ドコモがPerfumeのダンス映像で見せた「5G」の真迫
エンタメやスポーツ、場所を問わない新たな鑑賞・観戦スタイルを提案
2020年の商用化を目指す第5世代移動通信網「5G」。この次世代の通信インフラが普及すれば、音楽やスポーツなど大容量コンテンツを遅延なく送れるようになる。コンサート会場やスポーツ競技場に行かず、手持ちのスマートフォンなどで臨場感のあるライブ映像を楽しめ、自分の好きな視点で映像を見ることが可能になる。
「5Gでキーになるのは映像だと思っている」―。NTTドコモの中村武宏5G推進室室長はこう話す。現在主流の第4世代移動通信網「4G」の10倍以上の通信速度を実現する5Gを使えば、従来できなかったスマホサービスを提供できる。中でも映像はユーザーにとって視覚的に分かりやすく、技術の進歩を体感しやすい。ドコモは数十件の5G実証に取り組み、そのうちの7―8割が映像関連という。
人気アーティスト「Perfume(パフューム)」のパフォーマンスを全世界にライブ配信した取り組みはその一つ。映像や音声だけでなく、その空間や環境の情報も伝送するのが特徴だ。
パフュームのメンバー3人が東京、ニューヨーク、ロンドンの3都市に分かれて同時にダンスパフォーマンスを披露。それをリアルタイムに一つの映像に合成し、インターネットで配信した。ポイントは3人の映像を寸分違わずに合成している点で、3人のダンスは完全にシンクロした。
その際、情報伝送の一部区間に5Gを活用した。ネットワークにおける映像や音声の間の遅延はわずか0・5ミリ秒。5Gが実用化されると、屋外で光回線を引くことができないような場所でも、無線で大容量の映像を送ることができる。
さらに、もう一つ重要な技術がある。NTTが開発した伝送技術「Kirari!(キラリ)」だ。映像の同期技術を用いて、異なる地点の3人の映像を同じタイミングで再生した。5Gとキラリの映像表現を組み合わせることで、その場の空間を丸ごと、リアルタイムに配信できる。
スポーツでも新たな観戦スタイルを提案する。20年の東京五輪・パラリンピックの開幕まで1000日を切る中、ドコモはパラリンピック種目の一つである「車いすフェンシング」の試合で実証を行った。
東京都渋谷区の試合会場と、同墨田区の東京スカイツリーにある観戦会場をつなぎ、映像・音声伝送区間の一部に5G回線を活用。試合会場に設置した複数のカメラで試合を撮影し、その内容を2Kの映像で9本伝送した。ユーザーは好きな視点から自由に観戦できる。
競技場のようにインターネット回線が整っていない場所では、5Gでなければ大容量コンテンツを送ることはできない。場所を選ばずに新たな鑑賞・観戦スタイルで楽しめるのは5Gならではだ。
吉沢和弘社長は5Gを使ったライブ映像配信の商用化について「将来はスポーツや芝居のライブ映像を複数の会場に同時配信するサービスを検討する。入場料は(競技場だけでなく)複数の会場からもらえるようにする」と話す。
(文=清水耕一郎)
「5Gでキーになるのは映像だと思っている」―。NTTドコモの中村武宏5G推進室室長はこう話す。現在主流の第4世代移動通信網「4G」の10倍以上の通信速度を実現する5Gを使えば、従来できなかったスマホサービスを提供できる。中でも映像はユーザーにとって視覚的に分かりやすく、技術の進歩を体感しやすい。ドコモは数十件の5G実証に取り組み、そのうちの7―8割が映像関連という。
人気アーティスト「Perfume(パフューム)」のパフォーマンスを全世界にライブ配信した取り組みはその一つ。映像や音声だけでなく、その空間や環境の情報も伝送するのが特徴だ。
パフュームのメンバー3人が東京、ニューヨーク、ロンドンの3都市に分かれて同時にダンスパフォーマンスを披露。それをリアルタイムに一つの映像に合成し、インターネットで配信した。ポイントは3人の映像を寸分違わずに合成している点で、3人のダンスは完全にシンクロした。
その際、情報伝送の一部区間に5Gを活用した。ネットワークにおける映像や音声の間の遅延はわずか0・5ミリ秒。5Gが実用化されると、屋外で光回線を引くことができないような場所でも、無線で大容量の映像を送ることができる。
さらに、もう一つ重要な技術がある。NTTが開発した伝送技術「Kirari!(キラリ)」だ。映像の同期技術を用いて、異なる地点の3人の映像を同じタイミングで再生した。5Gとキラリの映像表現を組み合わせることで、その場の空間を丸ごと、リアルタイムに配信できる。
スポーツでも新たな観戦スタイルを提案する。20年の東京五輪・パラリンピックの開幕まで1000日を切る中、ドコモはパラリンピック種目の一つである「車いすフェンシング」の試合で実証を行った。
東京都渋谷区の試合会場と、同墨田区の東京スカイツリーにある観戦会場をつなぎ、映像・音声伝送区間の一部に5G回線を活用。試合会場に設置した複数のカメラで試合を撮影し、その内容を2Kの映像で9本伝送した。ユーザーは好きな視点から自由に観戦できる。
競技場のようにインターネット回線が整っていない場所では、5Gでなければ大容量コンテンツを送ることはできない。場所を選ばずに新たな鑑賞・観戦スタイルで楽しめるのは5Gならではだ。
吉沢和弘社長は5Gを使ったライブ映像配信の商用化について「将来はスポーツや芝居のライブ映像を複数の会場に同時配信するサービスを検討する。入場料は(競技場だけでなく)複数の会場からもらえるようにする」と話す。
(文=清水耕一郎)
日刊工業新聞2018年1月1日の記事から抜粋