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米国靴ブランド「メレル」、店舗でIoTをどう活用?

米国靴ブランド「メレル」、店舗でIoTをどう活用?

丸紅はグループの小売店舗で購買行動の可視化実験を行った(メレル二子玉川)

 丸紅が部門横断でIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した事業変革の取り組みを加速している。専任部署として2017年4月に設置した「IoT・ビッグデータ戦略室」を改組・格上げし、18年4月に「デジタル・イノベーション部」を新設。営業本部ごとにやるべきことを縦軸、部門横断的なテーマを横軸として、デジタル技術を活用したビジネスの創出を目指す。

 丸紅はこれまで各営業部門からデジタル技術の活用に関し、主に既存事業の効率化や収益向上を図るアイデアを募集。新規性や実現性の高いものに助成金を出して、実証実験を行ってきた。17年度は物流や小売り、電力など16件を実施した。

 18年度からは「コスト削減や収益改善と同時に、新しいビジネスの創出に軸足を移している」(福村俊宏デジタル・イノベーション部副部長)。これまでの実証段階から、総合商社の事業への実装を意識した動きを進める。

 具体的な動きも出てきた。日立製作所と協力し、AIを活用した需給や取引価格の分析を、国内電力小売り事業で本格導入する。電力の需給傾向や取引価格などをAIで分析・予想して、業務改善やコスト削減につなげる狙い。実証段階で一定の効果が認められたため、事業化に乗り出す。

 事業創出に向けたデジタル活用では、従来の総合商社が手がけてこなかった領域にも踏み込んでいる。一例が子会社の丸紅フットウェアを通じて展開する米国靴ブランド「メレル」でのIoTを活用した実証実験だ。

 コニカミノルタと協力しメレルの店舗にカメラを設置。購買行動のデータ分析をマーケティングに生かすとともに、店舗レイアウトの変更や販促などの効果を可視化する。ビッグデータ解析による需要予測や、購買につながるきっかけの発見、AIによる店舗改善の提案や顧客の購買行動予測なども視野に入れる。

 社内から上がってくるデジタル技術の活用提案について福村副部長は、「昨年は思いつきのようなものもあったが、今年はパイプライン(案件化)に結びつくような次元の高いものになってきている」と手応えを感じている。
(文・宮里秀司)
日刊工業新聞2018年8月29日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
営業現場をはじめとした社内の意識変革が今後のカギを握りそうだ。

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