新規参入相次ぐ“QRコード決済”、標準化には懐疑の声も
キャッシュレス推進協が始動
7月に発足した産学官連携組織「キャッシュレス推進協議会」が動きだした。経済産業省など複数の省庁がオブザーバーとなり、2018年度中に七つのプロジェクトについて議論する。中でも注目されるのが、スマートフォンなどを使って簡単に支払いができる2次元コード「QRコード」の決済だ。10月の創立大会に先駆けて「QRコード決済の標準化」プロジェクトの初会合が9日行われた。QRコード決済の参入が相次ぐ中で、早期の仕様整備が求められている。
「競争自体は歓迎すべきだが、フラグメンテーション(データの断片化)の状況になりつつある」。同協議会の福田好郎常務理事は現況に危機感を募らせる。「QRコード決済の標準化」プロジェクトでは、利用者が端末にQRを表示して機器にかざす「CPM」と、QRを利用者の端末で読み取る「MPM」の仕様範囲などを議論する。
例えば、CPM方式ではQRコードと1次元バーコードの両方を表示しているケースがあることから、QRの前に1次元コードの議論を早期に行い、コード先頭8桁を事業者仕分けコードとして確保することを目指す。QRコードに何を入れ、どういう意味づけにするかという技術仕様や、返金・返品対応などの業務仕様については18年度内に議論する。
経産省消費・流通政策課の担当者は「固定電話の市外局番のように最低限特定できる共通コードが必要だ」とし、協調領域については標準化した方が社会的コストの低下やシステム改修の負荷などの低減が図れるとする。
デンソー(現デンソーウェーブ)が開発した“クイック・レスポンス”に由来する、QRコードはこれまでも日本や世界で普及していたが、QRコード決済の仕様はこれまで定まった基準がなく、各社ばらばらだった。導入コストの低さや人手不足対策などを理由に、キャッシュレス推進のための決済手段の一つとして企業が参入。最近では携帯・IT大手企業も相次いで乗り出している。
NTTドコモは利便性の向上や新たな収益源の獲得を目指し、実店舗での決済手段としてスマホ決済サービス「d払い」を4月に始めた。d払いアプリケーションに表示された1次元バーコードやQRコードを販売時点情報管理(POS)や決済端末で読み取る方式を採用した。
KDDIも18年度中のQRコード決済サービスを提供予定。同社は通信事業を軸に「通信とライフデザインの融合」を進めている。ライフデザインには決済なども含まれており、経済圏を広げる一手段ととらえる。ソフトバンクも今秋にはヤフーやインド最大の決済サービス会社と連携し、バーコードやQRコードを使ったスマートフォン決済サービス「ペイペイ」を始める。
一方、モバイルペイメント業界に先駆的に参入した楽天は、スマホ決済サービス「楽天ペイ」で電子商取引(EC)サイトから実店舗への展開を図る。楽天は、楽天IDを活用して、楽天ペイ、楽天ポイントカードなどをスマホのアプリ一つで利用できるサービスを計画中だ。
LINEPay(東京都新宿区)の長福久弘取締役は「ペイメント・レボリューション(決済革命)を起こす」と強調。小規模事業者向けにスマホ決済サービス「LINEペイ」でQRコード決済の加盟店手数料を3年間ゼロ円にするほか、POS改修費を負担する余力のない中小企業に対して18年内に専用端末の申し込みを受け付けるなどの新たな事業戦略を打ち出した。
流通系ではイオンフィナンシャルサービスがQRコード決済の導入に前向きだ。万月雅明常務は「(従来の決済手段と違い)米グーグルの基本ソフト(OS)『アンドロイド』と米アップルのOS『iOS』に互換性がある」とし、QRコードの決済手段としての可能性を評価する。
一方で、関係者からはQRコードの標準化は歓迎だがどこまでできるのか懐疑的な声や要望も聞かれる。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは流通大手のイオンに、国際的なセキュリティー標準である「EMV」に準拠した非接触決済(タッチ決済)端末の提供を決めたように、基本的にEMV仕様の非接触決済を推奨している。ただ、QRコード決済に対する要求に応えるため、EMV仕様のQRコードの提供も検討する。デジタル・ソリューション&ディプロイメントの鈴木章五部長は「(キャッシュレス推進協議会では)国内のみの視点ではなく、国際的な観点からも議論してほしい」と願う。
(文・山谷逸平)
「競争自体は歓迎すべきだが、フラグメンテーション(データの断片化)の状況になりつつある」。同協議会の福田好郎常務理事は現況に危機感を募らせる。「QRコード決済の標準化」プロジェクトでは、利用者が端末にQRを表示して機器にかざす「CPM」と、QRを利用者の端末で読み取る「MPM」の仕様範囲などを議論する。
例えば、CPM方式ではQRコードと1次元バーコードの両方を表示しているケースがあることから、QRの前に1次元コードの議論を早期に行い、コード先頭8桁を事業者仕分けコードとして確保することを目指す。QRコードに何を入れ、どういう意味づけにするかという技術仕様や、返金・返品対応などの業務仕様については18年度内に議論する。
経産省消費・流通政策課の担当者は「固定電話の市外局番のように最低限特定できる共通コードが必要だ」とし、協調領域については標準化した方が社会的コストの低下やシステム改修の負荷などの低減が図れるとする。
デンソー(現デンソーウェーブ)が開発した“クイック・レスポンス”に由来する、QRコードはこれまでも日本や世界で普及していたが、QRコード決済の仕様はこれまで定まった基準がなく、各社ばらばらだった。導入コストの低さや人手不足対策などを理由に、キャッシュレス推進のための決済手段の一つとして企業が参入。最近では携帯・IT大手企業も相次いで乗り出している。
NTTドコモは利便性の向上や新たな収益源の獲得を目指し、実店舗での決済手段としてスマホ決済サービス「d払い」を4月に始めた。d払いアプリケーションに表示された1次元バーコードやQRコードを販売時点情報管理(POS)や決済端末で読み取る方式を採用した。
KDDIも18年度中のQRコード決済サービスを提供予定。同社は通信事業を軸に「通信とライフデザインの融合」を進めている。ライフデザインには決済なども含まれており、経済圏を広げる一手段ととらえる。ソフトバンクも今秋にはヤフーやインド最大の決済サービス会社と連携し、バーコードやQRコードを使ったスマートフォン決済サービス「ペイペイ」を始める。
一方、モバイルペイメント業界に先駆的に参入した楽天は、スマホ決済サービス「楽天ペイ」で電子商取引(EC)サイトから実店舗への展開を図る。楽天は、楽天IDを活用して、楽天ペイ、楽天ポイントカードなどをスマホのアプリ一つで利用できるサービスを計画中だ。
“決済革命”を狙う
LINEPay(東京都新宿区)の長福久弘取締役は「ペイメント・レボリューション(決済革命)を起こす」と強調。小規模事業者向けにスマホ決済サービス「LINEペイ」でQRコード決済の加盟店手数料を3年間ゼロ円にするほか、POS改修費を負担する余力のない中小企業に対して18年内に専用端末の申し込みを受け付けるなどの新たな事業戦略を打ち出した。
流通系ではイオンフィナンシャルサービスがQRコード決済の導入に前向きだ。万月雅明常務は「(従来の決済手段と違い)米グーグルの基本ソフト(OS)『アンドロイド』と米アップルのOS『iOS』に互換性がある」とし、QRコードの決済手段としての可能性を評価する。
一方で、関係者からはQRコードの標準化は歓迎だがどこまでできるのか懐疑的な声や要望も聞かれる。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは流通大手のイオンに、国際的なセキュリティー標準である「EMV」に準拠した非接触決済(タッチ決済)端末の提供を決めたように、基本的にEMV仕様の非接触決済を推奨している。ただ、QRコード決済に対する要求に応えるため、EMV仕様のQRコードの提供も検討する。デジタル・ソリューション&ディプロイメントの鈴木章五部長は「(キャッシュレス推進協議会では)国内のみの視点ではなく、国際的な観点からも議論してほしい」と願う。
(文・山谷逸平)
日刊工業新聞2018年8月14日