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東工大、「実験スペース費」に市場価格

キャンパス間での研究室移動を促す
 東京工業大学は、研究室の維持管理費の一部を教員が支払う「スペースチャージ」(維持管理費)制度を変更、実験スペースが必要な生命系とパソコン中心の情報系といった部局(学部・研究科に相当)特性に応じ単価を調整できるようにする。さらに外部資金獲得で新たにスペースを使う場合は、周辺の市場価格と同等の課金とする。これによってキャンパス間での研究室移動を促していく。2019年度に始める。

 東工大は施設維持管理費のうち、国の予算で不足する分の試算に基づき、同制度を17年10月に始めた。教員・学生が使う研究室25平方メートル1単位が現在年4万円で、19年度からは6万円を教員が支払う。

 1研究室で使用する平均は6単位程度だ。有料化を通じ、教員に有効活用していない研究室を手放してもらうことで、戦略的に使える学長裁量スペースの増加を図ることが目的だ。

 さらに19年度からは、研究分野により異なるスペースの必要度を勘案する。学院(学部と大学院を統合した東工大の独自部局)ごとの適性面積を算出。超過課金を設定することで、より必要性の高い学院・研究室にスペースが再配分され、学院間のスペース格差を是正する。

 また、外部資金の獲得で新スペースを使用する際は、学内設定とはケタの異なる市場価格に準じた単価とする。その結果、同一金額で使えるスペースがすずかけ台キャンパス(横浜市緑区)は、大岡山キャンパス(東京都目黒区)より25%増となる。これにより都市部の大岡山から、スペースに余裕のあるすずかけ台への移動を促す。

 大学本部は維持管理費の不足分を利用者応分負担とすることで、施設の修繕・更新の計画的な実施につなげていく。
                      
日刊工業新聞2018年3月15日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
 「部屋代を教員が払う」と聞くと、「大学本部の予算がそこまで切羽詰まっているのか」と一瞬、思いがちだが、実はスペースチャージ制度はいくつかの国立大大学で導入され、浸透しつつある。理工系単科大学の方が総合大学に比べ、研究室争奪戦が激しい一方、数字で合理的に説明されると全学合意が得られやすいのだとか。他のテーマでもそうだが、総合大学では規模に加えて文理の違いもあり、改革を一挙に進めにくい面があるようだ。

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