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空前の活況が招いた?ジェイテクトと三菱重工、「工作機械」提携協議中止

空前の活況が招いた?ジェイテクトと三菱重工、「工作機械」提携協議中止

ジェイテクトの工作機械

 ジェイテクトと三菱重工業は工作機械事業の提携協議を中止した。両社は2017年12月に工作機械事業の提携協議に入ると発表。ジェイテクトが三菱重工子会社の三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)に出資することで7月末の合意を目指していた。両社は自動車部品向けがともに強いものの得意分野が異なるため、相乗効果を見込んでいたが、ジェイテクトは「将来に向けて統一した方向性を見いだすことができなかった」(広報部)と中止理由を説明した。

 ジェイテクトは研削盤、三菱重工工作機械は歯車加工機と得意分野が異なる。ただ、ジェイテクトも歯車加工用にスカイビング機と呼ぶ製品を持ち、拡販を図っている。三菱重工工作機械への出資で歯車加工用の製品群は増えるが、相乗効果を発揮しづらいと判断したとみられる。

 工作機械業界は17年度の受注高が10年ぶりに過去最高を更新するなど好調が続く。早急な事業統合が求められていないことも、中止の背景とみられる。

 ただ、将来的には電気自動車(EV)の普及などで工作機械の需要減少が懸念される。事業の分社化・売却を進めてきた三菱重工にとっては、工作機械事業の再編にめどを付けるところだった。

 今回の中止により、戦略の練り直しを迫られる。
日刊工業新聞2018年5月28日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
 三菱重工が事業再編を進める中、今回の協議は三菱重工工作機械をジェイテクト傘下にすることが前提だったと思います。商品補完ができる関係ですが、惜しくも破談したのは、いくつもの要素が絡まってのことと想像します。金額、従業員の処遇、タイミング、企業文化などなど考えられます。ジェイテクトは05年に2社が合併する形で誕生しました。異なる企業文化をひとつにする困難さを痛感したはずです(だからこそノウハウがあるとも言えますが…)。また、工作機械市場は空前の活況にあり、コトを急ぐ必要はないと判断したとも思えます(平時だからこそ手を打つべき、とも言えますが…)。断りを入れたとみられるジェイテクトにとっては、これらを打ち消すメリットを見いだせなかったということになるのでしょう。

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