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カルソカン、ファンド主導で再編へ。人員削減も検討

平野博文KKRジャパン社長「21年に利益率で業界トップ10を目指す」
カルソカン、ファンド主導で再編へ。人員削減も検討

カルソニックカンセイ本社

 カルソニックカンセイは22日、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門のマニエッティ・マレリを約62億ユーロ(約8060億円)で買収すると発表した。カルソニックカンセイを傘下に持つ米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日本法人、KKRジャパン(東京都千代田区)の平野博文社長は同日、日刊工業新聞の取材に応じ、規模拡大とともにコスト削減にも取り組み「2021年までに営業利益率で業界トップ10以内を目指す」との方針を示した。

日刊工業新聞の取材に応える平野KKRジャパン社長

 2019年6月までに株式100%を取得する予定。カルソニックカンセイ親会社のCKホールディングスの商号を「マニエッティ・マレリCKホールディングス」に変更し、経営統合する。今回の統合で、カルソニックカンセイの売上高は約2兆円に迫る。今後は異なる地域や顧客に向けて、調達網や販売網を相互活用する。開発面では両社の技術を融合し、コネクテッドカー(つながる車)や自動運転向けの次世代コックピットシステムなどを開発する。

体制が肥大化の懸念、人員削減も検討


 次世代製品の開発に加え、人員やコストの削減も検討するなど「常に筋肉質であるべきだ」と収益性を高める戦略を平野社長は強調した。関係者によると「FCAは構造改革の中で本社の余剰人員がマレリに移っている」という指摘があり、同部門の体制が肥大化していた可能性がある。そのため、同社との統合によりどこまでコストなどを見直し、収益性を高められるかが課題になる。

 

“名実”ともに日産から独立へ


 カルソニックカンセイは日産自動車系列から独立し、17年にKKRの傘下に入った。だが、取引ベースでは日産への依存が続いており、次の成長を見据えM&A(合併・買収)などの戦略を検討してきた。今回、マニエッティ・マレリの買収により、売上高ベースで約2倍となり、新たな販路や調達先を獲得した。“名実”ともに日産から独立を果たすと言えそうだ。

 また、両社は異なる文化を融合することで業界の変化に対応する。変化へ対応する危機感はトヨタ自動車などの自動車メーカーが感じており、異業種と提携することでCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など新たな潮流と向き合う。カルソカンとマレリは同業のM&Aだが、互いの文化や力を結集することで付加価値を創出する。
日刊工業新聞2018年10月23日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ファンド主導のサプライヤー再編が動き出した。良くも悪くも系列にとらわれてきた自動車部品業界は、自動車メーカーよりも再編の動きは緩慢だったと言える。だが、「100年に一度」といわれる変革の波と、プライベート・エクイティ(PE)ファンドの刺激により、国を跨いだ部品メーカーが誕生することになる。日欧米の力と文化が集まることで、独ボッシュやデンソーなどと肩を並べるメガサプライヤーの一員になれるかもしれない。一方、マニエッティの買収金額は8000億円で、KKRはカルソカンにも5000億円を注ぎ込んでいる。KKRが手がけた、過去の投資と比べても巨額であり、本気度は伝わるが高すぎる印象だ。出口戦略はIPOしかないと思われる。同業買収のため、体制コストを抑えつつ、販路の相互活用により、短期的なシナジーが期待できるだろう。ただ、中長期的にはカルソカンとマレリが全く異なる企業に進化し、新生企業として市場に受け入れられる必要がある。電機業界の再編を促してきたKKRも、自動車業界で手綱を握れるかは新たな挑戦になるだろう。

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