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揺れる東芝「屋台骨・半導体」は大丈夫か

大幅下方修正で財務基盤が悪化!?NANDフラッシュの世界一戦略に影響も
揺れる東芝「屋台骨・半導体」は大丈夫か

新製造棟では最先端のフラッシュメモリーが量産される(第5製造棟クリーンルーム)

 東芝にとって半導体事業は、まさに屋台骨だ。昨年9月にはNAND型フラッシュメモリーの新棟が稼働、田中久雄社長も「需要がまだ伸びる見通しで成長を継続できる」と期待を寄せていた。不適切会計が明るみに出る前に公表した2015年3月期連結決算予想では、同事業を中心とする電子デバイス部門の営業利益は2260億円、全社営業利益の68.5%に達する。
 
 16年3月期は、半導体事業の存在感がより一層高まりそうな雰囲気があった。スマートフォンなどに搭載されるNAND型フラッシュが堅調さを維持していることに加え、赤字に苦しんできたシステムLSIとディスクリート(個別半導体)についてもようやく黒字化が見えてきていたからだ。
 
 昨年9月10日付の日刊工業新聞で半導体事業の成長戦略を掲載した。再び攻めに打って出ようとした矢先の今回の事態。不適切会計で1000億円を超える利益の下方修正となれば、財務基盤が一段を悪化し、今後の投資にも影響が出かねない。

NAND型フラッシュメモリー、新棟稼働で世界一が見えてきた!


 東芝がスマートフォンなどの記憶媒体として使うNAND型フラッシュメモリーの生産能力増強を急ピッチで進めている。米サンディスクと共同運営する四日市工場(三重県四日市市)で9日に新棟が稼働、今後も大規模な投資計画が控える。NANDフラッシュはスマホに加え、今後はデータセンター(DC)向けの需要増も期待される。技術開発で先行しながら業界2位に甘んじてきた東芝。市場拡大のタイミングを捉え、韓国サムスン電子の追い抜きを狙う。
 
 【スマホけん引−総投資1兆円規模】
 「NANDフラッシュの需要拡大に対応していく。日本の半導体産業は衰退していると言われるが、この四日市工場は世界一と自負している。競争を勝ち抜くため、今後も(半導体関連事業で)毎年2000億円規模の設備投資を継続的に行っていく」―。9日、同工場で会見した東芝の田中久雄社長は強調した。

 足元のNANDフラッシュ需要はスマホがけん引している。2011年に約5億台だったスマホの世界販売数は14年には2倍の10億台を超える見通し。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」など高機能モデルはNANDフラッシュの搭載容量が増大。また中国スマホメーカーが低・中級モデルで、新興国需要を開拓するのもNANDフラッシュの需要拡大につながる。

 「以前はブレーキに足をかけながらアクセルを踏んでいたが、3年前から東芝の投資姿勢は様変わりした」―。東芝の取引メーカー幹部はこう証言する。東芝は完全にNANDフラッシュの増産モードに入った。

 今回、稼働したのは第5製造棟の2期工事分。さらに四日市工場内で第2製造棟の建て替え工事にも着手し、16年度から量産に入る計画。これら二つの設備投資の総額は1兆円規模に膨らむ。さらに新工場設立のため、四日市工場の隣接地の取得も検討している。

 技術開発で勝って、シェア争いで負ける―。東芝はNANDフラッシュ市場でそう評されてきた。半導体の性能を左右する回路線幅の微細化やパッケージの小型化技術で先行してきたが、シェア争いで韓国サムスン電子の後じんを拝してきた。

 業界関係者によると第5製造棟の2期工事分と、第2製造棟のリニューアルが完了すると生産能力は25%向上するという。森誠一執行役常務セミコンダクター&ストレージ社メモリ事業部事業部長も「サムスンと拮抗(きっこう)するか、それ以上になる」と説明する。
 
日刊工業新聞社2014年09月10日深層断面に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝社内では収益変動の大きい半導体事業について、特にインフラ部門などからは格下扱いされていた。実際、過去にどんなに利益を出そうが半導体部門から社長が起用されていない。それでも収益面で「一本足」に近づきつつあり、田中社長の次こそはという声も多かった。今回、半導体も調査対象になり、人事でもどのような影響が出るか。

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