中小企業は「適した仕事ない」7割超、テレワークは定着するか
「テレワーク・デイズ」が23日から
職場以外の場所で働くテレワークの実施を呼びかける国民運動「テレワーク・デイズ」が23日から5日間始まる。東京五輪・パラリンピックの開会まで24日であと2年に迫る中、政府は五輪期間中の交通混雑を緩和するため、テレワークの推進を促しており、今回はそのキャンペーンの一環。政府としては五輪後もテレワークの定着を促し、働き方改革につなげたい考えだ。
さいたま市のさいたまスーパーアリーナや千葉市の幕張メッセ、横浜市の横浜国際総合競技場など、東京五輪の競技会場は都心で働くサラリーマンの通勤ルートと重なることが多い。
五輪期間中、特に平日(7月27―31日、8月3―7日)に五輪関係車両や観客の移動で交通混雑が一層悪化すると予想される中、道路交通量を平日の15%減(休日並み)、鉄道は現状と同程度とする目標の達成にはテレワークが有効だ。
五輪期間中のテレワークの成功事例として12年のロンドン五輪がある。ロンドン市交通局がテレワークによる交通混雑回避を呼びかけたところ、開催期間までにロンドン市内の企業の約8割が協力し、市内の混雑解消につながった。
日本でも実際、17年7月24日に全国の約950団体、6万3000人が参加した第1回テレワーク・デイで交通混雑の緩和効果があった。
各基地局のエリアごとに所在する携帯電話の台数を基にした人口推計調査などによると、豊洲エリア(東京都江東区)の人口が7月平均より約14・9%、港区浜松町で同13・6%それぞれ減少。通勤のピーク時間である8時台の利用者数が豊洲駅で10・0%、芝公園駅で5・1%、それぞれ減った。
開催日を2日間以上に増やした今年のテレワーク・デイズでは2000団体、延べ10万人の参加が目標。すでにトヨタ自動車や三菱ケミカルなど多数の企業や自治体が参加を表明しており、NTTデータはテレワーク・時差通勤・休暇取得を組み合わせた取り組みを3万3000人規模で行う。筑波大学と共同研究したVR(仮想現実)技術を用い、場所の制約からの解放される会議システムも試験的に実施する。
富士通は社員1万人の参加を目標に神奈川県を中心に臨時社内サテライトオフィスを4カ所設置する。
これらの取り組みで目標の一つである10万人の参加は達成できそうだが、もう一つの目標である2000団体の参加は厳しそうだ。18日時点の参加団体数は1336団体にとどまる。大企業や地方自治体の参加が多い一方、国内企業数の99%以上を占める中小企業の参加が少ないからだ。
総務省がまとめた通信利用動向調査によると、17年の国内企業のテレワーク導入率は13・9%。ただ、社員数300人以上の企業では23%だった一方、300人未満では10・2%と、2倍以上の開きが出た。
テレワークを導入しない理由を企業に聞いたところ、「テレワークに適した仕事がない」が73・7%と、2位の「情報漏えいが心配」の22・2%を大きく上回る。ほとんどの中小企業でテレワークが可能な仕事がなく、普及していない実情が浮き彫りになった。
これに対し、総務省情報流通行政局の渋谷闘志彦氏は、「試験導入で体験してみることが有効だ。本格導入に向け業務の仕分けを行うなど、業務改革(BPR)にも取り組んでほしい」と語る。テレワークのノウハウが少ない中小企業に対しては、総務省は先進企業の労務管理や運用ポリシー、人材活用などの事例を積極的に周知していく。
例えば、社員数約30人の事務機器販売会社の石井事務機センター(岡山市南区)はパソコンを全社員に支給し、社外でも仕事ができるシステムを構築。全社員を対象に直行直帰や在宅勤務を実施し、スマートフォンで出退勤を管理可能にした。
テレワークの利用を評価に連動、時間当たりの生産性を賞与に反映した結果、19年度卒業予定の大学生を対象とした岡山県内の就職希望先ランキングで9位に入った。求人票に「在宅勤務可」と入れた結果、応募者数が8割増えたという。
総務省では、こうしたテレワーク導入企業の成功事例や導入時の留意点を説明する働き方改革セミナーを全国各地で実施している。さらに、企業などに専門家を派遣してテレワーク導入をアドバイスする「テレワークマネージャー派遣事業」、テレワーク導入で実績を上げた企業が導入検討企業を支援する「テレワーク推進企業ネットワーク」といった、さまざまな支援策を用意。「業種や企業規模に応じたテレワーク導入モデルの作製など、“見える化”を進める」(渋谷氏)考えだ。
総務省によると、17年にテレワークを導入している企業の56.4%は、働く場所や時間にとらわれずにノートパソコンや携帯情報端末を使って業務を遂行するモバイルワークを活用している。以下、自宅で仕事をする在宅勤務が29.9%、都心の本社に行かずに郊外の事務所で働くサテライトオフィスが12.1%だった。
テレワーク導入企業の業種別内訳は、情報通信業が31.1%で首位。金融・保険業の29.8%、サービス業・その他の13.8%、建設業の12.1%が続く。
一方で導入企業のうち、テレワークを利用している社員の割合は5%未満が51.4%と半数以上を占める。テレワーク導入企業の増加だけでなく、導入済み企業での利用率拡大も課題となっている。
さいたま市のさいたまスーパーアリーナや千葉市の幕張メッセ、横浜市の横浜国際総合競技場など、東京五輪の競技会場は都心で働くサラリーマンの通勤ルートと重なることが多い。
五輪期間中、特に平日(7月27―31日、8月3―7日)に五輪関係車両や観客の移動で交通混雑が一層悪化すると予想される中、道路交通量を平日の15%減(休日並み)、鉄道は現状と同程度とする目標の達成にはテレワークが有効だ。
五輪期間中のテレワークの成功事例として12年のロンドン五輪がある。ロンドン市交通局がテレワークによる交通混雑回避を呼びかけたところ、開催期間までにロンドン市内の企業の約8割が協力し、市内の混雑解消につながった。
日本でも実際、17年7月24日に全国の約950団体、6万3000人が参加した第1回テレワーク・デイで交通混雑の緩和効果があった。
各基地局のエリアごとに所在する携帯電話の台数を基にした人口推計調査などによると、豊洲エリア(東京都江東区)の人口が7月平均より約14・9%、港区浜松町で同13・6%それぞれ減少。通勤のピーク時間である8時台の利用者数が豊洲駅で10・0%、芝公園駅で5・1%、それぞれ減った。
開催日を2日間以上に増やした今年のテレワーク・デイズでは2000団体、延べ10万人の参加が目標。すでにトヨタ自動車や三菱ケミカルなど多数の企業や自治体が参加を表明しており、NTTデータはテレワーク・時差通勤・休暇取得を組み合わせた取り組みを3万3000人規模で行う。筑波大学と共同研究したVR(仮想現実)技術を用い、場所の制約からの解放される会議システムも試験的に実施する。
富士通は社員1万人の参加を目標に神奈川県を中心に臨時社内サテライトオフィスを4カ所設置する。
経営陣から意識改革
これらの取り組みで目標の一つである10万人の参加は達成できそうだが、もう一つの目標である2000団体の参加は厳しそうだ。18日時点の参加団体数は1336団体にとどまる。大企業や地方自治体の参加が多い一方、国内企業数の99%以上を占める中小企業の参加が少ないからだ。
総務省がまとめた通信利用動向調査によると、17年の国内企業のテレワーク導入率は13・9%。ただ、社員数300人以上の企業では23%だった一方、300人未満では10・2%と、2倍以上の開きが出た。
テレワークを導入しない理由を企業に聞いたところ、「テレワークに適した仕事がない」が73・7%と、2位の「情報漏えいが心配」の22・2%を大きく上回る。ほとんどの中小企業でテレワークが可能な仕事がなく、普及していない実情が浮き彫りになった。
これに対し、総務省情報流通行政局の渋谷闘志彦氏は、「試験導入で体験してみることが有効だ。本格導入に向け業務の仕分けを行うなど、業務改革(BPR)にも取り組んでほしい」と語る。テレワークのノウハウが少ない中小企業に対しては、総務省は先進企業の労務管理や運用ポリシー、人材活用などの事例を積極的に周知していく。
例えば、社員数約30人の事務機器販売会社の石井事務機センター(岡山市南区)はパソコンを全社員に支給し、社外でも仕事ができるシステムを構築。全社員を対象に直行直帰や在宅勤務を実施し、スマートフォンで出退勤を管理可能にした。
テレワークの利用を評価に連動、時間当たりの生産性を賞与に反映した結果、19年度卒業予定の大学生を対象とした岡山県内の就職希望先ランキングで9位に入った。求人票に「在宅勤務可」と入れた結果、応募者数が8割増えたという。
総務省では、こうしたテレワーク導入企業の成功事例や導入時の留意点を説明する働き方改革セミナーを全国各地で実施している。さらに、企業などに専門家を派遣してテレワーク導入をアドバイスする「テレワークマネージャー派遣事業」、テレワーク導入で実績を上げた企業が導入検討企業を支援する「テレワーク推進企業ネットワーク」といった、さまざまな支援策を用意。「業種や企業規模に応じたテレワーク導入モデルの作製など、“見える化”を進める」(渋谷氏)考えだ。
大部分がモバイルワーク活用
総務省によると、17年にテレワークを導入している企業の56.4%は、働く場所や時間にとらわれずにノートパソコンや携帯情報端末を使って業務を遂行するモバイルワークを活用している。以下、自宅で仕事をする在宅勤務が29.9%、都心の本社に行かずに郊外の事務所で働くサテライトオフィスが12.1%だった。
テレワーク導入企業の業種別内訳は、情報通信業が31.1%で首位。金融・保険業の29.8%、サービス業・その他の13.8%、建設業の12.1%が続く。
一方で導入企業のうち、テレワークを利用している社員の割合は5%未満が51.4%と半数以上を占める。テレワーク導入企業の増加だけでなく、導入済み企業での利用率拡大も課題となっている。
日刊工業新聞2018年7月20日