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「沖縄 産業の島へ♯03」進む沖縄発モノづくり

日刊工業新聞社那覇支局開設記念特集より
「沖縄 産業の島へ♯03」進む沖縄発モノづくり

沖縄県が整備している賃貸工場


ファンド、補助金…企業支援も厚く


 製造業への支援体制も広がっている。2014年12月に組成された「沖縄ものづくり振興ファンド」は、これまでに製造業5社に対して投資を実行した。出資総額15億2500万円の同ファンドは沖縄県産業振興公社(那覇市)に加えて、琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行、コザ信用金庫(沖縄県沖縄市)が出資している。企業の資金調達の幅を広げる狙いだ。

 県内の全地域金融機関が参加する「オール沖縄」の製造業支援ファンドである一方、県外の製造業も出資対象となり、沖縄でのモノづくりを後押しする。

 地場の学術機関のシーズを製造業振興に生かす取り組みもある。沖縄県は15年度に「沖縄科学技術イノベーションシステム構築事業」を進める。沖縄科学技術大学院大学や琉球大学などが持つ科学技術を事業化する狙いだ。医療やバイオなど成長分野の技術シーズを県内経済の活性化につなげる。全国の企業とマッチングし、“出口志向”の研究に導く。1件当たり年5000万円と高額の補助金を充てることで企業誘致にもつなげる。

 琉球大学医学部内にはロート製薬が「再生医療研究センター」を設置した。脂肪由来幹細胞を使用した再生医療の基盤研究を進めて、共同研究を行うとともに早期の医薬品化を目指す。脂肪組織を用いて分化能や効果の優れた沖縄特有の脂肪由来幹細胞を見いだし、細胞の特性解析、さまざまな薬理薬効評価をもとに各種疾患に対する治療薬を開発していく。

 このほかにも、沖縄には他地域にはない植物や素材が豊富にあり、機能性物質を使った健康食品や化粧品から医療分野へ応用できる余地も大きい。産学官の連携が進めば、沖縄の立地も生かせるなど優位性はさらに高まる。

2018年技能五輪全国大会へ向けて人材育成


 2018年度に沖縄で開催が決まっている「技能五輪全国大会」と「全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)」。この開催に関連してモノづくり振興の機運が高まる期待も大きい。現在は開催準備委員会が、開催基本計画の策定に向けて動いている。

 同委員会は技能団体、職業能力開発、障害者職業リハビリ、教育、経済団体、観光、行政の各機関21者で構成。8月上旬に15年度最初の会合を開く予定だ。

 開催に向けて必要になるのは会場や競技用の工作機械といった設備など。また応援などで15万人規模が集まるビッグイベントでもあり、宿泊や移動を含めた検討も必要になる。

 同大会はモノづくり分野の競技職種だけでなく、調理やサービスなど観光業が盛んな沖縄では優位性を発揮できる分野も多く、“ホームグラウンド”での選手の活躍が期待される。

(全4回、次回は7月18日に掲載)
日刊工業新聞2015年07月15日 特集「沖縄 産業の島へ」より抜粋
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
県内に製造業が少ないことが、優秀な人材の県外流出につながっています。また、県外からUターンなどで戻ってくる人にとっても、元の職場と同じ業種がなく、不慣れな異業種に就職せざるをえないという状況も生み出しています。

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