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「今どきハードウエアなんて」の時代だからこそNo1の販売パートナーになる

伊藤忠テクノソリューションズ社長・菊地哲氏インタビュー
 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がSI(システム構築)事業で攻勢に出ている。6月に英ニュートンインフォメーションテクノロジー(ウェンブリー)と業務提携し欧州でITサービス事業を本格化したほか、タイではアジャイル開発(小規模実装とテストを繰り返す手法)の支援サービスを始めた。国内ではベンチャー企業に相次ぎ出資するなど事業の幅を広げている。IT需要は好調だが、その中でどう収益に結び付けていくのか。菊地哲社長に戦略を聞いた。

 ―2020年までの中期経営計画では新しい方向性への移行を掲げています。

 「CTCはインフラの構築事業に強みがある。インフラの上にアプリケーション(応用ソフト)を積み上げるイメージで上に進んでいく。これまでもシステム開発は手がけているがメーンにはなっていない。この3年でインフラからアプリケーションの方向へ進む。例えば、CTCは独SAPの仮想環境におけるインメモリーデータベース『S/4HANA』を全面的に導入している。これを手がけられるところはまだ少ない」

 ―主力のインフラ構築事業の方向性は。

 「ハードウエアを扱う会社が少なくなっているからこそ、ナンバーワンの販売パートナーになる。『今どきハードウエアなんて』といわれるかもしれないが、NFV(ネットワーク機能の仮想化)にもハードウエアは必要だ。大手ベンダーはパートナー経由で販売する。『CTCから買うといい条件で買える』という流れをつくりたい」

 ―インフラ領域はクラウドへ移行していませんか。

 「日本ではオンプレミス(自社設備)からクラウドへ移行しているが、米国では逆流している。大手のパブリッククラウドは非常に便利でさまざまな開発が可能だが、使い始めると逃れられなくなる。これを『ロックインされる』という。米国ではクラウドからオンプレミスに戻したいという現象がある。状況により自由にオンプレミスやプライベートクラウドなど、どの基盤でも動くようなニーズが遅かれ早かれ日本でも出てくる。CTCも『キュービックmc2』というパブリッククラウドを展開する。単年度黒字になるレベルに来ている。クラウド事業ではCTCのオリジナルを伸ばす」

 ―海外展開を強化しています。

 「グローバルは時間がかかる。13年から本格的に進めているがまだ道半ばだ。他社と違うのは『進出国でCTCをつくる』というコンセプトだ。出資するのではなく、現地法人にする。今年はインドネシアを強化する。米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含めM&A(合併・買収)の話は進めている」
日刊工業新聞2018年8月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
強みを生かした既存ビジネスの拡大が収益構造を支えている。一方で海外進出やベンチャーとの協業など次の一手も確実に打っている。社内でアイデア募集をして、会社の次なる事業にしていく取り組みも始めた。企業のIT化という特需ではなく、堅実な事業戦略が成長のカギになる。(川口拓洋)

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