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日豪エネルギー協力の象徴、褐炭水素プロジェクトが動き出した!

川崎重工など参画、20年代半ばめどにサプライチェーン商用化
日豪エネルギー協力の象徴、褐炭水素プロジェクトが動き出した!

川崎重工が研究を進める液化水素運搬船

 川崎重工業などが参画する褐炭水素サプライチェーン・プロジェクトが本格的に動きだす。豪州に埋蔵する未利用エネルギーの褐炭から水素を製造し、貯蔵・輸送・利用まで一体となった液化水素サプライチェーンを構築するもので、2020年代半ばまでに商用化を見据えた実証を実施する計画。豪州の連邦政府・州政府も資金支援を決めるなど日豪両国のエネルギー協力の象徴となる見通しだ。

埋蔵量2000億トン


 豪ビクトリア州の褐炭可採埋蔵量は推計約2000億トン。日本の総発電量の約240年分に相当する。褐炭は水分を多く含み重量当たりのカロリーが低く輸送に向かない上、乾燥させると自然発火する。現地での発電利用など使途は限定的だ。

 今回のプロジェクトは豪州の石炭産業に好影響を及ぼし、日本の資源確保につながる。政府が17年末に発表した水素基本戦略にも「政府間レベルでの関係構築を図る」と明記されており、両国政府支援の下、国際水素サプライチェーンの構築作業が本格化する。

技術的連続性


 液化水素は気体水素に比べて体積が約800分の1。気化することで純度の高い水素を取り出せる。液化天然ガス(LNG)と同様のインフラ構成で、技術的な連続性が高い半面、LNGより低温で海上輸送や荷役・貯蔵で新規のインフラ整備が必要だ。

 30年頃の商用化を見据え、技術確立と実証を進めるのが川重、Jパワー(電源開発)、岩谷産業、シェルジャパン(東京都千代田区)の4社により設立された技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構」だ。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として褐炭ガス化技術、液化水素の長距離大量輸送技術、液化水素荷役技術を20年度までに確立。豪州の連邦政府・州政府の資金援助を受け、ガス精製、水素液化・積荷技術の開発を進めていく。

 政府は50年に水素コストを現状比5分の1の1ノルマル立方メートル当たり20円を目指し、ガソリンやLNGと同等に引き下げる方針だ。石炭の10分の1以下である褐炭など安価な原料を活用し、大量に製造・輸送するためのサプライチェーン構築は欠かせない。
(文・鈴木真央)
褐炭水素サプライチェーン・プロジェクトと担当する主な企業
日刊工業新聞2018年4月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
経済産業省・資源エネルギー庁は次期エネルギー基本計画で水素の位置付けを明確化する見通し。製造、輸送、利用などサプライチェーン各段階での目標設定と進捗(しんちょく)確認に加え、先進国や資源国、アジア主要国別の戦略を策定し、グローバルな水素アライアンスの形成に向けた検討を実施する方針。豪州との共同プロジェクトは試金石となる。 (日刊工業新聞社・鈴木真央)

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