おもちゃやしおり…町工場が職人技で仕掛けるBtoC
東京・大田区から挑む自社製品
町工場が仕掛けるBツーC(対消費者)―。樹脂や金属など各種加工を手がける工場が立ち並ぶ東京都大田区。下請け企業群として栄えてきたが、近年自社製品の開発を進める企業が増えている。区が製品を認定する「お土産100選」にはモノづくり企業が作った対消費者向け製品の部門が設けられている。利益だけにとらわれない、各社の戦略に迫った。
「この重みで高級感を感じてほしい」と笑顔を見せるのはアイエヌビーの因幡嘉仁専務。アルミニウムを切削して、オモチャの迷路を作った。アルマイト処理され外観もカラフル。ただ、同社では“利益を出す商品”として大々的に売り出すつもりはなく、自社技術のPRに利用する。幅広い層にPRし、仕事や地域の活性化につなげる。
西村製作所は、プレス加工で作ったしおりを製造・販売する。「平押し工法」という昔ながらのバリが出ないプレス方法を活用。大田区の職人技を肌で感じられる一品とした。バリ取りした方が早いが、話の種になるようあえてこの方法をとっているという。
西田昇社長は「ロゴマークを入れられるため、将来的には大田区の成人式、はとバスツアーのお土産として活用してほしい」と夢を語る。同社もまた、自社技術のPRと地域活性化に利用する。
他方、PRから一歩踏み出し、製品としての販売に挑む企業もある。トキ・コーポレーションは、音に反応して羽ばたくチョウのロボット「パピヨン2」を発売した。時枝直満会長は「量産化できる体制を整えてコストカットし、一般向けに販売したい」と意気込む。
同ロボットは温度変化により伸び縮みする形状記憶合金を動力とするアクチュエーター「バイオメタル」を内蔵している。10年以上研究を続けている同合金を製品に落とし込んだ。今後、年5000―1万個作れる体制にすべく量産化モデルを開発するという。
同合金は人工食道やカテーテルなど医療現場で使うモノとして実験が進められている。時枝会長は「どういう現場でどんな技術、製品が必要かがまだ分かっていない。活用場面が広がりそうだ」と期待を込める。本格的に製品を販売し、バイオメタルを正式に事業化したい考えだ。
現在、3社の製品は大田区観光情報センターで販売中。このほか2年間で15品が「お土産100選」のモノづくり部門に選ばれ、同センターに置かれている。羽田空港に近い立地もあり、外国人観光客が手に取ることも多く、モノづくりの街を体感してもらうのに一役買っている。
加工業者は「何を作っている会社なのか分からない」と言われることにジレンマを抱える。高い技術を伝える術がなかなかない。自社商品は、いわば“技術力を訴求できるツール”だ。PR製品をきっかけに自社を知ってもらえば、利益の出る本業の仕事につながるきっかけになる。
「この重みで高級感を感じてほしい」と笑顔を見せるのはアイエヌビーの因幡嘉仁専務。アルミニウムを切削して、オモチャの迷路を作った。アルマイト処理され外観もカラフル。ただ、同社では“利益を出す商品”として大々的に売り出すつもりはなく、自社技術のPRに利用する。幅広い層にPRし、仕事や地域の活性化につなげる。
西村製作所は、プレス加工で作ったしおりを製造・販売する。「平押し工法」という昔ながらのバリが出ないプレス方法を活用。大田区の職人技を肌で感じられる一品とした。バリ取りした方が早いが、話の種になるようあえてこの方法をとっているという。
西田昇社長は「ロゴマークを入れられるため、将来的には大田区の成人式、はとバスツアーのお土産として活用してほしい」と夢を語る。同社もまた、自社技術のPRと地域活性化に利用する。
他方、PRから一歩踏み出し、製品としての販売に挑む企業もある。トキ・コーポレーションは、音に反応して羽ばたくチョウのロボット「パピヨン2」を発売した。時枝直満会長は「量産化できる体制を整えてコストカットし、一般向けに販売したい」と意気込む。
同ロボットは温度変化により伸び縮みする形状記憶合金を動力とするアクチュエーター「バイオメタル」を内蔵している。10年以上研究を続けている同合金を製品に落とし込んだ。今後、年5000―1万個作れる体制にすべく量産化モデルを開発するという。
同合金は人工食道やカテーテルなど医療現場で使うモノとして実験が進められている。時枝会長は「どういう現場でどんな技術、製品が必要かがまだ分かっていない。活用場面が広がりそうだ」と期待を込める。本格的に製品を販売し、バイオメタルを正式に事業化したい考えだ。
現在、3社の製品は大田区観光情報センターで販売中。このほか2年間で15品が「お土産100選」のモノづくり部門に選ばれ、同センターに置かれている。羽田空港に近い立地もあり、外国人観光客が手に取ることも多く、モノづくりの街を体感してもらうのに一役買っている。
加工業者は「何を作っている会社なのか分からない」と言われることにジレンマを抱える。高い技術を伝える術がなかなかない。自社商品は、いわば“技術力を訴求できるツール”だ。PR製品をきっかけに自社を知ってもらえば、利益の出る本業の仕事につながるきっかけになる。
日刊工業新聞2018年8月3日