで踏み込んでいる点では珍しいと思います」
「木更津商工会議所の取り組みは、資金の地域外流出を防ぎ、資金を地域内で循環させることに寄与するため、単にキャッシュレスを導入するだけでなく、『地域経済の活性化』を目指している点で、多くの地域の参考になると思います」
―全国的にさまざまな動きが広がることが予想されるなかで、どのような施策を期待しますか。
「低負担で利用できそうなQRコード決済の普及に不可欠な規格統一が進展すれば、私たちとしても会員企業への対応を促しやすくなります。各地の商工会議所では、すでにキャッシュレス対応に向けたセミナーなどを開催していますが、今後は導入・活用支援などさらに具体的な動きが出てくると思います」
「他方、キャッシュレスに対応しづらい消費者もいらっしゃるでしょう。ですから社会全体でサポートする視点も必要だと思います」