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キヤノンの“アオリ撮影”できるレンズ、ヒットの裏に寿司あり

映画仕立ての動画、「何か変なことが起きたと分かる」
キヤノンの“アオリ撮影”できるレンズ、ヒットの裏に寿司あり

TS-Eレンズ紹介動画(キヤノン公式動画より)

 キヤノンは、特殊なデジタルカメラ向け交換レンズによって、作品の幅を広げられることを訴求する短い動画を作成した。題材に選んだのは「寿司(すし)」で、映画仕立てに仕上げた。ユーチューブで公開した動画は、日本だけでなく、欧米でも多く視聴された。誰もが使う製品ではないにもかかわらず、2017年末に発売された新製品群は、バックオーダーを抱える人気となっている。

 キヤノンは、“アオリ撮影”のできるレンズ「TS―E」シリーズのマクロレンズ3機種の発売に合わせて、寿司をモチーフにした動画を作成した。

 同レンズは、レンズの光軸を撮像面に対して斜めにしたり、ずらしたりすることで、フォーカス面を傾けたり、奥行き感を調整できる。プロカメラマンが商品撮影や人物のポートレート撮影などに利用している、知る人ぞ知るレンズだ。

 例えば、時計を撮影する時に、文字盤の傾きに合わせてレンズの光軸を傾けると、文字盤全体をきれいに撮影できる。逆にあおってピントを浅くすると、人物の目だけにピントを合わせた印象的な写真も撮影できる。

 レンズの商品企画を担当するイメージコミュニケーション事業本部ICB光学事業部の家塚賢吾課長は、「他ジャンルのプロ写真家やプロ顔負けのアマチュア写真家にも、撮影の可能性が広がることを伝えたい」と話す。

 寿司をモチーフにすれば、海外の人も興味を持ちやすい。何より、回転レーンの上を寿司皿が流れたり、しょうゆを垂らしたり、複数の人が一緒に食べていたりと、さまざまな動きがあり、多様な表現ができる。動画には、撮影効果などの説明はない。

 ただ、しょうゆの流れるところ全てにピントが合っている場面などを見ると、「カメラの基礎を知っている人なら、『何か変なことが起きた』と分かる」(家塚課長)。

 実際の撮影には、レンズの光軸を撮影する面に対して傾ける「ティルト」操作や、平行に移動させる「シフト」操作、マクロ撮影のそれぞれの効果を使ったほか、この3点を分かりやすく伝えるため、「各場面ごとに何度も練習して撮影した」(同)という。

 別途、メイキング映像も公開しており、かなり高い割合でメイキング映像も視聴されているという。さらに、欧州の販社は、独自に行った動画制作チームへのインタビュー動画も公開し、より興味を持ってもらえるように工夫している。

アオリ撮影が可能な「TS−Eレンズ」シリーズを持つICB光学事業部の家塚課長

(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2018年6月22日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
「撮影効果の説明という役割を超えて、クリエイターを刺激したい」(家塚課長)という。従来も撮影効果を紹介する動画を作成したいたが、レンズに詳しくない人には説明的で退屈。また、どんなレンズか知っているプロには必要なかった。クリエイターの創造力を刺激できれば、自由に新しい映像表現を模索してくれる。また、このレンズを購入しない人にも、「キヤノンのレンズの可能性を感じてほしい」(同)と期待する。

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