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原子力産業は絶滅の危機?政策コンサルタントが報告した数字

原子力産業は絶滅の危機?政策コンサルタントが報告した数字

ウエスチングハウスの建設コストが膨らんだ米スキャナ電力のVCサマー発電所

 自然エネルギー財団は8日、メディア懇談会「世界の原子力発電の現状と展望」を開いた。スピーカーは「世界原子力産業現状報告(WNISR)2017」の主要執筆者兼発行者のマイケル・シュナイダー氏。WNISRは原発の運転、発電、建設に関するデータを含む、原子力産業に関する包括的な概要を提供している。
 
 原子力政策コンサルタントであるシュナイダー氏は、すでに原発がピークアウトしているとするデータを示した。
 
 〇原子炉数ピーク 2002年 438基
 〇運転容量ピーク 2006年 368・2GW(ギガワット)
 <2017年7月 403基 351GW>
 〇発電シェアピーク(全電源設備に占める原発の割合) 1996年 17・5%
 〇発電量ピーク(全世界で作られた電気に占める原発由来電気の割合) 2006年 2660TWh(テラワットアワー)
 <2016年 10・5% 2476Twh>
 〇新規稼働ピークは84、85年(30基以上/年)。2015、16年はともに10基。年10基は90年以来。


 シュナイダー氏は「15、16年の新規は中国。多くの国のピークはもっと前」「過去15年、新設のほどんとが中国だった。だが17年の中国の新設はゼロ。中国が例外的だった時代が終わったのか、見極めるのは時期尚早」とコメントした。

 原子力産業が置かれた厳しい状況も数字で示した。
 
 全世界で建設中の原発は53基。うち半分以上の37基に遅延が発生(17年7月1日時点)。07年から17年7月に稼働した原発は51基、建設期間の平均は10・1年。中国はもっとも多い27基を稼働させた。建設期間は平均6年、最短4・1年。

 日本の稼働は1基、建設に5・1年をかけた。米国も1基だが、43・5年を要した。東芝・ウェスチングハウスの破綻で明らかなように建設は長期化し、コストが膨らむ。また米国では60年運転の許可済・申請中の原発のほとんどが、60年間運転はせず、途中で停止・停止予定となっている。
 
 最後に「結論」を紹介した。原子力産業の衰退は地球規模で加速。17年に建設が始まった原子炉は1基(第三四半期まで)。生き残りに必要な最低限の増加率を下回っており、原発は絶滅の危機に瀕しているという。

 これは憂慮すべき状況を生み出している。既存400基の原発は老朽化し、現状の安全レベルを保つことさえ難しくなっている。
(文=松木喬)
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松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
福島事故の処理関係費用は20兆円以上。これだけの費用を負担しないために安全投資が必要となり、原発の建設費はどんどんと膨れあがります。シュナイダー氏が既存の老朽化原発への安全投資が課題となっていると指摘しました。エネルギー基本計画の見直し作業が始まっています。新設が必要なのか、しっかりと議論してほしいです。

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