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再生軟骨で「中耳」再建 帝京大が手術成功

再生軟骨で「中耳」再建 帝京大が手術成功

富士ソフトのインプラント型再生軟骨を使用した

 帝京大学医学部耳鼻咽喉科学教室の伊藤健主任教授は、再生軟骨を用いた中耳周辺の組織再建手術に成功した。中耳真珠腫手術に伴う切除部を、世界で初めて再生軟骨を使って再建した。富士ソフトのインプラント型再生軟骨を再建材料として使用した。今後、有効性を評価し、再建率が高い治療法としての確立を目指す。

 半年後をめどにコンピューター断層撮影(CT)装置で再建率や軟骨部の壊死(えし)がないかなどを確認し、3年間の追跡調査を行う。2018年中に計3例の再建手術を実施、認可取得に向けた医師主導治験に移行する考えだ。

 真珠腫は鼓膜の一部が中耳側へくぼむことで耳あかなどが蓄積し袋状に増大する疾患。中耳や内耳周囲の骨が徐々に破壊され、耳だれや難聴・出血、髄膜炎や脳膿瘍(のうよう)などを引き起こす。

 真珠腫の治療では病変部である耳の穴の骨(外耳道後壁)を大きく削り落とした後に自己の軟骨組織などで再建していた。だが、軟骨組織は採取できる量が限られるため部分的な再建しかできない。再生軟骨を再建材料として使えば「再建率が高く手術後の炎症なども減らせる」(伊藤健主任教授)とみる。

 富士ソフトの再生軟骨は3次元の形状と強度を維持できる。現在、口唇口蓋(がい)裂患者に適用を目指し、18年1月に製造販売承認を申請する計画だ。中耳切除部再建など、他の疾患への用途拡大を狙う。
日刊工業新聞2017年12月20日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
富士ソフトは大学発の再生医療研究の事業化を後押しする「再生医療アカデミアモデル」を推進している。帝京大学での「再生軟骨を用いた中耳周辺の組織再建手術」もその関係の中から生まれたもので、帝京大としても初の再生医療製品を使った手術となった。新しい研究テーマとして、大学も再生医療に関心を寄せる中、ノウハウを収集するため、大学と企業の連携はますます活発化しそうだ。

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