フィンテックを成長ドライバーに、メガ銀に迫られる事業モデル転換
長引く超低金利や異業種との競合など環境は激変
メガバンクがIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などを活用したサービス・技術の開発に本腰を入れている。16日開幕の家電・ITの総合展示会「シーテックジャパン2018」では、顧客の利便性向上や業務拡大などに役立つ先端ソリューションを提案する。長引く超低金利や異業種との競合など、金融機関を取り巻く環境は激変。メガバンクは店舗改革や業務量削減を進める一方、フィンテック(金融とITの融合)分野の拡大を成長ドライバーの一つに掲げる。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、三井住友銀行やSMBC日興証券といった主要事業会社に加え、出資するITベンチャーも合流し、グループとしての総合力を訴求する構えだ。三井住友FGの中山知章ITイノベーション推進部長は、「技術志向でなく(顧客や市場の)ニーズ指向でソリューションを開発する」と力を込める。
シーテックで三井住友銀は、AIにより口座情報からリアルタイムに業況変化を検知できるサービスを披露する。SMBC日興証券は株価や決算データをもとに、AIが1カ月後の収益率を予測するサービスを紹介。個別株式を対象にするのは国内初だという。
三井住友FGがNTTデータなどと共同出資するポラリファイ(東京都港区)は指や顔、声を用いた生体認証システムを出展。口座開設がオンラインですべて完結するなど、新たな顧客体験をアピールする。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、先進技術を活用した金融サービスの未来像を示す。MUFG子会社のジャパンデジタルデザイン(東京都中央区)は、金融サービスの新ブランド「mini(ミニ)」を紹介する。キャッシュカードと暗証番号をスマートフォンに登録すれば、キャッシュカードを使わずに出金できるサービスや、自動車に搭載することで移動を可能にしたATMなどを展示する。
同社の上原高志社長は「これまでデジタルを使っていなかった顧客との接点になれば」と話す。学校や病院を対象にしたサービスの開発も進める。
三菱UFJ銀行は開発中のデジタル通貨「MUFGコイン」などを出展。送金や決済にとどまらず、契約の条件確認や履行を自動で実行する「スマートコントラクト」といったブロックチェーン技術をベースにしたコンセプトを提案する。
今回、本体は出展しないみずほFGも、新技術を活用した次世代ビジネスの事業化を推進。AIが過去の実績から結果を予測する機械学習モデルを構築し、住宅ローン審査の業務プロセスの一部を自動化する実証などに取り組む。同社は勘定系システムの移行を実施しており、システム更新後はフィンテックなど新技術を導入しやすくなる。
メガバンクがフィンテックに力を入れる背景には、超低金利の長期化のほか、加速度的に進む人口減少などが挙げられる。大量の人員を抱え、全国に店舗網を構える従来の事業モデルは限界を迎えつつある。各社がフィンテックを軸とした次世代技術を積極的に取り込み、店舗改革や生産性向上を進めている。
MUFGは2023年度までに窓口で行員が接客する既存店舗を半減し、自動化などを取り入れた次世代店舗を増やすほか、事務などの業務量を人員にして9500人分に相当する30%減らす。
三井住友FGは19年度までに全430店舗を次世代店舗に転換。みずほFGも24年度までに全拠点を次世代化するほか、100拠点を削減する計画。構造改革や新たな攻め手を実現するカギとなるフィンテックは、各行の攻守の要として位置づけられる。
金融インフラ改革は各行共通の課題だ。時代に合わせた最適なインフラの在り方を模索する。一方で銀行・信託・証券の一体運営によるワンストップでのコンサルタント業務なども拡充。対面業務を強化して顧客との接点を増やす考えだ。デジタル技術がもたらす非対面業務と対面業務の両立が、構造改革の行方を左右する。
個人の購買履歴などデータを利活用する新たなビジネスの胎動も出始めた。個人からデータを預かり、本人に同意の上で企業に提供する「情報銀行」だ。個人が情報提供する企業を選択し、情報の対価として企業から金銭やサービスを受け取る仕組みであり、19年度に参入予定の三菱UFJ信託銀行はシーテックに関連サービスを展示する。
三井住友銀も情報銀行を中心とした経済システムの確立に向けて、研究開発を進める。個人と企業の間に仲介者が入ることで、個人を主体としたデータ活用を普及させる狙いがある。
三井住友FG、AI・生体認証を導入/MUFG、スマホ対応・移動ATM
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、三井住友銀行やSMBC日興証券といった主要事業会社に加え、出資するITベンチャーも合流し、グループとしての総合力を訴求する構えだ。三井住友FGの中山知章ITイノベーション推進部長は、「技術志向でなく(顧客や市場の)ニーズ指向でソリューションを開発する」と力を込める。
シーテックで三井住友銀は、AIにより口座情報からリアルタイムに業況変化を検知できるサービスを披露する。SMBC日興証券は株価や決算データをもとに、AIが1カ月後の収益率を予測するサービスを紹介。個別株式を対象にするのは国内初だという。
三井住友FGがNTTデータなどと共同出資するポラリファイ(東京都港区)は指や顔、声を用いた生体認証システムを出展。口座開設がオンラインですべて完結するなど、新たな顧客体験をアピールする。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、先進技術を活用した金融サービスの未来像を示す。MUFG子会社のジャパンデジタルデザイン(東京都中央区)は、金融サービスの新ブランド「mini(ミニ)」を紹介する。キャッシュカードと暗証番号をスマートフォンに登録すれば、キャッシュカードを使わずに出金できるサービスや、自動車に搭載することで移動を可能にしたATMなどを展示する。
同社の上原高志社長は「これまでデジタルを使っていなかった顧客との接点になれば」と話す。学校や病院を対象にしたサービスの開発も進める。
三菱UFJ銀行は開発中のデジタル通貨「MUFGコイン」などを出展。送金や決済にとどまらず、契約の条件確認や履行を自動で実行する「スマートコントラクト」といったブロックチェーン技術をベースにしたコンセプトを提案する。
今回、本体は出展しないみずほFGも、新技術を活用した次世代ビジネスの事業化を推進。AIが過去の実績から結果を予測する機械学習モデルを構築し、住宅ローン審査の業務プロセスの一部を自動化する実証などに取り組む。同社は勘定系システムの移行を実施しており、システム更新後はフィンテックなど新技術を導入しやすくなる。
事業モデル転換―デジタル活用、カギ
メガバンクがフィンテックに力を入れる背景には、超低金利の長期化のほか、加速度的に進む人口減少などが挙げられる。大量の人員を抱え、全国に店舗網を構える従来の事業モデルは限界を迎えつつある。各社がフィンテックを軸とした次世代技術を積極的に取り込み、店舗改革や生産性向上を進めている。
MUFGは2023年度までに窓口で行員が接客する既存店舗を半減し、自動化などを取り入れた次世代店舗を増やすほか、事務などの業務量を人員にして9500人分に相当する30%減らす。
三井住友FGは19年度までに全430店舗を次世代店舗に転換。みずほFGも24年度までに全拠点を次世代化するほか、100拠点を削減する計画。構造改革や新たな攻め手を実現するカギとなるフィンテックは、各行の攻守の要として位置づけられる。
金融インフラ改革は各行共通の課題だ。時代に合わせた最適なインフラの在り方を模索する。一方で銀行・信託・証券の一体運営によるワンストップでのコンサルタント業務なども拡充。対面業務を強化して顧客との接点を増やす考えだ。デジタル技術がもたらす非対面業務と対面業務の両立が、構造改革の行方を左右する。
個人の購買履歴などデータを利活用する新たなビジネスの胎動も出始めた。個人からデータを預かり、本人に同意の上で企業に提供する「情報銀行」だ。個人が情報提供する企業を選択し、情報の対価として企業から金銭やサービスを受け取る仕組みであり、19年度に参入予定の三菱UFJ信託銀行はシーテックに関連サービスを展示する。
三井住友銀も情報銀行を中心とした経済システムの確立に向けて、研究開発を進める。個人と企業の間に仲介者が入ることで、個人を主体としたデータ活用を普及させる狙いがある。
日刊工業新聞2018年10月16日