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FA需要おう盛、三菱電機が過去10年で最高水準の設備投資へ

18年度は2300億円を計画
FA需要おう盛、三菱電機が過去10年で最高水準の設備投資へ

三菱電機「「e-F@ctory」公式動画より

 三菱電機は2018年度に2300億円規模の設備投資を計画する。過去10年間で最高となる見込みの17年度と同水準。主力の自動車機器やFA機器の販売が好調に推移しているほか、エレベーターや空調機器の需要も堅調なことから、国内外の工場で生産能力を拡充する。中期目標として掲げる20年度の売上高5兆円以上の達成に向け、生産の土台を強固にする。

 近年、自動車業界では電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など電動車両化が加速している。三菱電機は電動車両に欠かせないモーター・インバーターを手がけており、ハイブリッド向け製品で顧客を増やしている。

 モーター・インバーターでEV向け製品の受注はまだないが「完成車メーカーから引き合いを受けている」(三菱電機首脳)状況。今後、HV向けと併せて販売が拡大する見通しとなっており、日本、欧州、中国の各工場の生産能力を高める。

 FA機器をめぐっては、足元ではスマートフォンや有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルの工場を対象に高水準の受注を獲得している。18年以降は幅広い業種で生産自動化や省力化ニーズが活発化する見通しで、増産体制を整える。

 三菱電機は当初、2100億円としていた17年度の設備投資計画について、17年10月に200億円増の2300億円に引き上げた。同4月には約110億円を投じて鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)に人工衛星の生産棟を新設する計画を公表した。

 また同9月には約30億円を投じ、中国江蘇省にあるFA機器の第2工場を拡張する計画を打ち出した。

 同社はリーマン・ショック直後の09年度には設備投資が919億円まで減少したが、13年度以降は2000億円を超える投資を継続している。
                 


柵山正樹社長インタビュー


 ―粒子線治療装置事業を日立製作所に売却します。あらためて事業ポートフォリオの考え方について教えてください。
 「当社は『重電システム』『産業メカトロニクス』など五つの領域で事業展開している。これをいきなり四つに減らすようなことはせず、5領域を組み合わせて成長を実現するのが基本。ただ各領域の中で、不採算で成長性にも乏しく、他事業とのシナジー(相乗効果)も薄い事業は、常に撤退も含めリストラを検討する。粒子線治療装置事業については医療事業ノウハウの乏しい当社より、幅広く医療事業を手がける日立に移った方が、成長余力が大きいと判断した」

 ―5領域の中ではFAや自動車部品で構成する産業メカトロニクスの業績が好調です。
 「FAは中国、韓国、台湾で、スマートフォンや有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルの工場で活発化する設備投資需要を取り込んだ。当社として過去数年間でFA関連の設備投資を実行しており、順調に刈り取りが進んでいる。省力化・自動化ニーズも活発化してくる。今後しばらくは成長が期待できる」

 ―他社との差別化策は。
 「FAの中でもシーケンサーやサーボ、インバーターなど幅広く手がける。これらを組み合わせてシステムに仕上げ、効率の最大化といった価値を生み出していく。そのためエンジニアリング力を強化する」

 ―自動車関連では電気自動車(EV)化によって商機が広がります。
 「現状ではEV向けにはパワー半導体を提供しているが、インバーター・モーターの引き合いも自動車メーカーから来ている。既存のハイブリッド車(HV)向けの販売も拡大している。日本、欧州、中国の工場の生産を増強し需要に応えたい」

 ―一方、米ゼネラル・エレクトリック、独シーメンスがリストラを決めるなど発電機市場は不透明感があります。
 「当社の発電機の販売台数も減っており、厳しい。必要なら(人員の再配置など)手を打つ。ただ電力関連では再エネルギー市場は世界的に拡大する見通しで、系統安定化のためのパワーエレクトロニクス機器のニーズは今後高まる。現状では再エネ関連事業の売り上げ規模は小さいが、成長率という意味では大いに期待できる」

 ―IoT(モノのインターネット)事業の展望は。
 「生産効率化など製造業のスマート化、ビルの省エネ化はすでに成果が出始めており、投資の刈り取りは早い。その次の段階で、発電所などを対象とした社会インフラ系のIoTサービスで成果を得られるとみている」
                

(聞き手=後藤信之)
日刊工業新聞2018年1月17日/19日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
三菱電機の2017年4―9月期連結決算は売上高、各利益段階で過去最高を記録した。FAや自動車部品、エレベーターなど得意分野が着実に力を付け、収益向上という結果を生み出した。課題は、もう一段の成長をどう実現するか。「お金に余裕があるからといって無理に買わない」というのが柵山社長のスタンスだが、次のM&A(合併・買収)の一手が注目される。

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