ニュースイッチ

“星”活用さまざま…期待高まるエンタメの宇宙利用

オリジナル“星座”や人工流れ星
“星”活用さまざま…期待高まるエンタメの宇宙利用

地上の星座を宇宙から撮影するため、アルミ箔を貼った反射鏡を小学校の校庭に設置(だいちの星座提供)

 天気の良い日の夜空を見上げると多くの星々を見ることができる。全地球測位システム(GPS)がない時代に航海士は星を目印に航海をしており、今でも宇宙探査機の航路の目印として利用されている。実用的な用途だけでなく、星座占いなどで古くから多くの人々に親しまれてきた。さらに今では人工の星を作りだそうとするビジネスも登場している。星に関わる取り組みを追った。

 6月27日に3年半の長旅を経て小惑星「リュウグウ」に到着した宇宙探査機「はやぶさ2」は、小惑星試料採取に向けたタッチダウン(着陸)の準備を進めている。地球から3億キロメートルの距離にあるリュウグウは大きさ900メートル。はやぶさ2プロジェクトチームの吉川真ミッションマネージャは「はやぶさ2をリュウグウに到着させることは、ブラジルにある6センチメートルの的を日本から狙うのと同じ」と強調する。このミッション成功のため採用したのが「光学電波複合航法」という手法だ。

 同航法では、はやぶさ2に搭載したカメラが、星を背景にしたリュウグウの写真を複数枚、撮影。星座の位置などを示した「星図」のどこにリュウグウが写るかで、リュウグウに対するはやぶさ2の位置と速度を割り出した。今まで数キロメートルあったはやぶさ2の位置推定誤差を小さくし、エンジン噴射による軌道修正を経てリュウグウへ到着できた。小惑星への正確な接近手法は今後の宇宙探査の基盤技術となるだろう。

電波反射鏡利用、オリジナル“星座”


 人工衛星を利用し、オリジナルの“星座”の写真を撮影するという試みがある。金沢美術工芸大学の鈴木浩之准教授らは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち2号」を利用し、地上の観測画像の中に星座を描く「だいちの星座プロジェクト」を行っている。2017年6月には茨城県高萩市の小学校4校の校庭で電波反射鏡を光らせ、だいち2号で地上を撮像し四つの星座を作り出した。共同研究者である大木真人JAXA研究開発員は「海外の協力者と協議中」と海外展開も視野に入れる。

 鈴木准教授らは14年のだいち2号の運用開始に合わせプロジェクトを立ち上げた。鹿児島県南種子町や茨城県つくば市などで地域の星座を作った。今回は子ども1人で作れる反射板を鈴木准教授が考案し、1100人の生徒が反射板を持って参加した。

 今後の展望として星座の複数枚の画像を撮影し、アニメーションを作成する検討をしている。さらに9月にはだいち2号からの電波の受信音を利用し、光や音を出すパフォーマンスイベントを予定する。芸術と科学の融合は、次世代を担う子どもたちにひらめきを与えるかもしれない。

流れ星まで人工!? 事業化、世界展開目指す


 流れ星に祈れば願い事がかなう。その流れ星を作り出すというビジネスまで現れた。17年2月、宇宙ベンチャーのALE(東京都港区)は、世界初となる人工流れ星を日本上空で発生させるプロジェクトを発表。プロジェクトのための2機の超小型衛星を開発中だ。

 20年春にも広島・瀬戸内地域を中心に、直径200キロメートルの範囲で人工流れ星を見られるはずだ。衛星には金属を含む直径1センチメートルの球状の粒を放出する装置を搭載し、上空400キロメートルの軌道上の衛星から粒を打ち出す。大気圏に粒が突入し燃え尽きる際に発光する光が、流れ星として見える仕組みだ。岡島礼奈社長は「人工流れ星を作って見せるプロジェクトを成功させ、事業を世界に展開したい」としている。

人工衛星で作られた人工流れ星を地上で見た時の想像図(ALE提供)
日刊工業新聞2018年8月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
星は身近な存在として楽しみを与えてくれる。新しい技術を導入した宇宙探査や、宇宙を利用したエンターテインメントの進展に期待したい。 (日刊工業新聞社・冨井哲雄)

編集部のおすすめ