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トヨタ系サプライヤーが次世代シートで共闘、パナソニックとケンカ?

トヨタ紡織、豊田合成、東海理化が自動運転向け念頭
トヨタ系サプライヤーが次世代シートで共闘、パナソニックとケンカ?

車室空間全体の提案を加速する(トヨタ紡織が17年の東京モーターショーに出展した製品コンセプト「VODY」)

 トヨタ紡織、豊田合成、東海理化のトヨタ自動車系内装関連3社は、シートベルトやエアバッグなどの機能を融合する次世代シートを共同開発する。自動運転車用のシートを念頭に置き、2020年代初頭にも実用化を目指す。将来は車室空間全体の共同提案も視野に入れる。自動運転車の内装品は現在とは形状や機能が変わる可能性が大きい。3社は開発面で協業を進め、海外のメガサプライヤーや大手電機メーカーに対抗する。

 3社はすでに「オール・イン・シート」と呼ばれる次世代シートの開発に着手した。トヨタ紡織のシートを中心に、豊田合成と東海理化のシートベルトやエアバッグなどの各システムを一体的に制御することで、快適性や衝突時の乗員保護などの機能を高める。デンソーが電子制御ユニット、アイシン精機が乗員の体重センサーなど技術面で支援する。

 トヨタ紡織、豊田合成、東海理化はいずれもトヨタ系の部品メーカー。将来の自動運転車では車内空間のデザインの自由度が飛躍的に高まると予想され、ハンドル周辺やインストルメントパネル(インパネ)、シートといった各要素をまとめた一体的なデザインの重要性が増す。

 一方でトヨタをはじめ完成車メーカーは自動運転機能やシェアリング(共有)経済の創出などの開発案件が増える。ただ、社内の開発陣は限られており、既存の内装品はサプライヤーによる一体提案のニーズが大きくなっている。3社は将来、内装部品の生産機能は各社に残しつつ、車内の空間設計やシステムの開発機能の統合も視野に入れる。

 トヨタグループでは本格的な自動運転時代を見据えて協業の動きが相次ぐ。ジェイテクトはアイシン精機傘下のブレーキ大手アドヴィックス(愛知県刈谷市)などと連携し、操舵(そうだ)やブレーキなどを一体制御する技術を開発する。

 トヨタグループでは以前からトヨタ主導で案件ごとに複数の会社が集まる“大部屋方式”での開発体制を敷くケースがあった。今後は部品メーカー主導での一体提案の動きが加速しそうだ。
日刊工業新聞2018年2月20日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 トヨタ自動車系の内装関連3社が次世代製品の開発で手を組む背景には、単なる製品の高度化だけではなく、自らの事業領域に迫り来る電機大手や海外大手部品メーカーへの猛烈な危機感がある。  「既にパナソニックと“ケンカ”(受注競争)をしている」。トヨタ系部品メーカー首脳はこう明かす。パナソニックは強みとする車載電池に加え、1月の米家電・IT見本市で自動運転車のコックピット(運転席)周辺の製品を展示するなど、内装分野にも進出する構えを見せる。日立製作所や三菱電機などの“重電系”も車業界に売り込みをかけている。  そもそも車部品業界では独ボッシュなどメガサプライヤー主導で複数部品を一体提案する“モジュール化”の波が起きている。これに対して国内部品メーカーはソフトウエアなどの技術で出遅れも指摘され、「既存の製品だけではコモディティー化する」(部品メーカー首脳)との認識はトヨタグループ内でも共有されつつある。  グループ各社のまとめ役は本来はトヨタだが、トヨタを含む完成車メーカーは未来のモビリティー社会そのものを創出していく役割が市場から期待され、自動運転車や「MaaS」と呼ばれる移動サービスの開発などに経営資源を振り向けざるを得ない。今後はトヨタ系列の部品メーカー自らの主体的な連携が進みそうだ。

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