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リベンジに燃える金星探査機「あかつき」とJAXA

リベンジに燃える金星探査機「あかつき」とJAXA

金星軌道への再投入に再挑戦する金星探査機「あかつき」(2010年12月07日付日刊工業新聞記事から)

**再挑戦に向け、7月に軌道修正
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月9日、2010年に軌道投入に失敗した金星探査機「あかつき」について、12月7日の再挑戦に向け、7月に3回に分けて軌道修正制御を実施すると発表した。計画では17日、24日、31日の3回にわたって、あかつきの姿勢制御用エンジンを噴射し、進行方向に向かって合計毎秒87メートルの軌道修正を実施する。

 8月3日に同エンジン噴射による軌道修正の成否について判断を下す予定。今回の軌道修正は、金星軌道投入に向けて最大のヤマ場を迎えるという。

 JAXAの中村正人あかつきプロジェクトマネージャは、7月の軌道修正について「トップ側(機体上部)の姿勢制御エンジンを初めて使うため、非常に緊張しているが、ぜひ成功させたい」としている。

 あかつきは金星の気象などを観測するため10年5月に打ち上げた。しかし、主エンジンのトラブルなどで軌道投入ができなかった。

5年前、「はやぶさ」成功の陰で…


※2010年12月9日付の日刊工業新聞記事から

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8日、金星探査機「あかつき」の金星への軌道投入に失敗したと発表した。今後、原因について検証する。ただ、あかつきは太陽の周りを回っており、6年後金星に再び接近するため、再投入に挑む。
 あかつきは主エンジンを720秒間、逆噴射する予定だったが、2、3割程度の短時間で終わったため十分減速できず、金星付近を通過したとみられている。
 逆噴射の際、燃料を半分程度消費したものの、噴射時間が少なかったため燃料は十分残っているという。2016年12月から2回程度、軌道再投入を試みる。中村正人JAXA教授は会見で「期待も込めて、可能性はかなり高いと思っている」と自信を示した。
 ただ、あかつきの本来の寿命は約4年半で、約6年間に太陽の周りを10周程度するため、太陽からの放射線の影響を受ける可能性もあり、機体に搭載された電子部品への損傷も考えられる。長期間の過酷な宇宙空間での航行のため、再投入の成否は予断を許さない状況だ。

≪解説≫ 教訓生かし未来開け
 金星探査機「あかつき」が金星への周回軌道への投入に失敗したことは、最難関とされる一発勝負の惑星探査機のその投入への高度な技術を必要とすることをあらためて示した。あかつきは6年後、再び金星に接近するため再投入に挑む。だが、長い期間、過酷な宇宙空間で放射線を多量に浴びる可能性もあり、機体への損傷も懸念される。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1998年に打ち上げた火星探査機「のぞみ」が03年12月に軌道投入に失敗して以来、「今度こそリベンジを」(中村正人JAXA教授)と意気込んだ。しかし、主エンジンの逆噴射時間が短く、またも失敗。詳しい原因を検証中だが、最大の難関とされた一度きりの軌道投入のチャンスを生かせなかった。
 小惑星探査機「はやぶさ」が通信途絶や燃料漏れなど、再三のトラブルに見舞われながらも満身創痍(そうい)の状態で帰還。イトカワの粒子の発見という快挙を成し遂げた。あかつきにはその技術や経験を生かし、軌道投入のカウントダウンを前に、「100%の自信はある」(中村教授ほか)など、プロジェクトチーム関係者から強気の声も上がっていただけに、失望も大きい。
 ただ、あかつきの機体の損傷はなく、燃料も十分残っているため、再チャレンジに挑むことになった。あかつきの投入失敗の原因を解明し、次の再投入に向け、運用体制を整えることで、同じ失敗を繰り返してはならない。宇宙開発では、探査機の軌道投入やロケットの打ち上げ失敗はつきもの。失敗で得た教訓を生かしてこそ、宇宙開発の未来が開ける。

日刊工業新聞 2010年12月09日、同12月28日、2015年07月10日、同07月15日付記事を再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
つい最近、NASA(米航空宇宙局)の冥王星探査機が初めて接近観測に成功したという発表をしましたが、今年の冬には日本の金星探査機も再チャレンジします。5年前の失敗を糧に、再び金星周回軌道に挑戦するJAXAの金星探査機「あかつき」。関係者の努力に思いをはせると胸が熱くなってきます。ぜひ成功してほしいです。

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