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画像認識の次のブレークスルーはどこだ…深層学習のロボ応用広がる

野心的な研究が続々登場
 ディープラーニング(深層学習)のロボット応用が広がっている。画像認識から始まり把持点抽出や動作計画、経路探索など、認識から制御へと活用範囲を広げている。国内学会では深層学習を使うだけで研究発表ができてしまう感があるほどだ。この追い風を受けて、たくさんの試行錯誤が広がった。野心的な研究が芽を出している。

 ロボットの国内学会では既存のロボット技術を深層学習で追試し、使い勝手や性能を確認した研究が多く発表されている。果樹収穫ロボットがイチゴやトマトの実を検出する際に深層学習を使ったり、簡単な迷路を解く経路探索に深層強化学習を使ったりと、各研究室が培ってきたロボット技術に深層学習が試されている。

 ただ、果樹検出は従来のカラー検出の方が計算が軽くて速かった。複雑な経路探索は信頼性を担保できないなど、深層学習が単独で勝る応用例はそう多くはない。大学では深層学習にあう問題探しが続いている。

 前川製作所(東京都江東区)は豚の肉塊から骨を取り除く除骨ロボットに深層学習を応用した。肉塊断面の骨を正確に見つける画像認識技術を開発する。脂肪が白いため、赤い肉と白い骨を分ける単純な画像処理では誤差が大きくなる。

 734枚の正解データをエミュレーターで約1万枚に増幅して深層学習にかけた。骨の検出位置が1センチメートル以上ズレてしまうエラーが0・9%と従来の約8分の1になった。山下智輝主任研究員は「深層学習は強力。データを用意すれば検出できてしまう。従来は対象ごとにプログラムを細かく直していた」と手応えは大きいようだ。

 大阪大学の池本周平助教は複雑なロボットを制御するための線形式を学習モデルから生成する研究を進める。ロボットは信号を入力するとモーターなどが動いて変形し、何かしらの形をとる。この動きの入出力を数式で表して制御に使う。本来ロボットの設計時に制御式を作るが、機体を作った後にデータと学習で生成する。深層学習のようなニューラルネットワーク型の学習モデルは、生き物のシナプスが発火するような情報処理を活性化関数で再現する。活性化関数には入力に応答しないゼロ区間と、入力に対し線形応答する区間がある。理論的にはこの線形応答の関数をすべて合わせれば制御式が得られる。

 シミュレーションで2軸アームを動かして100万データをとり制御性を確認した。7軸アームを2本載せた双腕ロボットもシミュレーションして1億データの学習で、ある程度制御できることを確認している。池本助教は「無数の関節をもつ生物模倣ロボットや身体が軟らかいソフトロボットなど、技術者が制御式を書き切れなかった複雑なロボットの制御に応用していきたい」と展望する。

 深層学習への追い風を受けて、事業化を見据えた実用研究も野心的な基礎研究も活性化している。画像認識の次のブレークスルーがどこで起きるか目が離せない。

 

(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2018年7月25日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
深層学習でロボットの制御モデルが作れれば、身体が柔らかいソフトロボットのブレイクスルーになるかもしれません。深層学習で汎化するため近似誤差があるため、剛体のロボットにとっては無視できないかもしれません。ですがソフトロボットはもともとが誤差の塊のような不安定さなので充分使えるかもしれません。またロボット一体の制御モデルだけでなく、ロボットが作業する対象を含めた制御モデルや、複数体の協調モデルができると良いなと思います。人間との協調作業を計測して、人とロボを丸ごと深層学習にかけると面白いかもしれません。EMSのような同じ作業の繰り返しの現場なら作業者への制御則のようなものが見えてくるかもしれません。役に立つかはまだわかりませんが。

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