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政府、「AIホスピタル」構築へ。がん最適治療を支援

政府、「AIホスピタル」構築へ。がん最適治療を支援

(写真はイメージ GE REPORTSより)

 政府は、最先端技術を活用した次世代医療システム「人工知能(AI)ホスピタル」を2022年までに構築する。センシングや医療情報のデジタル化技術を使って、医療現場からデータを収集・統合。AIで解析して、病気の進行や治療効果などの予測、抗がん剤などの適切な調整を支援する。まず日本人の死因第1位であるがん領域で治療のパッケージ化を進め、19年をめどに臨床研究する。

 内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の次期課題として、7月以降に研究を始める。プロジェクト全体で20億―30億円を計上する。医療機器やICT関連企業と共同で研究を進める見込みだ。

 現在のがん治療はガイドラインに基づく一律の治療をした後に治療効果を評価し、継続または変更を医師が判断する。この間、1―3カ月ほどかかるため時間のロスを招き、早期治療の妨げとなる。

 AIホスピタルでは、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)の画像データ、がんの悪性度を示す指標データなど、患者情報をクラウド化し、アルゴリズムを作成する。

 これにより「がん患者モデル」をサイバー空間上に作り出し、病気の進行や治療効果を予測する。

 同様に医療情報から「名医モデル」を作り出し、抗がん剤の投与量調整の判断をAIが支援する。医師の経験や技量によるばらつきがなくなり、全国の医療機関で治療成績の向上が期待される。

 さらに、クラウド上のデータを最適に分散する「フォグコンピューティング」を活用。病気の進行度合いの把握や、それに伴う治療変更の提案など行う。
                   


 
日刊工業新聞2018年3月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 米国では、複数の医療機関をつなぎ、AIを活用して最適な医薬品、治療を選択、また生体情報によるリスク管理などで、入院日数短縮を実現して医療費を削減する動きが活発だ。こうした動きを踏まえ、日本でもAIホスピタルシステムをがん領域でパッケージ化し、他の疾患、医療機関でも展開する。将来的には海外への輸出を目指す。

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