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4大ジェットエンジンへ供給する日系唯一の軸受メーカー、「次世代」で欧州を猛追

NTN、勝ち続ける戦略
4大ジェットエンジンへ供給する日系唯一の軸受メーカー、「次世代」で欧州を猛追

航空機ジェットエンジン主軸用軸受

 NTNは世界4大ジェットエンジンメーカーへ主軸用軸受を供給する日系唯一の軸受メーカー。足元では、欧エアバス最新鋭の中大型機「A350」が搭載する英ロールスロイス製エンジン「トレントXWB」向け軸受の量産準備が進む。

 要求レベルの高い航空機用の中でも一番の高品質・高精度が求められるのが主軸用。先行する欧州系軸受メーカーとの差はあるが、「追い越す」(川島一貴取締役)べく、次世代技術開発にも力を注ぐ。

 航空機産業は足が長いビジネス。NTNはトレントXWB向け軸受の量産受注を2013年に獲得した。

 その後、製品の品質確認、工程ごとの確認、英国での検査員試験、ほぼ毎週のテレビ会議などを経て、三重県桑名市の航空・宇宙用軸受専用工場で量産に必要な認証を17年11月、ロールスから取得。フランスに持つ同工場でも認証取得に取り組んでおり、18年内に両工場で量産を始める計画だ。

 「航空機ビジネスは10年先まで注文が決まっているが、量産には相当の体力とモチベーションが要る」と、川島取締役は気を引き締める。ランディングギア用や翼向けフラップ用など、機体向け軸受の引き合いも増えている。

 新規の受注増を受けフランスの工場は16―17年にかけて大型増産投資を実施し、同国では2棟目の航空・宇宙用軸受専用工場も新設した。同軸受は重点事業の一つ。同事業の20年度売上高目標は現状比25%増の100億円超だ。

 NTNに対する顧客からの品質評価は高く、主要部品の転動体製造を自前で行えるのも特徴。

 独自の試験機を有するなど技術開発も積極的で、非破壊検査技術も備える。次世代ジェットエンジン向けに、新たな軸受の材料や加工手法の開発にも取り組んでいる。

 軽量化と長寿命化の要求は強く、5―10年先を見据えてセラミックスを用いた転動体を開発中だ。「材料がセラミックスに変わってくると、当社の評価は高まり、シェアもかなり増える」(同)と自信を見せる。

日刊工業新聞2018年3月19日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日系軸受大手3社の一角。自動車用ハブベアリング世界1位。米GE、英ロールス、米P&W、仏サフラングループの世界4大ジェットエンジンメーカーに主軸用軸受を供給する。1937年に東京―ロンドン間を飛んだ純国産機「神風号」の軸受は100%NTN製。戦時中の航空機用軸受の国内シェア7割。海外の民間航空機向け事業は81年スタート。国産ロケットに使う軸受も全量供給する。 (日刊工業新聞大阪支社・松中康雄)

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