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世界初のウェブサイトは素粒子の研究所で生まれた

欧州原子核研究機構、実験データの共有のために
世界初のウェブサイトは素粒子の研究所で生まれた

CERN1号棟の廊下に掲げられている“ウェブ誕生の地”(CERN提供)

 ウェブサイトのない世界を今、誰が予想できるだろう。1989年、世界最大の素粒子物理学の研究所であるスイスの欧州原子核研究機構(CERN)でワールドワイド・ウェブ(www、用語参照)が誕生した。12年に未知の粒子「ヒッグス粒子」を発見し、13年のノーベル物理学賞に貢献したあの有名な研究所だ。

 なぜ、素粒子の研究所でウェブが生まれたのか。CERNは世界中から研究者が集まる一大研究拠点であり、加速器を使った実験は年々大規模になり装置も大型化していく。

 そこで日々生み出される膨大な実験データをいかに共有し、国際的なプロジェクトを円滑に進めるか。その試行錯誤の上に生まれたのがwwwだった。

 このwwwを発明したのが、コンピューター界のノーベル賞といわれる16年の「チューリング賞」を受賞した英国人のティム・バーナーズ=リー氏。彼は91年に世界で最初のウェブサイトを公開したが、特筆すべきはCERNでの利用に限定しなかったことだ。

 リー氏は「誰もがどこにいても情報を共有し、地理的、文化的境界を越えてアクセスできるオープンプラットフォームを構想」し、93年にwwwのソフトウエアを世界に無償公開した。その先のウェブの爆発的普及はここに記すまでもない。

 92年にCERNを訪れた、当時、高エネルギー加速器研究機構の研究者だった森田洋平氏は、リー氏から「高エネ機構でもウェブサーバーを立ち上げてほしい」と要請された。これを受け、同年9月に同機構とCERNをつないだページが日本初の公開されたホームページとなった。

 CERNは宇宙の重要な発見を成し遂げた機関だが、「歴史には『ウェブの発祥地』として刻まれるだろう」と森田氏も認める。

【用語】www=「ハイパーテキスト」と呼ばれる文書同士をつなげる仕組みで、これによってインターネット上で文書や画像、動画などが閲覧できるようになった。世界中に広がる情報網が「クモの巣」のように見えることから、当時欧CERNに在籍していたティム・バーナーズ=リー氏が名付けた。

森田氏と日本初のホームページを発信したコンピューター(高エネ機構にて)
日刊工業新聞2018年4月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
現在、日本は応用研究を重視し、基礎科学を軽んじる傾向にある。だが、基礎研究の過程で予測もしなかったイノベーションが生まれる例は珍しくない。とてつもなく大きなブレークスルーは、いつも思わぬところから偶然にやってくる。 (日刊工業新聞社・藤木信穂)

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