先端家電、コンビニの先進サービス…まず「中国の顧客が鍛える」
「今後、多くのイノベーションが中国起点になる」(パナソニック)
日本企業が、先進の製品・サービスを中国に先行導入する例が増えている。パナソニックはインターネット家電を、ローソンはセルフ決済を日本に先駆け投入している。革新的なものを受け入れる中国の消費者の存在が、日本で普及してから中国へと展開するという従来のパターンを変え始めている。この中国における消費者の先進性は、企業の製品・サービスの進化も促している。
「今後、多くのイノベーションが中国起点になる」と展望を明かすのは、パナソニックの家電事業トップ、本間哲朗専務執行役員。同社はインターネット接続する冷蔵庫を、日本に先駆け中国で発売した。
日本でも2017年にスマートフォン操作ができるネット対応の洗濯機を投入。売れ行きは好調だが、ネット機能の利用率は約3割にとどまる。本間氏は、「新しいものがすぐに広がる中国と、浸透しにくい日本」と、もどかしさを感じつつも、中国の変化の速さに舌を巻く。
「松下さん、中国の近代化を手伝ってくれませんか」。1978年に登小平副首相(当時)は、松下電器産業(現パナソニック)を訪れ、創業者の松下幸之助氏にこう呼びかけた。同社はこれを機に中国での家電事業に乗り出し、産業発展に一役買った。今や、中国が日本より進んでいる面もある。
シャープは17年10月、超高精細の「8K」液晶テレビを中国で先行発売した。具体的な販売数量は明かしていないが、「中国での販売量は日本より1ケタ多い」(喜多村和洋TVシステム事業本部長)という。
中国では4Kテレビも「日本よりもはるかに速いペースで普及が進む」(同)。8K・4K本放送の開始は日本が先行するものの、中国ではネット対応のテレビが浸透。ネットを通じた8Kコンテンツが充実すれば、8Kテレビが中国でいち早く普及しそうだ。
ダイキン工業はIoT(モノのインターネット)を活用した空気清浄機などを対象に、中国市場を軸に開発して世界展開する体制に移行しつつある。都市部の大気汚染が深刻な同国では、空気環境への関心が高い。
ダイキンは現地開発機能を強化してきたことで、中国起点の展開が可能になった。パナソニックも「中国で1000人規模の開発部隊を育ててきたことが強み」(本間専務執行役員)とする。日系企業の中国拠点が開発を主導する場面は増えそうだ。
ローソンは来店者がスマホで商品バーコードを読み取り、オンライン決済サービス「楽天ペイ」などを使ってセルフ決済する仕組みを、東京都内で実証実験している。
しかし、同システムは上海エリアではすでに全店舗で導入済みだ。ローソンの竹増貞信社長は中国の拠点に「先進的なデジタルの取り組みに挑戦し、日本や世界中に持って行く」役割を期待する。
20年度までの中期経営計画の一つに「デジタル化」を掲げるイオンは子会社を通じ上海市に5月末、AIやIoTを活用した無人化、省人化を研究する企業を開業。生体認証決済などを用いた無人型コンビニを開発している深蘭科技(上海市)と協業した。
中国は無人型コンビニで先行する。日本同様に人件費高騰への危機感もあるが、中国の業界関係者は「消費者が“新しモノ好き”である点が大きい。データを分析する人材も豊富。日本企業がこれまでに培った品質管理のノウハウなどと融合すれば、勝機はある」とみる。
中国で販売時点情報管理(POS)システムを展開するヴィンクスは騰訊控股(テンセント)や阿里巴巴(アリババ)集団など中国IT大手が小売り業へ投資を加速する中で、先進市場の需要を取り込もうとしている。
そうした中でヴィンクスの大西誠顧問は、「中国でセルフレジは当たり前。ほとんど電子マネーで買い物できる。(電子決済対応が遅れる)日本はガラパゴス化していないか」と、日本の現状に危機感も抱く。
中国経済のめざましいキャッチアップについて、日本はどちらかといえば、中国製品の性能や品質といった「供給」側に着目してきた。一方、近年は消費者という「需要」側も、先進的なものを積極購入するという意味で高度化している。
「今後、多くのイノベーションが中国起点になる」と展望を明かすのは、パナソニックの家電事業トップ、本間哲朗専務執行役員。同社はインターネット接続する冷蔵庫を、日本に先駆け中国で発売した。
日本でも2017年にスマートフォン操作ができるネット対応の洗濯機を投入。売れ行きは好調だが、ネット機能の利用率は約3割にとどまる。本間氏は、「新しいものがすぐに広がる中国と、浸透しにくい日本」と、もどかしさを感じつつも、中国の変化の速さに舌を巻く。
「松下さん、中国の近代化を手伝ってくれませんか」。1978年に登小平副首相(当時)は、松下電器産業(現パナソニック)を訪れ、創業者の松下幸之助氏にこう呼びかけた。同社はこれを機に中国での家電事業に乗り出し、産業発展に一役買った。今や、中国が日本より進んでいる面もある。
シャープは17年10月、超高精細の「8K」液晶テレビを中国で先行発売した。具体的な販売数量は明かしていないが、「中国での販売量は日本より1ケタ多い」(喜多村和洋TVシステム事業本部長)という。
中国では4Kテレビも「日本よりもはるかに速いペースで普及が進む」(同)。8K・4K本放送の開始は日本が先行するものの、中国ではネット対応のテレビが浸透。ネットを通じた8Kコンテンツが充実すれば、8Kテレビが中国でいち早く普及しそうだ。
ダイキン工業はIoT(モノのインターネット)を活用した空気清浄機などを対象に、中国市場を軸に開発して世界展開する体制に移行しつつある。都市部の大気汚染が深刻な同国では、空気環境への関心が高い。
ダイキンは現地開発機能を強化してきたことで、中国起点の展開が可能になった。パナソニックも「中国で1000人規模の開発部隊を育ててきたことが強み」(本間専務執行役員)とする。日系企業の中国拠点が開発を主導する場面は増えそうだ。
ネット決済、セルフレジ当たり前に
ローソンは来店者がスマホで商品バーコードを読み取り、オンライン決済サービス「楽天ペイ」などを使ってセルフ決済する仕組みを、東京都内で実証実験している。
しかし、同システムは上海エリアではすでに全店舗で導入済みだ。ローソンの竹増貞信社長は中国の拠点に「先進的なデジタルの取り組みに挑戦し、日本や世界中に持って行く」役割を期待する。
20年度までの中期経営計画の一つに「デジタル化」を掲げるイオンは子会社を通じ上海市に5月末、AIやIoTを活用した無人化、省人化を研究する企業を開業。生体認証決済などを用いた無人型コンビニを開発している深蘭科技(上海市)と協業した。
中国は無人型コンビニで先行する。日本同様に人件費高騰への危機感もあるが、中国の業界関係者は「消費者が“新しモノ好き”である点が大きい。データを分析する人材も豊富。日本企業がこれまでに培った品質管理のノウハウなどと融合すれば、勝機はある」とみる。
中国で販売時点情報管理(POS)システムを展開するヴィンクスは騰訊控股(テンセント)や阿里巴巴(アリババ)集団など中国IT大手が小売り業へ投資を加速する中で、先進市場の需要を取り込もうとしている。
そうした中でヴィンクスの大西誠顧問は、「中国でセルフレジは当たり前。ほとんど電子マネーで買い物できる。(電子決済対応が遅れる)日本はガラパゴス化していないか」と、日本の現状に危機感も抱く。
中国経済のめざましいキャッチアップについて、日本はどちらかといえば、中国製品の性能や品質といった「供給」側に着目してきた。一方、近年は消費者という「需要」側も、先進的なものを積極購入するという意味で高度化している。