幼稚園生にロボット教育を義務化するチリ、その狙いは?
【WRS】ビセンテナリオ・アブドン・シフエンテス学院(サンティアゴ市)のマルセロ・パチェコ・サパタ教諭インタビュー
ワールド・ロボット・サミット(WRS)のジュニア部門の競技ワークショップが13日、始まった。全体競技は17日スタートだが、13日はジュニア部門のスクールロボットチャレンジ(競技)のメンバーが集まった。同競技では開発されたロボットを競うのではなく、ロボット開発自体を競う。技術そのものよりも教育を志向した競技設計になっている。子どもたちは教員には相談できず、テクニカルサポートも最小限に留める。そのため、分からないことは他のチームに聞く。必要に迫られ、自然と国際交流が進む。13日もあちこちでチームが交流する姿が見られた。
WRSには世界から参加チームが集う。ジュニア部門の競技に参加するため来日した、チリ政府のアドバイザーを務めるビセンテナリオ・アブドン・シフエンテス学院(サンティアゴ市)のマルセロ・パチェコ・サパタ教諭にチリのロボット・プログラミング教育の動向を聞いた。
-チリのロボット大会の状況はいかがですか。
「数年前から大学が小中学校と共同でトーナメントやワークショップ、フェスタを開くようになり、大会の数が増えてきている。さまざまなロボット関連の国際大会でチリが上位に入るなど、トップが伸び、裾野も広がっている。WRSのメンバーは国際大会は初参加だ。慣れない環境だが、これまでやってきたことを最大限発揮してほしい。大会を通じて失敗や弱点を洗い出し、それをフィードバックしてチームの成長につなげたい」
-チリのロボットやプログラミング教育の動向は。ロボットプログラミングを通して子どもたちに成功体験を積んでもらうことが目的ですが、日本では知識やテクニックを詰め込むタイプの授業に陥るかもしれないとの懸念もあります。
「我々は知識詰め込み型の教育とは真逆だ。まず一部の知識やテクニックを教える。これは次に何が必要か、子どもたちが自分で探究できるようにするための基礎だ。子どもたちが自分たちで考え、仮説を立て、試す。これを繰り返し経験させている。そして学んだことは他の地域でワークショップを開き、別の子どもたちに教える。教わる側の子どもたちから質問され、教える側は理解したと思っていてもわかっていなかった部分や、新しく勉強しないといけない内容に気が付く。そして次の探究が始まる」
-チリ全体で実施されているのですか。
「全国だ。13歳から17歳までが学び、その後、その子たちが他の地域に出張して教えるという取り組みを政府として展開している。大変だし、時間もかかる。最大の課題は資金力だ。チリは地域によって格差が大きい。へき地には科学技術に触れる機会がない地域もある。いま世界がどうなっているか、知ってもらい、格差を是正する目的もある。我々が赴く島は、その25%は電気が通っていない。その島で育つ子どもたちにとって、(ロボット教育は)科学技術を学ぶ機会になる」
「子どもたちにとってはレゴのロボットキットで遊ぶ感覚だ。遊びながら論理的な考え方を養う。資金力などリソースが限られるからこそ、教える側の子どもたちは何を伝えたいか、そのためには何をすればいいか、知恵を絞る必要がある。私が実施しているカリキュラムでは、45人の生徒が二週間、島で合宿する。大人は私だけ。初めて親元を離れる子もいる。自分たちで生活を組み立て、島の子たちと勉強する。二週間で人間として大きく成長する。合宿をする先生はチリ全体でも10人くらいかもしれない」
-ロボットを教える先生は、どう育成しましたか。日本でもプログラミング教育の必修化に向けて先生たちが必死に勉強しているところです。
「チリも同じ状況だ。先生も自分で勉強しないと科学技術はどんどん先に進んでいく。常に自分をアップデートしていかないといけない。先生も生徒も学び続けないといけないのは同じだ。チリでは教育省が19年から就学前の子どもにロボット教育を義務化する。4-6歳の幼稚園にあたる子どもたちだ。先生たちは必死に勉強している。我々が幼稚園生に教えるなら、どのように興味を引き、説明したらいいか基本的なものを作って研修している。先生たちが自分に合わせてアレンジして取り組むことになる」
-ロボット教育の義務化はチリ全体で実施できるのですか。どんな教え方なら身につくのでしょうか。
「まずは限られた地域で始め、順次拡大していく。パイソンなどを使い、中国製のロボットキットで始める予定だ。子どもたちにとってはオモチャみたいなもので、楽しみながらテクノロジーに触れる経験をさせたい」
「教育制度やカリキュラムに科学技術を取り入れるには若い先生の力が必要だ。新しいモノを導入すると、いろんな課題が出てくる。これを乗り越えていくには若い力がいる。チリは3月大統領が替わった。新政権も子どもや教育を重視してくれている。すべては教育から始まる。チリの将来を支えるのはいまの若い世代だ。そして科学技術の進化は速い。いま科学技術の進化に乗り遅れると取り返しがつかなくなる。子どもたちに科学技術を教えるのは大切なことだ」
-WRSなどの国際イベントをどう活用しますか。
「子どもたちに経験を積ませたい。今回、チリから1チームと、マレーシアとの混成チームの二つが出場している。マレーシアは英語で、チリはスペイン語。言葉が違っても協力して開発できるという経験は貴重だ。またチリのチームは日本の『バニラ』チームにプログラミングを教えてもらっていた。彼女たちはまだ中学1年生。自分たちよりも小さな子たちがコツコツとプログラミングしていく姿はいい刺激になっただろう。教えることと、教えてもらうことで、互いに良いフィードバックがある。こうした経験が詰めるのはとても良い機会になる」
WRSには世界から参加チームが集う。ジュニア部門の競技に参加するため来日した、チリ政府のアドバイザーを務めるビセンテナリオ・アブドン・シフエンテス学院(サンティアゴ市)のマルセロ・パチェコ・サパタ教諭にチリのロボット・プログラミング教育の動向を聞いた。
-チリのロボット大会の状況はいかがですか。
「数年前から大学が小中学校と共同でトーナメントやワークショップ、フェスタを開くようになり、大会の数が増えてきている。さまざまなロボット関連の国際大会でチリが上位に入るなど、トップが伸び、裾野も広がっている。WRSのメンバーは国際大会は初参加だ。慣れない環境だが、これまでやってきたことを最大限発揮してほしい。大会を通じて失敗や弱点を洗い出し、それをフィードバックしてチームの成長につなげたい」
-チリのロボットやプログラミング教育の動向は。ロボットプログラミングを通して子どもたちに成功体験を積んでもらうことが目的ですが、日本では知識やテクニックを詰め込むタイプの授業に陥るかもしれないとの懸念もあります。
「我々は知識詰め込み型の教育とは真逆だ。まず一部の知識やテクニックを教える。これは次に何が必要か、子どもたちが自分で探究できるようにするための基礎だ。子どもたちが自分たちで考え、仮説を立て、試す。これを繰り返し経験させている。そして学んだことは他の地域でワークショップを開き、別の子どもたちに教える。教わる側の子どもたちから質問され、教える側は理解したと思っていてもわかっていなかった部分や、新しく勉強しないといけない内容に気が付く。そして次の探究が始まる」
-チリ全体で実施されているのですか。
「全国だ。13歳から17歳までが学び、その後、その子たちが他の地域に出張して教えるという取り組みを政府として展開している。大変だし、時間もかかる。最大の課題は資金力だ。チリは地域によって格差が大きい。へき地には科学技術に触れる機会がない地域もある。いま世界がどうなっているか、知ってもらい、格差を是正する目的もある。我々が赴く島は、その25%は電気が通っていない。その島で育つ子どもたちにとって、(ロボット教育は)科学技術を学ぶ機会になる」
「子どもたちにとってはレゴのロボットキットで遊ぶ感覚だ。遊びながら論理的な考え方を養う。資金力などリソースが限られるからこそ、教える側の子どもたちは何を伝えたいか、そのためには何をすればいいか、知恵を絞る必要がある。私が実施しているカリキュラムでは、45人の生徒が二週間、島で合宿する。大人は私だけ。初めて親元を離れる子もいる。自分たちで生活を組み立て、島の子たちと勉強する。二週間で人間として大きく成長する。合宿をする先生はチリ全体でも10人くらいかもしれない」
-ロボットを教える先生は、どう育成しましたか。日本でもプログラミング教育の必修化に向けて先生たちが必死に勉強しているところです。
「チリも同じ状況だ。先生も自分で勉強しないと科学技術はどんどん先に進んでいく。常に自分をアップデートしていかないといけない。先生も生徒も学び続けないといけないのは同じだ。チリでは教育省が19年から就学前の子どもにロボット教育を義務化する。4-6歳の幼稚園にあたる子どもたちだ。先生たちは必死に勉強している。我々が幼稚園生に教えるなら、どのように興味を引き、説明したらいいか基本的なものを作って研修している。先生たちが自分に合わせてアレンジして取り組むことになる」
-ロボット教育の義務化はチリ全体で実施できるのですか。どんな教え方なら身につくのでしょうか。
「まずは限られた地域で始め、順次拡大していく。パイソンなどを使い、中国製のロボットキットで始める予定だ。子どもたちにとってはオモチャみたいなもので、楽しみながらテクノロジーに触れる経験をさせたい」
「教育制度やカリキュラムに科学技術を取り入れるには若い先生の力が必要だ。新しいモノを導入すると、いろんな課題が出てくる。これを乗り越えていくには若い力がいる。チリは3月大統領が替わった。新政権も子どもや教育を重視してくれている。すべては教育から始まる。チリの将来を支えるのはいまの若い世代だ。そして科学技術の進化は速い。いま科学技術の進化に乗り遅れると取り返しがつかなくなる。子どもたちに科学技術を教えるのは大切なことだ」
-WRSなどの国際イベントをどう活用しますか。
「子どもたちに経験を積ませたい。今回、チリから1チームと、マレーシアとの混成チームの二つが出場している。マレーシアは英語で、チリはスペイン語。言葉が違っても協力して開発できるという経験は貴重だ。またチリのチームは日本の『バニラ』チームにプログラミングを教えてもらっていた。彼女たちはまだ中学1年生。自分たちよりも小さな子たちがコツコツとプログラミングしていく姿はいい刺激になっただろう。教えることと、教えてもらうことで、互いに良いフィードバックがある。こうした経験が詰めるのはとても良い機会になる」
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