ミラーレスがデジカメ各社の命運を決める!?
富士フイルム、「撮影領域を広げる画期的な商品」(助野社長)
富士フイルムは15日、Xシリーズとして最高性能のミラーレス一眼カメラ「X―H1=写真」を3月1日に発売すると発表した。Xシリーズで初めて高剛性ボディー内に5軸・最大5・5段の手ブレ補正機能を搭載した。スポーツなど動きの激しい被写体や、雪や砂漠など厳しい環境の撮影にも対応する。想定価格は24万円前後(消費税抜き)。同日会見した助野健児社長は「撮影領域を広げる画期的な商品」と自信を語った。
X―H1は、ハイパフォーマンスの“H”から名付けた。マグネシウム合金を採用した高剛性ボディーは、大口径レンズと組み合わせて安定して撮影できる。防塵・防滴構造やマイナス10度Cの耐低温性能、蛍光灯などの下で安定した露出を実現するフリッカー低減撮影機能を付け、さまざまな撮影シーンに対応する。動画撮影機能も高めた。
同社のカメラ販売はX―T2やX−プロ2などが好調で、高性能品の投入によりシェア拡大へ攻勢をかける。
デジタルカメラ大手4社が2017年度の販売計画を相次ぎ上方修正した。16年度は熊本地震の影響でコンパクトカメラを中心に減産したが、17年度はその反動もあり、想定を上回る販売が続く。特に各社はミラーレス一眼カメラでの覇権を狙い、営業攻勢を強めている。全市場に占めるミラーレスの比率は徐々に上がり、ミラーレスに重点を置くメーカーの販売台数は先行して下げ止まり始めた。市場の底打ちを前に、ミラーレスを軸に生き残り競争が激化している。
デジタルカメラはミラーレスと一眼レフカメラを加えたレンズ交換式カメラと、コンパクトカメラの二つに大別される。これら2種類の17年度販売計画について、18年3月期決算のニコン、ソニー、富士フイルムの3社と17年12月期決算のキヤノンが上方修正した。このうちキヤノンやニコン、ソニーはコンパクトカメラを中心に想定を上回った。ただ「コンパクトカメラの上振れは地震の影響からの反動」(業界筋)といった側面もあり、再び停滞する可能性が高い。
一方、各社の16年度比の増減率を見ると、ミラーレスに重点を置くソニーと富士フイルムの2社は下げ止まり、前年度並みの販売を計画する。いずれ需要がしぼむコンパクトカメラに比べ、ミラーレスが重要なことは明らかだ。
こうした情勢を踏まえ、オリンパスは戦略的にコンパクトカメラの販売台数を減らす一方、ミラーレスの台数を16年度比8・9%増やす。キヤノンは17年に入り、ミラーレスの「EOS M6」や「同 M100」を相次いで発表。機種の拡充が販売を下支えする。
構造改革中のニコンは、先行きが見えにくい。一眼レフ「D850」の投入効果により、レンズ交換式の販売計画を上方修正したが、カメラ市場をけん引するミラーレスで出遅れている。映像事業を担当する御給伸好常務執行役員は「ミラーレスは無視できない市場」と語り、早い段階で新商品を投入し巻き返しを誓う。
各社はミラーレス市場でしのぎを削るが、問題はどのタイミングで、どんな商品を投入するかということ。すでに市場には高機能ミラーレスがあふれている。最近では、富士フイルムが中判サイズのイメージセンサーを搭載した「GFX」を、ソニーがプロ市場を狙う「α9」を投入。
オリンパスは旗艦モデルを進化させて「OM―D E―M1 マークII」を発売した。先頭集団を追撃するパナソニックは静止画の最高峰「G9プロ」を発表した。後発組のニコンはミラーレスでも表現力の高さにこだわる考えで「大きなセンサーには興味がある」(御給常務執行役員)と言及する。
一方、中堅メーカーのカシオ計算機やリコーはミラーレスを持たないため、大手の戦略とは一線を画し、より個性的なカメラを強化する。カシオは腕時計「G―ショック」のノウハウを基に、タフカメラの新ブランド「ジーズアイ」を立ち上げた。リコーは全天球カメラ「シータ」などに力を注ぐ。
足元のカメラ市場は地震影響からの回復で前年度を上回る傾向だが、基本的には縮小し続けており、10年のピークから5分の1になった。富士キメラ総研(東京都中央区)は22年に世界市場が1756万台まで縮小すると予測する。
ミラーレス市場の競争から脱落したり、採算性の低いビジネスに陥ったりする企業が出てくれば、いずれ強者が弱者を飲み込むような合従連衡が起きても不思議はない。
(文=梶原洵子)
X―H1は、ハイパフォーマンスの“H”から名付けた。マグネシウム合金を採用した高剛性ボディーは、大口径レンズと組み合わせて安定して撮影できる。防塵・防滴構造やマイナス10度Cの耐低温性能、蛍光灯などの下で安定した露出を実現するフリッカー低減撮影機能を付け、さまざまな撮影シーンに対応する。動画撮影機能も高めた。
同社のカメラ販売はX―T2やX−プロ2などが好調で、高性能品の投入によりシェア拡大へ攻勢をかける。
日刊工業新聞2018年2月16日
各社、上方修正
デジタルカメラ大手4社が2017年度の販売計画を相次ぎ上方修正した。16年度は熊本地震の影響でコンパクトカメラを中心に減産したが、17年度はその反動もあり、想定を上回る販売が続く。特に各社はミラーレス一眼カメラでの覇権を狙い、営業攻勢を強めている。全市場に占めるミラーレスの比率は徐々に上がり、ミラーレスに重点を置くメーカーの販売台数は先行して下げ止まり始めた。市場の底打ちを前に、ミラーレスを軸に生き残り競争が激化している。
デジタルカメラはミラーレスと一眼レフカメラを加えたレンズ交換式カメラと、コンパクトカメラの二つに大別される。これら2種類の17年度販売計画について、18年3月期決算のニコン、ソニー、富士フイルムの3社と17年12月期決算のキヤノンが上方修正した。このうちキヤノンやニコン、ソニーはコンパクトカメラを中心に想定を上回った。ただ「コンパクトカメラの上振れは地震の影響からの反動」(業界筋)といった側面もあり、再び停滞する可能性が高い。
一方、各社の16年度比の増減率を見ると、ミラーレスに重点を置くソニーと富士フイルムの2社は下げ止まり、前年度並みの販売を計画する。いずれ需要がしぼむコンパクトカメラに比べ、ミラーレスが重要なことは明らかだ。
こうした情勢を踏まえ、オリンパスは戦略的にコンパクトカメラの販売台数を減らす一方、ミラーレスの台数を16年度比8・9%増やす。キヤノンは17年に入り、ミラーレスの「EOS M6」や「同 M100」を相次いで発表。機種の拡充が販売を下支えする。
構造改革中のニコンは、先行きが見えにくい。一眼レフ「D850」の投入効果により、レンズ交換式の販売計画を上方修正したが、カメラ市場をけん引するミラーレスで出遅れている。映像事業を担当する御給伸好常務執行役員は「ミラーレスは無視できない市場」と語り、早い段階で新商品を投入し巻き返しを誓う。
各社はミラーレス市場でしのぎを削るが、問題はどのタイミングで、どんな商品を投入するかということ。すでに市場には高機能ミラーレスがあふれている。最近では、富士フイルムが中判サイズのイメージセンサーを搭載した「GFX」を、ソニーがプロ市場を狙う「α9」を投入。
オリンパスは旗艦モデルを進化させて「OM―D E―M1 マークII」を発売した。先頭集団を追撃するパナソニックは静止画の最高峰「G9プロ」を発表した。後発組のニコンはミラーレスでも表現力の高さにこだわる考えで「大きなセンサーには興味がある」(御給常務執行役員)と言及する。
一方、中堅メーカーのカシオ計算機やリコーはミラーレスを持たないため、大手の戦略とは一線を画し、より個性的なカメラを強化する。カシオは腕時計「G―ショック」のノウハウを基に、タフカメラの新ブランド「ジーズアイ」を立ち上げた。リコーは全天球カメラ「シータ」などに力を注ぐ。
足元のカメラ市場は地震影響からの回復で前年度を上回る傾向だが、基本的には縮小し続けており、10年のピークから5分の1になった。富士キメラ総研(東京都中央区)は22年に世界市場が1756万台まで縮小すると予測する。
ミラーレス市場の競争から脱落したり、採算性の低いビジネスに陥ったりする企業が出てくれば、いずれ強者が弱者を飲み込むような合従連衡が起きても不思議はない。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2017年11月20日