支援物資をいち早く被災地へ。SEMA初稼働で見えた課題
西日本豪雨で企業とNPOが連携
北海道胆振(いぶり)東部地震や西日本豪雨など、甚大な被害をもたらす自然災害が国内各地で相次いでいる。大規模災害からの復旧には、救援物資の迅速な提供が欠かせない。その中で、ヤフーなどの民間企業と民間非営利団体(NPO)が連携して災害時に物資を支援するアライアンス(連合体)「SEMA(シーマ)」が、7月に初めての支援活動を実施。西日本豪雨の被災地に飲料や食料品などを届けた。
シーマは、災害時に加盟企業が提供できる物資やサービスを平時からリスト化し、被災地のNPOから送られる情報をもとに必要な物資やサービスを一体的に提供する。2017年8月に発足し、現在45社6団体が加盟する。西日本豪雨の支援では水・飲料2万7701リットル、衣料品1万2763点、衛生用品1万2763人分、タオル3600枚などを20カ所以上の避難所や支援拠点に提供した。
今回の支援を振り返って、シーマの責任者を務めるヤフーの岸谷美穂CSR推進室マネージャーは「十分な量の物資を届けたことで、被災地にいるボランティアからは尽きることを気にせずに配ることができたと喜ばれた。自治体と調整したことで、公助が届きにくい場所への支援を補完することもできた」と、一定の手応えを感じている。
物資を被災地まで届けても滞留などで被災者の元までなかなか届かない、いわゆる「ラストワンマイル」の解消にもシーマの存在が生きた。シーマに加盟していた岡山の企業がNPOと連携し、自社の物流網を使って支援物資の配布に協力した。西日本豪雨のように、在宅避難者が多くなるほど配送の難易度は高まる。
岸谷マネージャーは「非常時に企業とNPOがいきなり連携を図るのは難しい。シーマを通して普段から顔が見える関係を築いていたから実現した」と成功の要因を分析する。災害復旧の過程で個人向けの配送業者に荷物が集中しやすいことから、今後は自社でBツーB(企業間)の配達手段を持っている地方企業の参画が増えることを期待している。
一方で、物流面では課題も浮き彫りになった。シーマが物資の輸送を始めた8日は、まだ加盟を検討中だったJALと連携して物資を被災地へ輸送した。しかし、その後は配送手段の確保が難航し、ハート引越センターの施設と輸送ルートを使って定期便の運行を始める11日までは企業ごとの個別の配送に頼る形になった。
「当時はまさに物資輸送の体制を確立している途中だった」(岸谷マネージャー)とはいえ、物資があるにも関わらず被災地へ満足に送れない状態が発生した影響は大きい。
被災者が必要とする支援は災害発生からの時間や復旧の段階に応じて変わるため、災害発生後すぐに動ける体制は欠かせない。さらに、状況に応じて変動する物資の量や種類にも対応する必要があるため、現在は配送業者や引っ越し業者を中心とした物流体制の確立を急いでいる。
シーマでは今後もアライアンスへの参加を広く呼びかけ、提供可能な支援の拡充を図る。NPOからも支援に関するアドバイスや企業の紹介が寄せられており、いつどこで起きるか分からない災害に備えて着実に歩みを進めている。ヤフーでも社内のメディアチームと連携し、位置情報を活用したNPOの支援や「隠れ避難場所」への支援強化を目指すとしている。
シーマは、災害時に加盟企業が提供できる物資やサービスを平時からリスト化し、被災地のNPOから送られる情報をもとに必要な物資やサービスを一体的に提供する。2017年8月に発足し、現在45社6団体が加盟する。西日本豪雨の支援では水・飲料2万7701リットル、衣料品1万2763点、衛生用品1万2763人分、タオル3600枚などを20カ所以上の避難所や支援拠点に提供した。
今回の支援を振り返って、シーマの責任者を務めるヤフーの岸谷美穂CSR推進室マネージャーは「十分な量の物資を届けたことで、被災地にいるボランティアからは尽きることを気にせずに配ることができたと喜ばれた。自治体と調整したことで、公助が届きにくい場所への支援を補完することもできた」と、一定の手応えを感じている。
物資を被災地まで届けても滞留などで被災者の元までなかなか届かない、いわゆる「ラストワンマイル」の解消にもシーマの存在が生きた。シーマに加盟していた岡山の企業がNPOと連携し、自社の物流網を使って支援物資の配布に協力した。西日本豪雨のように、在宅避難者が多くなるほど配送の難易度は高まる。
岸谷マネージャーは「非常時に企業とNPOがいきなり連携を図るのは難しい。シーマを通して普段から顔が見える関係を築いていたから実現した」と成功の要因を分析する。災害復旧の過程で個人向けの配送業者に荷物が集中しやすいことから、今後は自社でBツーB(企業間)の配達手段を持っている地方企業の参画が増えることを期待している。
課題は輸送手段
一方で、物流面では課題も浮き彫りになった。シーマが物資の輸送を始めた8日は、まだ加盟を検討中だったJALと連携して物資を被災地へ輸送した。しかし、その後は配送手段の確保が難航し、ハート引越センターの施設と輸送ルートを使って定期便の運行を始める11日までは企業ごとの個別の配送に頼る形になった。
「当時はまさに物資輸送の体制を確立している途中だった」(岸谷マネージャー)とはいえ、物資があるにも関わらず被災地へ満足に送れない状態が発生した影響は大きい。
被災者が必要とする支援は災害発生からの時間や復旧の段階に応じて変わるため、災害発生後すぐに動ける体制は欠かせない。さらに、状況に応じて変動する物資の量や種類にも対応する必要があるため、現在は配送業者や引っ越し業者を中心とした物流体制の確立を急いでいる。
シーマでは今後もアライアンスへの参加を広く呼びかけ、提供可能な支援の拡充を図る。NPOからも支援に関するアドバイスや企業の紹介が寄せられており、いつどこで起きるか分からない災害に備えて着実に歩みを進めている。ヤフーでも社内のメディアチームと連携し、位置情報を活用したNPOの支援や「隠れ避難場所」への支援強化を目指すとしている。
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