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カテーテル好調も、10年先見据え「世界の基幹工場」を作るテルモの狙い

世界での競争も激しく、供給力と新製品を生み出す力を
カテーテル好調も、10年先見据え「世界の基幹工場」を作るテルモの狙い

皮下留置型カテーテル

 テルモは13日、カテーテル関連製品の新生産棟を山口県山口市内に建設すると発表した。総投資額は約300億円で2021年4月の稼働を目指す。新たに700人を雇用する。12年の同市での工場建設決定(16年稼働)以来の大型投資で、新棟建設では過去最大級。国内外でカテーテル販売が好調な中、先を見据えた投資で持続的成長につなげる。

 「世界の基幹工場として育てていきたい」―。同日、開いた会見で佐藤慎次郎社長はこう力説した。村岡嗣政県知事も「700人の新規雇用は近年にない大型誘致案件」と歓迎し、渡辺純忠市長も「国際的に競争力を持つ医療機器産業に期待する」と述べた。

 新棟はテルモ100%子会社のテルモ山口に新設する。地上5階建てで延べ床面積は約5万平方メートル。テルモ山口の3号棟となり、カテーテル手術で血管内の道筋を確保する「ガイドワイヤ」を製造する。既存の1号棟と合わせ、生産面積は現行比4倍強に拡大する。

 18年6月に着工し、19年10月に完成。承認手続きなどを経て、21年4月に稼働する計画だ。生産品は欧州・アジアから発売し、日本・米国に広げる。段階的に投資し、30年度には生産能力を同4・5倍に引き上げる。

 人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ロボットなど最新技術を取り入れ、業務の効率化を推進。新規採用により、テルモ山口の従業員も約3倍に増員する。

 増産に踏み切るのは「生産を中心とする能力増強が今後の成長を担保する」(佐藤社長)という思いがある。カテーテル事業の売上高は全体の約4割を占め年率2ケタ成長を続ける同社の屋台骨だ。開発型の愛鷹工場(静岡県富士宮市)を頂点に新興国向けの量産工場まで世界の生産拠点からニーズにあった製品を供給している。

 テルモ山口も16年1月の稼働以来、ガイドワイヤの磨き上げといった中核技術を培ってきた。能力増強で愛鷹からの生産品の移転を加速。従来、診断用1品種のみだったが、治療用や消化器用にも広げ、最終製品まで仕上げられるようにする。

 カテーテルは世界での競争も激しい。供給力とともに新製品を生み出す力が欠かせない。山口の増産で生産能力が逼迫(ひっぱく)気味の愛鷹に余力を持たせ、「新製品開発に力を入れる」(同)狙いもある。10年後を見据えた拡張計画は、佐藤社長が言う「『日本発』のグローバル企業」への道筋となる。

日刊工業新聞2017年12月14日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
カテーテル関連製品の「ガイドワイヤ」は機械と人による精密生産品であり、磨きやコーティングなどが差別化のポイントとなる。山口で増産を決めたのも秘中の技術を国内で磨きたいという思いもある。

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