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入学志願者数5年連続日本一の近畿大、ロシアに学ぼうとしていること

細井美彦新学長インタビュー
入学志願者数5年連続日本一の近畿大、ロシアに学ぼうとしていること

近畿大学学長・細井美彦氏

 近畿大学は14学部1短期大学部で構成する総合大学だ。2018年春入学の一般入試における志願者数は約15万6000人と5年連続で日本一を達成。約3万人の学生が集う大学のかじ取りをどう進めるか、細井美彦新学長に展望を聞いた。

 ―大学に勢いがありますね。
 「この数年間で当大学は大きく変革した。総合社会、建築、国際の各学部ができ、今までとは違う大学の顔を持ち始めている。変革期は新しい工夫が生まれるが、同時に修正する時期でもある。今の学部をどう変えるか、見極める時に学長のバトンを受けた」

 ―就任会見では、大学本部がある地元・東大阪について言及しました。
 「本学の大学院総合理工学研究科に『東大阪モノづくり専攻』がある。学生が東大阪企業へのインターンシップ(就業体験)を通じ、各社の課題を解決しながら学生も学ぶ。まさに実学教育だ。今後、同様の取り組みを大学全体に広げたい」

 ―文部科学省の「大学における国際交流強化事業」の一環で、近畿大はロシアの大学と連携を強めています。
 「ロシアは基礎科学が強いから、有人宇宙船『ソユーズ』や『ミグ戦闘機』などを作れる。ただそれは(昔の)大型コンピューターのように製品の進化が止まった。ロシア企業の多くは製品に使う部品も内製するから、市場競争が少なく、進化が乏しいのではないか。日本では中小企業が激しい市場競争に巻き込まれるから、製品が進化する。近畿大は『モノづくり専攻』を通じ中小企業のことを知っている。互いに連携することで、その学びをロシアに伝え、代わりに本学が弱い基礎科学の学び方を教わる」

 ―大学の課題にどう対応しますか。
 「各学部で素晴らしい研究をする先生がいる一方、教育レベルで高低差もできている。レベルを均一化し、質の高い教育を進めないといけない。論文執筆数などを含め先生方を“見える化”していく。学生はより自分に合う先生を選べる」
 
 「近畿大を船に例えるとタンカー。ボートより動きはゆっくりだが、方向性が決まれば加速度的に速くなる」
【略歴】ほそい・よしひこ 87年(昭62)京大院農学研究科畜産学専攻博士後期課程修了。02年近畿大生物理工学部教授、14年副学長、18年学長。兵庫県出身、62歳。
日刊工業新聞社2018年5月31日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「1学部だけならもっと歯切れ良く話せるんだけど」。取材後につぶやいたひと言から、副学長を4年務めた細井学長でも変化が激しい大学全体の把握が難しいことが分かる。外部のノウハウ活用や内部の見える化で、近畿大は“タンカー”のごとく、推進力を発揮して変革期を乗り越えられるか。細井学長の手腕に期待がかかる。 (日刊工業新聞社東大阪支局・村上授)

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