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電力大手の相次ぐ『CO2ゼロ』契約プランの狙い

新電力に対抗
電力大手の相次ぐ『CO2ゼロ』契約プランの狙い

昭和初期に建設された東電の発電専用「丸沼ダム」(群馬県片品村)

 電力大手で法人向けに、二酸化炭素(CO2)を排出しない水力発電所などの環境価値を活用した契約プランが相次ぎ登場している。21世紀後半に温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が発効し、大口法人顧客を中心に環境経営への取り組みが本格化していることが背景だ。再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す国際的な企業連合「RE100」に参加する日本企業も増えつつあり、電力自由化の時流に乗って価格攻勢を強める新電力に、環境価値で対抗する。

東電EPが先陣


 2017年4月に先陣を切ったのは東京電力ホールディングス(HD)の販売会社、東京電力エナジーパートナー(東電EP)。東電グループの一般水力発電(揚水発電を除く)を電源とする料金メニュー「アクアプレミアム」を設定し、三菱地所が所有・管理する新丸の内ビルディング(東京都千代田区)、ソニーの本社(同港区)とソニーシティ大崎(同品川区、NBF大崎ビル)、キリンビール取手工場(茨城県取手市)とキリンビバレッジ湘南工場(神奈川県寒川町)に供給を始めた。

 “CO2ゼロ”の付加価値分が加算されて割高な料金になるが、顧客は購入した電力を地球温暖化対策推進法(温対法)に基づく温室効果ガス排出量の算定から除外できる。東電EPは売り上げの一部を水源涵養(かんよう)林の育成など水力電源の維持・拡大にも充てている。

 その後、フジクラ本社ビル(東京都江東区)とイオン本社(千葉市美浜区)、花王が小田原工場(神奈川県小田原市)の一部でアクアプレミアムを採用した。

関電と九電が続く


 関西電力は東電EPに追随する形で18年4月、同様に自社の一般水力発電所を電源とする法人向け料金メニュー「水力ECOプラン」を設定した。「営業戦略上、具体的な契約件数など実績は公表できない」(広報室)とするが、問い合わせも多いようだ。

 一方、九州電力は9月下旬、水力発電と地熱発電を組み合わせた法人向け料金メニュー「再エネECOプラン〜水と地熱の電気特約」を設定した。購入した電力は温室効果ガスの排出量算定から除外できるのは同じで、国内にある地熱発電設備の約4割を保有する自社の特徴を生かした。

(文=編集委員・青柳一弘)
日刊工業新聞 2018年10月8日

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