存在感増す中小病院・診療所、「地域包括ケア」市場は魅力的か
医療機器メーカーやヘルスケア企業が触手
医療業界で中小病院・診療所が市場として注目されている。政府も医療費を抑制するため、2025年に向けて病床再編・淘汰(とうた)を進める。そうした中、地域医療の核となる中小・診療所向けに電子カルテの拡販を強化する動きや、地域の中小・診療所と介護、在宅を連携させる医療・介護(医介)連携を支援するシステムなどを提案する企業も多い。地域医療を支える「地域包括ケア」市場を狙い、医療機器・関連企業も触手を伸ばしている。
地域包括ケアを促進する基盤となるのが、電子カルテや医用画像管理システム(PACS)などだ。だが、中小・診療所では導入率は低く、今後の拡大がテーマだ。このため、潜在需要を見据えた体制整備も進む。
日立製作所は4月、医療機器の保守サービス事業や電子カルテ事業などを100%子会社の日立メディカルコンピュータ(東京都品川区)に集約する。再編に伴い、日立メディカルを「日立ヘルスケアシステムズ」(仮称)に社名変更する。地域医療の中核である中小・診療所などへの対応を強化し、電子カルテの拡販などにつなげる。
また、コニカミノルタは17年、パナソニックヘルスケア(東京都港区)から100%子会社でPACSを手がけるパナソニックメディカルソリューションズ(PHCMS、大阪府門真市)を買収し、コニカミノルタメディカルソリューションズを発足した。
中小・診療所向けのPACSを中核に、遠隔読影システムなどを展開している。コニカミノルタのデジタルラジオグラフィー(DR)や超音波診断装置、医療ITなどと組み合わせて、中小・診療所向けPACS市場の獲得を目指している。
国が大学病院などの急性期病院から中小・診療所などに患者のシフトを促す医療制度改革を進める中、市場環境の変化に合わせて営業体制を変えてきたのは日本光電だ。営業組織体制を再編し、販売子会社制から支社支店制に移行。急性期病院、中小・診療所など市場別の取り組みを強化している。
荻野博一社長も「国内市場は大きな変革期を迎えている。急性期病院も生き残りをかけ、医療の質や効率化に取り組んでおり高度な医療機器への需要は高まる。一方、地域医療を支える中小病院、在宅向けにも新たな需要がある」と期待する。
フィリップス・ジャパン(東京都港区、堤浩幸社長)は、病気の診断・治療だけでなく、予防や予後までの連携を見据え、ソフトバンクやヤマトロジスティクス(東京都中央区)など9社・自治体とヘルスケア事業領域において協業することで合意している。
協業先の経営資源や知見を組み合わせ、包括的な健康サービスや社会的な課題解決につなげるのが狙い。ソフトバンクとはIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した製品・サービスの開発や実証実験に取り組むほか、ヤマトロジスティクスとは地域の安心・健康につながるサプライチェーンマネジメント(SCM)の最適化などを検討する。フィリップスの堤社長は「日本でエコシステム(生態系)を構築し、ヘルスケア事業に変革をもたらしたい」と語る。
インターネットイニシアティブ(IIJ)は、在宅医療に関わる多職種の連携を支援するクラウドサービス「電子@連絡帳サービス」を提案する。同サービスは要介護者や家族、医師や看護師、介護士、薬剤師などが安全で迅速に情報を交換できる情報共有基盤システム。医師や看護師による処置や服薬指導などの情報を共有、最適な介助方針の計画に役立てられる。名古屋大学が開発した情報共有ツール「電子@連絡帳」をIIJがクラウドサービスとして商用化した。
17年4月に発売。愛知県や茨城県では県の情報基盤として活用されているほか、現在までに約100自治体で導入された。「当初、2年間で100自治体を目標に掲げていたが目標を上回るペースで導入が進んでいる。写真や動画を共有するツールとして利用率も高まっている」(ヘルスケア事業推進部)。
また、アルケア(東京都墨田区、鈴木輝重社長)は、日本エンブレース(東京都港区、伊東学社長)と組み、在宅での褥瘡(じょくそう)予防・治療を支援する実証試験に取り組む。
日本エンブレースの医療介護従事者向け多職種連携ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「メディカルケアステーション」と、両社で共同開発したアプリケーション(応用ソフト)「褥瘡ケアアプリ」を連動することで、褥瘡が発生するリスクや症状などのデータを医療介護従事者間で共有し、適切な意思決定を支援する。患者への適切なケアが可能になる。
都内の医療介護施設などで実証を実施し、サービスの有用性や改善点などを検証し、事業化につなげていく。
地域包括ケアを促進する基盤となるのが、電子カルテや医用画像管理システム(PACS)などだ。だが、中小・診療所では導入率は低く、今後の拡大がテーマだ。このため、潜在需要を見据えた体制整備も進む。
日立製作所は4月、医療機器の保守サービス事業や電子カルテ事業などを100%子会社の日立メディカルコンピュータ(東京都品川区)に集約する。再編に伴い、日立メディカルを「日立ヘルスケアシステムズ」(仮称)に社名変更する。地域医療の中核である中小・診療所などへの対応を強化し、電子カルテの拡販などにつなげる。
また、コニカミノルタは17年、パナソニックヘルスケア(東京都港区)から100%子会社でPACSを手がけるパナソニックメディカルソリューションズ(PHCMS、大阪府門真市)を買収し、コニカミノルタメディカルソリューションズを発足した。
中小・診療所向けのPACSを中核に、遠隔読影システムなどを展開している。コニカミノルタのデジタルラジオグラフィー(DR)や超音波診断装置、医療ITなどと組み合わせて、中小・診療所向けPACS市場の獲得を目指している。
国が大学病院などの急性期病院から中小・診療所などに患者のシフトを促す医療制度改革を進める中、市場環境の変化に合わせて営業体制を変えてきたのは日本光電だ。営業組織体制を再編し、販売子会社制から支社支店制に移行。急性期病院、中小・診療所など市場別の取り組みを強化している。
荻野博一社長も「国内市場は大きな変革期を迎えている。急性期病院も生き残りをかけ、医療の質や効率化に取り組んでおり高度な医療機器への需要は高まる。一方、地域医療を支える中小病院、在宅向けにも新たな需要がある」と期待する。
医介連携、システムで支援
フィリップス・ジャパン(東京都港区、堤浩幸社長)は、病気の診断・治療だけでなく、予防や予後までの連携を見据え、ソフトバンクやヤマトロジスティクス(東京都中央区)など9社・自治体とヘルスケア事業領域において協業することで合意している。
協業先の経営資源や知見を組み合わせ、包括的な健康サービスや社会的な課題解決につなげるのが狙い。ソフトバンクとはIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した製品・サービスの開発や実証実験に取り組むほか、ヤマトロジスティクスとは地域の安心・健康につながるサプライチェーンマネジメント(SCM)の最適化などを検討する。フィリップスの堤社長は「日本でエコシステム(生態系)を構築し、ヘルスケア事業に変革をもたらしたい」と語る。
インターネットイニシアティブ(IIJ)は、在宅医療に関わる多職種の連携を支援するクラウドサービス「電子@連絡帳サービス」を提案する。同サービスは要介護者や家族、医師や看護師、介護士、薬剤師などが安全で迅速に情報を交換できる情報共有基盤システム。医師や看護師による処置や服薬指導などの情報を共有、最適な介助方針の計画に役立てられる。名古屋大学が開発した情報共有ツール「電子@連絡帳」をIIJがクラウドサービスとして商用化した。
17年4月に発売。愛知県や茨城県では県の情報基盤として活用されているほか、現在までに約100自治体で導入された。「当初、2年間で100自治体を目標に掲げていたが目標を上回るペースで導入が進んでいる。写真や動画を共有するツールとして利用率も高まっている」(ヘルスケア事業推進部)。
また、アルケア(東京都墨田区、鈴木輝重社長)は、日本エンブレース(東京都港区、伊東学社長)と組み、在宅での褥瘡(じょくそう)予防・治療を支援する実証試験に取り組む。
日本エンブレースの医療介護従事者向け多職種連携ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「メディカルケアステーション」と、両社で共同開発したアプリケーション(応用ソフト)「褥瘡ケアアプリ」を連動することで、褥瘡が発生するリスクや症状などのデータを医療介護従事者間で共有し、適切な意思決定を支援する。患者への適切なケアが可能になる。
都内の医療介護施設などで実証を実施し、サービスの有用性や改善点などを検証し、事業化につなげていく。
日刊工業新聞2018年1月1日