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「道の熱冷まし」五輪に向け急ピッチ

東京都、遮熱塗料など駆使し舗装道路の暑さ対策
「道の熱冷まし」五輪に向け急ピッチ

夏場は約60度Cの高温となる路面の温度上昇を抑制するため遮熱性塗装を吹き付け、暑さ対策を実施していく

 東京都の面積のうち、約15%を占める舗装道路。東京都は都市部独特のヒートアイランド現象の影響で夏になると約60度Cまで上昇する舗装道路の暑さ対策に乗り出した。長期ビジョンでは2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会までに夏場の路面温度上昇を抑制する舗装技術を駆使し、マラソンコースを含む約136キロメートルの都道に遮熱性舗装や保水性舗装を施す計画だ。民間とともに路面の暑さ対策を進める都の取り組みを追った。

 10度C抑制
 都道や首都高速道路の多くは、安全性と騒音対策として20年以上前から排水性舗装が施工されてきた。材料のアスファルト舗装には大粒径の骨材を使用し、空隙を多く作ることで雨水を地下に落としやすいように工夫している。雨水は素早く路面を透過し、地中に埋めた配管ダクトから排水される仕組み。タイヤの騒音も減らせるほか、雨の日も前方からの水しぶきが飛ばずにすみ、安全に運転ができる。

 この路面に遮熱性を持たせた塗料を塗布して温度上昇を抑えるのが遮熱性舗装だ。路面温度を上昇させる主因の太陽光を反射する遮熱材塗料を塗る。塗らない路面と比べ、路面温度の上昇を最大平均10度C抑制できるのが特徴だ。20年東京五輪大会に向けた路面温度上昇抑制策として有力視されている。

 施工の腕次第
 塗料はメタクリル酸メチル(MMA)樹脂やエポキシ樹脂、ウレア系樹脂が主流で、太陽光を反射させるガラスビーズなどを混ぜ込んでいる。太陽光の中でも近赤外線領域だけを再帰反射させる材料を使えばより高い遮熱性効果が期待できる。

 都の設計施工要領にある「塗っていない路面に比べ、路面温度10度Cは下げることを条件に施工各社が実施している」(東京都建設局土木技術支援・人材育成センター技術支援課)。滑り止め対策の塗装も必要で、最低2回は塗料を塗って仕上げる。路面に空隙を残しながら仕上げる必要があるため、施工会社の腕前が重要になる。
 
 東京都道路整備保全公社は15年度に約800万円を投じ、恒温恒湿装置を導入した。太陽光に模した照明で照射開始後、100分間で室内温度約60度Cの夏場の試験環境をつくる。装置内で一つの供試体に温度センサーを1個つけ、各種の遮熱性塗料や重ね塗り回数が違う路面サンプル3点を同時に測って検証する。現在、土木材料試験センターが主体となり、試験運用を始めた。10月にも本格運用に入る。

 検証も同時に
 今後、都は先行して遮熱塗装をした路面部分への再塗布の検討や耐久性チェックを今秋にも実施する予定だ。ほかにも耐久性を高めた剥がれにくい塗料の確立を急ぐ。何十社もの舗装会社が路面施工を行い、塗料として使う樹脂も同質でないため、検証試験も同時並行して進める。さまざまな場面を想定した検証を踏まえ、より効果がある温度上昇抑制の道路づくりを進めている。

日刊工業新聞2015年06月29日 中小・ベンチャー・中小政策面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
かつての環境担当の記者時代に「路面温度を下げるには『遮熱』とともに『保水』」も重要な要素」と取材で聞いた記憶があります。もう5年以上前の取材ですが、いわゆる「打ち水効果」を長く持続させるため、蓄えた水をゆっくりと蒸発することのできる多孔質材などの開発が進んでいるとのことでした。今回の記事は遮熱技術の動向がメーンですが、保水技術の最新動向も知りたくなってきました。

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