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「ペッパー」プログラミング、小中学生が大人顔負けのアプリ開発

地域の観光案内、漫才など披露
「ペッパー」プログラミング、小中学生が大人顔負けのアプリ開発

佐賀県山内西小学校の買い物とレシピ提案アプリ(スクールチャレンジ予選会の一コマ)

 ソフトバンクがコミュニケーションロボット「ペッパー」でプログラミング教育市場に攻勢をかけている。社会貢献プログラムとして小中学校にペッパーを無償提供。生徒たちが身近な課題をペッパーを使って解決しようと奮闘している。アプリを競う成果発表会「スクールチャレンジ」では、そのレベルの高さで審査員たちを驚かせた。自分たちの地域の観光案内をしたり、ペッパーと漫才をしたりと大人顔負けのアプリが披露された。教育現場に本物のロボットが浸透しようとしている。

身近な課題解決


 「子どもたちの姿を見て自分の思い上がりが恥ずかしくなった」と蓮実一隆ソフトバンクロボティクス取締役コンテンツマーケティング本部長は振り返る。ソフトバンクは全国の公立小中学校282校にペッパーと開発環境を提供。生徒たちが授業や部活でペッパーを使ったアプリを開発した。スクールチャレンジでは48チームが集まり成果を披露した。

 上位チームは地域や学校生活の課題を分析し、ペッパーで解決してみせた。漢字クイズアプリを作ったチームはクラスの漢字テストの成績を底上げし、図書館での図書推薦アプリを作ったチームは貸出数を前年同月より500冊増の2400冊に増やした。蓮実取締役は「初めはスクールチャレンジでロボットに触れるきっかけを提供し、人材が育てば良いと思っていた。だがすでに生活にロボットがいることが自然な世代が育っており、ペッパーを使いこなしている。現在は我々が少しでも助けになれればと思い改めた」という。

開発環境ソフト


 小学生部門で優勝した岡山県新砥小学校のチームは地元の名産品や観光地を紹介するアプリを開発。中学校部門で優勝した佐賀県武雄北中学校のチームは観光案内アプリを日本語版と英語版に加え、ペッパー未対応の韓国語で制作した。

スクールチャレンジ小学生部門優勝の新砥小のふるさと紹介アプリ

 部活動部門で優勝した岐阜県青山中学校のチームは1000以上のプログラムボックスを組み合わせ、モノマネクイズを制作した。お笑い芸人「ピコ太郎」や「厚切りジェイソン」のネタをペッパーに真似させて会場を沸かせた。

 小中学生にアプリが作れる背景には、わかりやすい開発環境ソフトがある。ペッパーのスピーチやジェスチャー、待ち時間などをプログラムボックスに入力し、組み合わせるだけでアプリを作れる。

 例えば図書館アプリでは、来館者を検知してあいさつし、好きなジャンルを聞いて本を薦めるなど、コミュニケーション相手の反応に応じてペッパーの対応を変えている。一連のサービスとして作り込んでおり、その過程で選択肢の分岐や条件設計、接客ループなどのプログラミングを日常生活に則して学ぶことになる。

経験は財産


 ソフトバンクはこの開発環境ソフトをプログラミングソフト「スクラッチ」に対応させ提供を始める。スクラッチはプログラミング教育に広く採用されており、慣れている教員が多い。算数や理科などの教科用カリキュラム54種類も提供。経済産業省などが開く国際ロボット競演会「ワールドロボットサミット」では小中校生にも海外チームとアプリを競うステージが用意される。チャレンジで審査員を務めた相模女子大学小学部の川原田康文副校長は「現代は子どもとテクノロジーが一緒に成長していく時代。進化中のロボットでどんなことができるか。失敗し、工夫しながら実現していく経験は、その子にとって大切な財産になる」と期待する。
(分=小寺貴之)
日刊工業新聞2018年2月16日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ペッパーを入口にし、自分たちのやりたいことを実現するハードを作るまでに興味が広がっていけばと思います。

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