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1兆円が見え始めた富士電機「追い風は続く」(北澤社長)

北澤通宏社長インタビュー「システム提案の組みが実を結んできた」
 ―2017年4―9月期連結決算は営業利益や当期利益が過去最高になりました。
 「中国で工場の設備投資が活発で、産業機器向けに当社のパワー半導体の需要が想定以上に伸びた。また工場の自動化などに貢献するパワーエレクトロニクス機器関連も堅調だ。単品ではなく、複数製品を組み合わせてシステム提案して収益拡大を図る取り組みが実を結んできた」

 ―18年も好調を維持できそうですか。
 「国内でも素材から鉄鋼、化学、工作機械まで幅広い分野で、省エネと生産増強の両面で設備投資が動きだしたと感じる。当社への追い風は続くだろう」

 ―IoT(モノのインターネット)関連の投資も目立ってきましたか。
 「当社では自社工場のIoT化の成果を基にソリューションの販売を始めたところだが、需要が本格化するのは少し先ではないか」

 ―発電設備事業は、いまひとつです。
 「国内の太陽光発電市場が落ち込んだ影響を受けた。また顧客の火力発電計画が延期になり、受注が先送りになったのも響いた。ただ国内外に発電需要は確実にあり、それほど悲観していない。利益率の良いサービス事業もまだ伸ばせる」

 ―今後の全社的な成長には海外事業の拡大が欠かせません。
 「重要な経営テーマだ。これまで海外の工場や買収企業は、現地の販売子会社が管理するケースが多かったが、本社の事業本部が直接指揮を執る体制に切り替えた。国内外で一体的に事業戦略を展開し競争力を高める」

 ―米国企業を対象に想定し、M&A(合併・買収)の予算として500億円を確保しました。
 「なかなかフィットする案件に出会えない。引き続き検討していくが、無理はしない。まずは確実な自立成長が見込める事業に対する投資を優先したい。自動車の電動化で需要増が期待できるパワー半導体、生産の自動化に欠かせないパワエレシステムなどが対象だ」

 ―16―18年度の3カ年経営計画のテーマは「成長基盤づくり」です。これまでの手応えは。
 「18年度の目標は売上高9000億円、営業利益540億円。これに対して17年度見通しはそれぞれ8700億円、520億円となっており、数値面は想定以上に順調だ。検討中だが、18年度の営業利益目標は数十億円引き上げたいと思っている。一方、海外事業や人材の最適配置といった部分は不十分。引き続き、基盤強化の取り組みは進める」

 ―23年度の創立100周年を見据えた経営計画は。
 「19年度からスタートさせる経営計画は、23年度までの5カ年としたい。18年度の実績を見て中身を詰めるが、売上高1兆円、営業利益率8%にチャレンジしたい」
富士電機社長・北澤通宏氏

(聞き手=後藤信之)
日刊工業新聞2018年1月19日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
北澤社長が重視してきた取り組みの一つが、工場のモノづくりを強化だ。内製化の推進などで製品の付加価値を高め、その成果が業績数値にもはっきり表れてきた。さらに想定を超える規模でパワー半導体の需要が舞い込んできたというのが足元の状況。課題である海外展開、サービス強化を実現できれば売上高1兆円が近付く。

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