リベンジに燃える金星探査機「あかつき」とJAXA
失敗の原因は
※2010年12月28日付の日刊工業新聞から
探査機「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗は、主エンジンの燃料系逆流防止バルブが正常に開かなかった故障が根本原因と考えられると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が27日、文部科学省宇宙開発委員会の調査部会に報告した。エンジンへの燃料供給が不十分となって異常燃焼か噴射口の破損が起き、噴射方向がずれて姿勢が乱れた結果、逆噴射が中断したという。
このバルブ(米国製)は、燃料をタンクから押し出す高圧ヘリウムガスの配管にあり、燃料の逆流を防ぐ役割がある。宇宙機構はバルブが故障したメカニズムや、エンジンの燃焼に与える影響を解明するため、来年7月にかけて地上で再現実験を行う。
あかつきは6年後に金星に接近する機会があり、宇宙機構は周回軌道投入に再挑戦する方針だが、この再現実験の結果により可能か判断する。エンジンのバルブ故障は、1998年10月に打ち上げた火星探査機「のぞみ」でも、同年12月の地球重力圏離脱時に発生。燃料と混合する酸化剤側のバルブが十分開かず、パワー不足となって2003年12月の火星周回軌道への投入失敗に至った。
あかつきは酸化剤側には同型バルブを2個付ける対策をしていたが、似たようなトラブルを繰り返した原因の究明も求められる。
あれから5年、今度こそ
2015年7月15日付の日刊工業新聞記事から
▽…12月の金星軌道投入の再挑戦に向け、「ご飯も喉に通らない」と話すのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」の計画責任者を務める中村正人さん。
▽…あかつきは、2010年12月に試みた金星軌道投入に失敗。今月中旬から軌道修正を3回実施する予定に関連して、「『投入時期を遅らせてはどうか』とアドバイスも受けた」という。
▽…それでも、機体は太陽熱や宇宙放射線で傷んでおり、「ぜひ成功に導きたい」とキッパリ。ラストチャンスにかける強い意気込みを示す。
日刊工業新聞 2010年12月09日、同12月28日、2015年07月10日、同07月15日付記事を再編集