日本は防災・減災技術で世界に貢献できるか。官民連携の推進組織立ち上がる
日本防災産業会議で「ウィン−ウィンの関係を構築したい」(内閣府)
各企業の耐震・免震技術は世界最高水準。ゲリラ豪雨対策も開発進む
日本はこれまでに数多くの災害に見舞われ、被害が発生した。だが、これらを教訓に防災・減災に役立つ技術の開発が進んでいる。例えば、東日本大震災では津波で多くの人命が失われたが、建物の倒壊による被害は少なかった。阪神・淡路大震災以降、建築物の耐震性能が強化されたからだ。こうした日本の防災・減災に資する技術やノウハウは国内だけではなく、災害が頻発する世界でも活用できる。防災・減災技術の一層の強化・普及が求められている。
「わが国企業は防災・減災に関する豊富な技術を蓄積している」。経団連は2月17日、防災・減災技術についてまとめた報告書を公表した。会員企業が持つ294件の技術を用途別にリスト化したが「耐震技術が一番進んでいる」(岩崎一雄経団連政治社会本部上席主幹)。世界有数の地震大国であることを反映し、日本企業の耐震や免震技術は世界的に高水準にある。
防災・減災技術は、災害発生前の予防・予測に有効な技術と災害発生後の対応・復旧に有効な技術の二つに分けられる。地震の予防では、耐震・免震の技術や工法が数多く存在。ゲリラ豪雨や竜巻では発生を予測する気象レーダーや各種センサーが有効だ。一方、災害対応・復旧では、被災時に使える通信機器や被害情報などを把握する情報システムが活躍する。
日本の防災・減災技術はまだ防災・減災対策が進んでいない新興国や途上国で有効だ。こうした中、産学官が連携して海外に向け防災・減災技術を発信する「日本防災プラットフォーム」が2014年6月に発足した。防災・減災技術は基礎・応用技術、科学的知見や政策などさまざまな要素が絡む。それぞれの特徴を生かして防災・減災に役立つ技術やシステムの開発が求められる。
【NTTファシリティーズ 被災ビル“見える化”】
NTTファシリティーズの建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」は、地震直後の建物被災状況を即座に“見える化”する。高精度センサーを使って建物の揺れをモニタリングし、建物の被災状況をリアルタイムでわかりやすくモニター上に表示する。建物の利用者に迅速で適切な初動対応するための客観的データを提供。導入コストも地震計を使う既存の類似システムに比べ3―5割削減する。
既存の類似システムは地震の揺れを計測する地震計が高価で、建物の全階に設置するのは難しかった。だが安価な高精度センサーを開発し、建物全階に設置することで、地震直後に損傷可能性のある階をピンポイントで把握する。これまで困難だった杭や非構造部材の損傷の可能性も、より正確に判定できる。
【NEC 避難する人の動き把握】
地震直後の対策では避難する人々の動きをいち早く把握し、安全に導くことが求められる。NECは防災カメラの映像から、人と人が重なって見えるほどの混雑時も群衆の状況を高精度に解析し、異変につながる動きの変化を個人を特定することなく把握できる「群衆行動解析技術」を開発。これを中核とした総合防災システムを東京都豊島区から受注し、6月から本格運用に入る。
豊島区では池袋駅をはじめとする主要駅周辺や幹線道路、学校などに51台の防災カメラを設置。災害時の帰宅困難者への早期対応や平時の混雑地域での事故防止に役立てる。多くの人が集う公共施設などでは災害時に集団で転倒するなどのリスクが高い。総合防災システムではリアルタイムに異常を検知できるため、事故を未然に防ぎ、被害を最小限に抑える効果が期待されている。
2015年03月11日深層断面/07月24 日2面