攻殻機動隊の押井監督がILC誘致を応援する理由
応援団「ILCサポーターズ」が発足
「国際リニアコライダー(ILC)は『世界とつながる地方創生』を生み出し、東京五輪以降の日本の成長の新しいモデルになる」。こうしたかけ声の下、財界人や文化人など128人が名を連ねる「ILC100人委員会」が6月29日に発足した。ILCの日本誘致に賛同し、その意義を発信する応援団の誕生だ。
発起人代表は元総務相で前岩手県知事の増田寛也氏。同日開いた記念式典で、増田氏は「ILCは日本が経験したことのない壮大な計画。実現に向けた壁は厚いが、委員の方々には誘致を国民的議論へ高める環境作りにご尽力いただきたい」とあいさつ。式典には故与謝野馨氏が設立したILCを推進する超党派の国会議員連盟(河村建夫会長)の議員らも出席し、塩谷立幹事長が祝辞を述べた。
4月には、映画監督の押井守氏が発起した応援団「ILCサポーターズ」が発足している。押井氏が「世の中のためになる活動を」との思いから立ち上げた運動は、映画や出版業界だけでなく、会員制交流サイト(SNS)を通じて一般にも広がり、サポーターは1万人を軽く超えた。押井氏は6月に開いた活動報告会で、「子どものころに夢見た科学はもっと素晴らしいものだった。しかし、現代の日本では“ワクワクした科学”が感じられない。どうしてこうなったのか。根底にそうした問題意識がある」と語った。
これは「科学というより文化の問題」とした上で、日本人がILCを文化と認めるかどうかが問われているとする。また、「五輪は3週間で終わるが、ILCは何十年も続き、世界遺産としても残せる」とも述べた。
「国際リニアコライダー」(ILC)は、電子と陽電子を加速して衝突させる次世代の直線型加速器。岩手、宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地だ。
宇宙誕生から1兆分の1秒後のビッグバンを再現し、物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」を精密測定する。ヒッグス粒子を大量に作り出す“ヒッグス工場”として機能させることで、素粒子物理学で主流の「標準理論」の枠組みを超えるような新たな物理現象の発見を狙う。
12年にヒッグス粒子を発見したスイスにある欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、陽子と陽子をぶつける円形の加速器だ。衝突エネルギーが高く、新粒子探索には適するが、精密測定には不向きだ。これに対し、ILCでは素粒子反応のすべてを直接観測できる。
研究者組織である国際将来加速器委員会(ICFA)は04年、世界にただ一つだけ建設する「ILC計画」として推進することを決定。日本の高エネルギー物理学研究者会議はすぐに名乗りを上げ、13年に北上山地が事実上の「世界唯一の候補地」に決まった。
だが、国内の研究方針を定める日本学術会議は「素粒子物理学としての学術的意義は認める」としつつ、当初計画が約1兆円と見積もられた巨額の建設コストなどを理由に「誘致は時期尚早」と判断し、決定を先送りした経緯がある。
発起人代表は元総務相で前岩手県知事の増田寛也氏。同日開いた記念式典で、増田氏は「ILCは日本が経験したことのない壮大な計画。実現に向けた壁は厚いが、委員の方々には誘致を国民的議論へ高める環境作りにご尽力いただきたい」とあいさつ。式典には故与謝野馨氏が設立したILCを推進する超党派の国会議員連盟(河村建夫会長)の議員らも出席し、塩谷立幹事長が祝辞を述べた。
4月には、映画監督の押井守氏が発起した応援団「ILCサポーターズ」が発足している。押井氏が「世の中のためになる活動を」との思いから立ち上げた運動は、映画や出版業界だけでなく、会員制交流サイト(SNS)を通じて一般にも広がり、サポーターは1万人を軽く超えた。押井氏は6月に開いた活動報告会で、「子どものころに夢見た科学はもっと素晴らしいものだった。しかし、現代の日本では“ワクワクした科学”が感じられない。どうしてこうなったのか。根底にそうした問題意識がある」と語った。
これは「科学というより文化の問題」とした上で、日本人がILCを文化と認めるかどうかが問われているとする。また、「五輪は3週間で終わるが、ILCは何十年も続き、世界遺産としても残せる」とも述べた。
国際リニアコライダーってなに?
「国際リニアコライダー」(ILC)は、電子と陽電子を加速して衝突させる次世代の直線型加速器。岩手、宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地だ。
宇宙誕生から1兆分の1秒後のビッグバンを再現し、物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」を精密測定する。ヒッグス粒子を大量に作り出す“ヒッグス工場”として機能させることで、素粒子物理学で主流の「標準理論」の枠組みを超えるような新たな物理現象の発見を狙う。
12年にヒッグス粒子を発見したスイスにある欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、陽子と陽子をぶつける円形の加速器だ。衝突エネルギーが高く、新粒子探索には適するが、精密測定には不向きだ。これに対し、ILCでは素粒子反応のすべてを直接観測できる。
研究者組織である国際将来加速器委員会(ICFA)は04年、世界にただ一つだけ建設する「ILC計画」として推進することを決定。日本の高エネルギー物理学研究者会議はすぐに名乗りを上げ、13年に北上山地が事実上の「世界唯一の候補地」に決まった。
だが、国内の研究方針を定める日本学術会議は「素粒子物理学としての学術的意義は認める」としつつ、当初計画が約1兆円と見積もられた巨額の建設コストなどを理由に「誘致は時期尚早」と判断し、決定を先送りした経緯がある。
日刊工業新聞2018年7月4日、4月10日から抜粋