無視できない中国語の研究論文、AI翻訳でマークせよ!
JSTや情通機構が高精度サービス開発
科学技術分野で日本と中国を人工知能(AI)が結び付けようとしている。科学論文や特許などの日中翻訳サービスが始まった。ディープラーニング(深層学習)で精度が向上し、読みやすい機械翻訳が実現した。中国は論文数と特許数がともに急増し、無視できない成果が増えていた。日本の研究者は英語と中国語で最新動向を追い掛けることになりそうだ。
AI研究は米国と中国の2強状態にある。東京大学の松尾豊特任准教授は「中国のレベルは日本よりも高い。データを集め、学習させる。やるべきことを普通にやっている」と評価する。論文など成果の多くは英語で発表されるが、中国語の文献も膨大だ。
AI関連以外で見ても、例えば鉱物などの資源分野の研究も中国は強い。希少金属を研究する岡部徹東大教授は「レアアースの製造技術は、多くの部分で中国に追い抜かれてしまっている」と指摘する。これまでは環境に悪い精錬プロセスなど、先進国で行い難い研究が中国では中心と考えられてきた。だが産出国ならではの産学連携が進みプロセス技術全体が底上げしている。中国語のみの文献が増え、必ずしも英語で公開されない。
そんな中、AIが日中の言語を高精度に翻訳するサービスが始まった。科学技術振興機構(JST)は京都大学、中国科学技術信息研究所と共同で日中翻訳システムを開発。JSTの文献データベースと合わせて翻訳機能の提供を始めた。AIに400万件の翻訳済み文章を学習させて精度を高めた。JSTの岩城修主任調査員は「翻訳率は97%。科学論文のような長文をしっかり翻訳できる」と説明する。
情報通信研究機構は特許庁向けの翻訳AIを開発した。特許文章に特化して精度を上げた。多数の翻訳を並列的に処理して翻訳スピードも高め、審査官たちの待ち時間を短くする。
情通機構の翻訳AIはみらい翻訳(東京都渋谷区)が民間向けに事業化する。今夏をめどにサービスを始める。製造業の技術マニュアルなどビジネス文書の翻訳が手軽になる。業界や用途ごとの言葉の使い方をユーザー自身で反映できるように辞書機能を設けた。さらにユーザーから過去の翻訳データを預かり、ユーザーごとに翻訳AIを深層学習させることも可能だ。古谷利昭最高執行責任者は「我々は日本語と中国語を直接変換する。中国語―英語、英語―日本語と、英語を仲介するグーグル翻訳に勝っている」と胸を張る。
科学技術分野における中国の台頭のようにAI技術の進化も目覚ましい。翻訳AIサービスが普及すれば、普通の研究者でも中国語文献に手が届くようになる。中国から学び、巻き返すための環境が整いつつある。
AI研究は米国と中国の2強状態にある。東京大学の松尾豊特任准教授は「中国のレベルは日本よりも高い。データを集め、学習させる。やるべきことを普通にやっている」と評価する。論文など成果の多くは英語で発表されるが、中国語の文献も膨大だ。
AI関連以外で見ても、例えば鉱物などの資源分野の研究も中国は強い。希少金属を研究する岡部徹東大教授は「レアアースの製造技術は、多くの部分で中国に追い抜かれてしまっている」と指摘する。これまでは環境に悪い精錬プロセスなど、先進国で行い難い研究が中国では中心と考えられてきた。だが産出国ならではの産学連携が進みプロセス技術全体が底上げしている。中国語のみの文献が増え、必ずしも英語で公開されない。
長文に対応
そんな中、AIが日中の言語を高精度に翻訳するサービスが始まった。科学技術振興機構(JST)は京都大学、中国科学技術信息研究所と共同で日中翻訳システムを開発。JSTの文献データベースと合わせて翻訳機能の提供を始めた。AIに400万件の翻訳済み文章を学習させて精度を高めた。JSTの岩城修主任調査員は「翻訳率は97%。科学論文のような長文をしっかり翻訳できる」と説明する。
情報通信研究機構は特許庁向けの翻訳AIを開発した。特許文章に特化して精度を上げた。多数の翻訳を並列的に処理して翻訳スピードも高め、審査官たちの待ち時間を短くする。
情通機構の翻訳AIはみらい翻訳(東京都渋谷区)が民間向けに事業化する。今夏をめどにサービスを始める。製造業の技術マニュアルなどビジネス文書の翻訳が手軽になる。業界や用途ごとの言葉の使い方をユーザー自身で反映できるように辞書機能を設けた。さらにユーザーから過去の翻訳データを預かり、ユーザーごとに翻訳AIを深層学習させることも可能だ。古谷利昭最高執行責任者は「我々は日本語と中国語を直接変換する。中国語―英語、英語―日本語と、英語を仲介するグーグル翻訳に勝っている」と胸を張る。
科学技術分野における中国の台頭のようにAI技術の進化も目覚ましい。翻訳AIサービスが普及すれば、普通の研究者でも中国語文献に手が届くようになる。中国から学び、巻き返すための環境が整いつつある。
日刊工業新聞2018年5月23日