ドイツが圧倒する輸入車市場に異変、フランスメーカー急伸のワケ
日本市場分析 車種絞る。ニッチ戦略が奏功
プジョー・シトロエンやルノーといったフランス勢が、国内輸入車市場で覇権を握るドイツ勢に局地戦で果敢に挑戦している。販売台数ではメルセデス・ベンツなどのドイツ勢にかなわないが、販売台数の伸長率ではフランス勢が圧倒する。成長を支える裏には、市場特性を把握して的確な商品に絞って投入する独自戦略がある。ただ、
日本自動車輸入組合(JAIA)によると、17年度の外国メーカー車の輸入車新規登録台数1位から3位をメルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン(VW)のドイツ勢が占め3ブランドの合計シェアは47・8%と圧倒的。
販売台数だけに着目すると、輸入車の国内市場は独車による寡占状態に見える。だが、前年度からどれくらい販売台数を伸ばしたかという市場での“元気度”を計る指標となる伸長率はフランス勢が断トツで、逆転現象が起きている。
フランス勢が市場で存在感を高める背景には仏車ならではの丸みを帯びたポップでオシャレな車体デザインやカラフルな色使いはもちろんだが、国内市場に合ったニッチな商品戦略が影響している。
「日本市場は大衆車は国産が好まれ、高所得者層は独車を選ぶ傾向がある。我々は、その間に割り込めないかと狙っている」。プジョーやシトロエンブランドなどを展開するプジョー・シトロエン・ジャポン(東京都目黒区)のクリストフ・プレヴォ社長は国内市場戦略の勘所をこう説明する。
同社の売れ筋車は、プジョーでは小型スポーツ多目的車(SUV)「3008」と3列シートSUV「5008」。ともに昨年新型車を発売し、旧モデルと比べると10倍以上の売れ行きという。
シトロエンでは、昨年7月に全面改良した小型車「C3」で旧モデル比約4倍に販売を伸ばしている。
売れ筋からも分かる通り、同社はSUVや小型車といった日本市場で人気車種に集中する戦略を採る。同時に国産の大衆車と独車の高級車の間に割り込むために、価格が控えめとなるモデルを投入している。C3は200万円台前半から、3008は300万円台後半からというように、「輸入車だが、お手軽な価格」(プレヴォ社長)をそろえる。
国産大衆車と独車の間を縫う商品戦略は、ルノー・ジャポン(横浜市西区)も同様だ。同社がブランドイメージ調査を実施すると、「日産自動車と提携している会社」という印象しかないことが分かった。
09年に最高執行責任者(COO)に就任した大極司社長は、ルノーとしての特徴を出すために、それまでのフルラインアップ戦略を捨て、価格を抑えた中・小型車とスポーツモデルに特化した商品構成に変えた。
ルノーマーケティング部の佐藤渉マネジャーは、「輸入車で大型車というと、独車のイメージがある。ルノー独自のイメージを出すために戦える土壌を作る必要があった」と話す。同社の販売上位車種は、「トゥインゴ」や「カングー」といった小型車やミニバンが占めている。ラインアップを絞った戦略は奏功して、09年から8年連続で販売台数は前年実績を上回っている。
販売台数が独車ほどなく、販売店網も限られるフランス勢。本国で販売する車種をそのまま日本で投入するのではなく、市場特性を分析して売れる車に経営資源を投入する商品戦略が成功している。
商品構成の変更は客層の広がりにも寄与している。プジョーは50代前後の男性がSUVを購入する例が多かったが、プレヴォ社長は「現在は40代に下がっている」と明かす。シトロエンは50―60代男性が多かったが、今は40代の若年層にも広がり、特に女性客が増加している。女性層への拡大は特に小型車のC3で強くなっている。
購入層が女性に拡大することは、将来の台数増へ期待感も膨らませる。小型車ユーザーも家族を持つようになれば、ミニバンやSUVなどのファミリーカーを購入する。佐藤マネジャーは「ファミリーカーを購入する時に、女性の意見は強く反映される。ルノーブランドを知っていてもらえれば、購入車種の選択肢に入れてもらえる」と利点を説く。
一方、フルラインアップ戦略を採るドイツ勢も、フランス勢が伸長する中・小型市場への対応を急ぐ。ビー・エム・ダブリュー(東京都千代田区)は4月に新型SUV「X2」を発売。価格は400万円中盤からで、イメージキャラクターにタレントの香取慎吾さんを起用するなど若年層を強く意識している。
メルセデス・ベンツ日本(同品川区)も昨年、小型SUV「GLA」を3年ぶりに全面改良した。400万円を切った「お求めやすい」(上野金太郎社長)価格帯を設定した。
国内市場で存在感を増すフランス勢。市場での立ち位置を分析して車種を絞り込む、したたかな戦略で台数を伸ばしている。だが、王者のドイツ勢も経営資源の豊富さを武器にフランス勢が得意とする中・小型市場に手を伸ばしている。独車と仏車の局地戦での熱い戦いが激化の様相を呈している。
日本自動車輸入組合(JAIA)によると、17年度の外国メーカー車の輸入車新規登録台数1位から3位をメルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン(VW)のドイツ勢が占め3ブランドの合計シェアは47・8%と圧倒的。
販売台数だけに着目すると、輸入車の国内市場は独車による寡占状態に見える。だが、前年度からどれくらい販売台数を伸ばしたかという市場での“元気度”を計る指標となる伸長率はフランス勢が断トツで、逆転現象が起きている。
フランス勢が市場で存在感を高める背景には仏車ならではの丸みを帯びたポップでオシャレな車体デザインやカラフルな色使いはもちろんだが、国内市場に合ったニッチな商品戦略が影響している。
「日本市場は大衆車は国産が好まれ、高所得者層は独車を選ぶ傾向がある。我々は、その間に割り込めないかと狙っている」。プジョーやシトロエンブランドなどを展開するプジョー・シトロエン・ジャポン(東京都目黒区)のクリストフ・プレヴォ社長は国内市場戦略の勘所をこう説明する。
同社の売れ筋車は、プジョーでは小型スポーツ多目的車(SUV)「3008」と3列シートSUV「5008」。ともに昨年新型車を発売し、旧モデルと比べると10倍以上の売れ行きという。
シトロエンでは、昨年7月に全面改良した小型車「C3」で旧モデル比約4倍に販売を伸ばしている。
売れ筋からも分かる通り、同社はSUVや小型車といった日本市場で人気車種に集中する戦略を採る。同時に国産の大衆車と独車の高級車の間に割り込むために、価格が控えめとなるモデルを投入している。C3は200万円台前半から、3008は300万円台後半からというように、「輸入車だが、お手軽な価格」(プレヴォ社長)をそろえる。
戦える土壌を作る
国産大衆車と独車の間を縫う商品戦略は、ルノー・ジャポン(横浜市西区)も同様だ。同社がブランドイメージ調査を実施すると、「日産自動車と提携している会社」という印象しかないことが分かった。
09年に最高執行責任者(COO)に就任した大極司社長は、ルノーとしての特徴を出すために、それまでのフルラインアップ戦略を捨て、価格を抑えた中・小型車とスポーツモデルに特化した商品構成に変えた。
ルノーマーケティング部の佐藤渉マネジャーは、「輸入車で大型車というと、独車のイメージがある。ルノー独自のイメージを出すために戦える土壌を作る必要があった」と話す。同社の販売上位車種は、「トゥインゴ」や「カングー」といった小型車やミニバンが占めている。ラインアップを絞った戦略は奏功して、09年から8年連続で販売台数は前年実績を上回っている。
販売台数が独車ほどなく、販売店網も限られるフランス勢。本国で販売する車種をそのまま日本で投入するのではなく、市場特性を分析して売れる車に経営資源を投入する商品戦略が成功している。
若年層、女性に広がり
商品構成の変更は客層の広がりにも寄与している。プジョーは50代前後の男性がSUVを購入する例が多かったが、プレヴォ社長は「現在は40代に下がっている」と明かす。シトロエンは50―60代男性が多かったが、今は40代の若年層にも広がり、特に女性客が増加している。女性層への拡大は特に小型車のC3で強くなっている。
購入層が女性に拡大することは、将来の台数増へ期待感も膨らませる。小型車ユーザーも家族を持つようになれば、ミニバンやSUVなどのファミリーカーを購入する。佐藤マネジャーは「ファミリーカーを購入する時に、女性の意見は強く反映される。ルノーブランドを知っていてもらえれば、購入車種の選択肢に入れてもらえる」と利点を説く。
一方、フルラインアップ戦略を採るドイツ勢も、フランス勢が伸長する中・小型市場への対応を急ぐ。ビー・エム・ダブリュー(東京都千代田区)は4月に新型SUV「X2」を発売。価格は400万円中盤からで、イメージキャラクターにタレントの香取慎吾さんを起用するなど若年層を強く意識している。
メルセデス・ベンツ日本(同品川区)も昨年、小型SUV「GLA」を3年ぶりに全面改良した。400万円を切った「お求めやすい」(上野金太郎社長)価格帯を設定した。
国内市場で存在感を増すフランス勢。市場での立ち位置を分析して車種を絞り込む、したたかな戦略で台数を伸ばしている。だが、王者のドイツ勢も経営資源の豊富さを武器にフランス勢が得意とする中・小型市場に手を伸ばしている。独車と仏車の局地戦での熱い戦いが激化の様相を呈している。
日刊工業新聞2018年5月4日