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建基法改正で防災設備の点検要員充実待ったなし

人材確保が追いつかない可能性も…定期検査・報告が義務化
建基法改正で防災設備の点検要員充実待ったなし

東京国際消防防災展でのデモンストレーション(三和シヤッター工業)

 防火設備メーカーが、設備の点検要員の充実を急いでいる。2016年6月の建築基準法改正で防火シャッターや防火扉などの設備について年に1度の定期検査・報告が義務化され、3年の猶予期間が終わる19年6月から本格運用が始まるためだ。三和シヤッター工業は防火設備の点検に必要な国家資格取得者を、現在の2100人(17年末時点、社員と外注先の技術者合計)から3000人に増やす計画。文化シヤッターも関連した業界団体の資格取得を推進するなど対応を急いでいる。

 建築基準法の改正により、公共施設などの管理者は火災を検知して作動する随時閉鎖式の防火シャッターや防火扉などについて、年に1度の点検と結果報告が義務付けられた。検査・報告は国家資格「防火設備検査員」などの取得者が主導。日本シヤッター・ドア協会によると、現時点の有資格者数は約1万3600人という。

 三和シヤッター工業では、約2100人の資格取得者を19―20年度中に2700人、その数年後に3000人に増やす計画。このための講習の実施や講師の派遣を進めている。

 それでも、同社営業推進本部メンテナンス事業推進部の胡口裕部長は「人材の確保や教育が点検台数に追いつかない可能性がある」と危機感を示す。

 同社では納入記録に応じて検査・報告の人員計画を立てているが、「既設の設備の設置状況を網羅するのは至難の業」(胡口部長)。検査後の修理件数も増加が見込まれ、必要な人員数の正確な予測は難しいのが現状だ。

 同社では今後、人材確保と同時にタブレット端末の活用や点検しやすい環境作りで検査効率を高め、正確で迅速な点検の実現に向けた環境を整備。建物の多様化・多機能化に対応するため、設計事務所や防災業者との連携も視野に入れる。

 文化シヤッターも現在の国家資格取得者1900人(17年度末時点)を19年度までに2000人へ増やす方針。このため、メンテナンスを手がける子会社で、日本シヤッター・ドア協会が運用している関連資格の取得を推進し、国家資格取得のための知識の習得を支援している。
(文=国広伽奈子)
日刊工業新聞2018年8月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
両社ともに、検査員の増員や点検作業の効率化で防災・減災のニーズに応える体制づくりを進める。 (日刊工業新聞社・国広伽奈子)

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